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ななしの聖女12才、妖艶ではない魔王ノアに会いました

 ごきげんよう。

 わたくしは、名無しの聖女、12才になりました。


 昨年は、魔王城から魔王の魂を盗み出し、神殿に持ち帰りました。


 え? 気付きました?

 ふふふ。


 そうですの、盗みましたの。

 最近覚えた「スニーク」ですわ。

 気配を消して敵に気付かれないように動くことができますの。


 脳筋バトルの死にゲーでは、ごく一般的なスキルだから、何も恥じることはないって神様が励ましてくださいましたわ。


 魔王領域は瘴気が濃くなりつつありましたが、闇落ちした者の数はまだ多くありませんでした。


 魔王はまだ魂の器を持っておらず、そのむきだしの魂は、瘴気と混ざり合って、禍々しいことこの上ない状態でした。


 魔王の魂は、周辺の瘴気を取り込むことで、魔王領域の瘴気を薄めようとしていました。

 魔王が瘴気を出しているわけではありませんでした。

 むしろ逆です。


 つまり、魔王を倒しても、世界は救われません。


 わたくしは魔王の魂をスカーフに包んで祈りの間に持ち込んだあと、わたくしは聖女に与えられた祝福「神様への3つのお願い」の最初の1つを使いました。


 「この子に体を下さい」って。


 魔王ノアの爆誕ですわ!


 名前は予言の書の通りにしました。本人にも異論はありませんでした。


 年頃はわたくしと同じくらいで、なんというか、神様に似ていないという程ではありませんが、どちらかというとアンソニーに似ていますわ。偶然かしら?


 わたくしは、顔立ちが少しずつ変わって、前より神様似になりました。

 けれど、ちょっとだけアンソニーに似ています。これも偶然かしら?


 予言の書のノアがどのようにして自分の体を手に入れたのか分かりません。


 予言の書では、色気のある妖艶な王だったようです。

 ワイトの神様が作ったノアは、子煩悩パパなアンソニーに似ていますから、妖艶にならないかもしれません。


 わたくしはアンソニーの優しいお顔は大好きですが、もし妖艶にならなかったら、ノアはこの神様にお願いしたわたくしを恨むでしょうか?


 こほん。脱線してしまいましたね。



 爆誕した魔王ノアは、瘴気を吸収していた影響で髪も瞳も真っ黒です。

 白目がなくて、ちょっと怖いです。

 くちびるも、つめも黒いです。


 あぁ、この子は、魔王領に生きる者たちのために力の限り瘴気を吸い取っていたからこんなに真っ黒なのだと思うと、胸が熱くなりました。


 魂の器に入ったノアは、瘴気で周りの人を昏倒させることは無くなりました。アンソニーが毎日少しずつ瘴気を払ってあげています。


 大聖堂に剥き出しの魂を持ち込んだときは、気分が悪くなるもの、昏倒するもの、闇落ちしそうになるものなどが出て大変でした。

 瘴気については、いずれは根本的に立ち向かわないとならない問題です。


 ノアは、今でも魔王領に残った魔の者たちが心配で、戻りたがって暴れることもありますが、アンソニー、わたくし、それにノアの3人で魔王領に瘴気払いに出かけるようになってから、少し落ち着いたように思います。


 瘴気払いに行かない日の午前中は、ノアと一緒にお祈りをします。

ノアも神様に魂の器を作ってもらった神の子なので、わたくしと一緒に神様とお話をすることができます。


 午後はお勉強です。

 アンリの了解をとって、予言の書を読むことにしました。

 予言の書には、極々個人的な、ともすれば恥ずかしい情報が含まれています。

 それゆえに、書に記されていない人には開示しない、書に記されている人には公平に開示すべきだと考えています。


 ノアは、文字を習ったことがなかったので、最初はわたくしが予言の書を一行一行なぞりながら、読み聞かせました。

 単語を覚えるのが早く、最後の方はノアが音読して、新しい単語だけ私が読み方と意味を伝える方法で、予言の書を読み終えました。



 アンソニーはわたくしたちからちょっと離れたところで書き物仕事をしながら、たまにこちらを見ては「あぁ~。うちの子たちは仲良しでいい子たちだな~」っと、父性を爆発させています。


 いつの間にかわたくしたちはアンソニーの中で「うちの子」になっています。

 「神の子」ですけれどもね。

 じんわりとした幸せを感じます。


 アンソニーは、枢機卿という教会内では教皇の次ぐらいに偉い立場ですが、聖女と魔王の子守という重大任務についているので、すっかり専業パパのようになっています。

 体よく教会内政治から外されているとも言えます。



 予言の書のノアは、瘴気を自分だけでは吸収しきれなくなってしまい、瘴気を払うことのできる聖女を探し出して、共に魔王城に戻ります。


 わたくしが、その聖女なのですが、中身はロスシュリ神の愛し子なので魔法が使えません。


 わたくしは、瘴気に侵されて闇落ちした者を気絶させたり無力化することはできますが、闇落ちを防ぐために瘴気を払うことができません。


 悔しいです。


 だから、ノアには、予言の書の聖女の魂がロスシュリ城にいることを伝えました。

 わたくしの魂が何者かも伝えました。

 ノアが希望すれば、案内する、と。


 しかしノアは、聖女に会いに行かないことにしました。

 聖女に構っている時間が惜しい、と。


 わたくしがノアの役に立つことができず申し訳なく思っていると、ノアは「アンソニーの聖魔法があるし、ダメならきっと他の方法があるよ。」と言って、逆に励ましてくれました。


 とても優しい子です。


 瘴気を払う他の方法を見つけるために、瘴気払いに行かない時は、ずっと一緒に勉強しています。ノアは「科学」に可能性を見ているようです。


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