表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/24

ななしの聖女13才、魔王ノアのハッピーエンド

 ごきげんよう。

 わたくしは、名無しの聖女。13才になりました。


 昨年は、急展開がありました。

 神様が「ディヴァインライト」を発動して、魔王領域全土の瘴気という瘴気を一掃してしまいました。


 その日は、枢機卿アンソニー、魔王ノア、そして名無しの聖女のわたくしの3人で魔王領の瘴気を払いに出かけました。


 そこで瘴気の間欠泉が見つかったのですが、中を覗き込んでいたアンソニーが急に噴き出した瘴気で吹き飛ばされてしまったのです。


 「あぁ、アンソニーが死んでしまう!」っと、悲嘆にくれた時、神様が「ディヴァインライト」を発動して……


 魔王領全土が浄化されてしまいました。


 アンソニーは助かりました。

 瘴気も消え去りました。

 それに魔の者たちはぴかぴかになりました。


 でも、魔王領域は生き物が住めなくなるレベルにキレイさっぱり浄化されてしまったのです。


 元々、魔の者たちは、瘴気があってもなくても生きていけます。

 瘴気があると黒く汚れて禍々しく見えるだけで、命に別状はありません。


 でも、他の生き物は違います。

 水がきれいすぎて植物が枯れ始めるし、人族も含む動物たちはお腹を壊すし、これじゃあもう魔の者以外はここには住めません……


 ノアは絶望してましたわ。


 ノアは、面倒見がよい魔王なので、魔の者だけじゃなく、人族も、動物も、魔物も、植物も、みんなが健やかに暮らせる魔王領にしたかったのに。


 瘴気の方がマシだったかもレベルに浄化されてしまったのですわ。



 でも、ノアは諦めませんでした。


 魔王領の綺麗すぎる環境に、「命を育む汚いモノ」を作り出すために、瘴気の発生源を利用しました。


 ノアは、それまで瘴気を浄化して消し去る研究をしていましたが、「ディヴァインライト」以降、消し去るのではなく別の「命を育む汚いモノ」に変換する方向へアプローチを変えました。


 これは完全浄化よりも難易度が低いとのことで、そういった意味でも好都合でした。


 ただし、魔道具でそれを行ってしまうと、誰か人が張り付いてずっと魔力を送り続けなければなりません。人海戦術というそうです。

 ノアはそれを嫌い、最近ハマっている化学を利用することにしました。


 瘴気そのままでは毒性が強すぎますから、3段階の化学反応を経て、毒を無害化しながら「命を育む汚いモノ」に変えていきました。

 

 実験室レベルで成功した後、アンリのつてで、魔道具オタクのアイザックの協力を得て、実用化しました。



 アイザックは、予言の書に出てくる「インテリ眼鏡」です。


 アイザックは魔道具オタクではありますが、「理論を実用化する」時のプロセスは、魔道具も化学も同じとのことで、知恵を出し合って化学施設を建造しました。


 ノアはサイエンティスト気質で、アイザックはエンジニア気質だそうです。


 少し毛色が違うのですって。


 わたくしはその施設がそこに生きる者たちから受け入れられやすいよう、出来るだけ美しい外観と安全性を兼ね備えた建築設計を担当しました。


 また自分の世界を塗り替えられてしまった姉神様のお好みにもそぐうよう、魔王城を参考に美しくも妖しいデザインを心がけました。


 清浄すぎる環境に全く耐性のない人族は、ワイト国へ緊急避難するしかありませんでしたが、そのほかの動物と植物は、数を減らしたものの全滅を免れました。



 まだまだ理想とする姿まで道のりがありますが、ノアは「これが魔王ノアのハッピーエンドだ!」っと、皆にとても感謝していました。


 大聖堂で、「ノアおめでとう!」パーティーを催しましてよ。



 予言の書で、聖女が考えたノアのハッピーエンドとは違います。


 でもノアは確信しています。


 予言の書でも魔王ノアは、魔王領であらゆる生き物が健やかに暮らせる環境を作ることを一番の目的に活動していたに違いないと。


 ノアが幸せで、わたくしも幸せです。


**


 そういえば、神様は魔王領の守護神である姉神様からキツイお叱りを受けていました。


 姉神様の愛し子である魔王の魂を盗み出したところまでは目をつぶったものの、「他神の守護領域全土を勝手に浄化するとは何事じゃ~」っと、怒り狂っておられたそうです。


 まぁ、当然です。


 最終的には、「もうっ! あなたのせいで台無しだわ!! あとは任せたわよ」っと、神様に全権委譲なさって神の世界へ帰られたとのこと。


 神様曰く、「姉様はディストピアマニアで創造なさるものが暗いのよ。それに姉様だってわたくしの守護領域にちょいちょい瘴気の泉や間欠泉を仕込んでいるじゃない。わたくしのことばかりを責めるなんて酷いわ」とのこと。


 またもや反省が見られません。


 わたくし的に、全土を完全に浄化するのはやりすぎだと感じますが、「アンソニーが死んじゃうと思って、焦ったの」などと言い訳なさっておられました。


 ええ。そう。これでハッキリいたしましたわ。

 神様はアンソニーが好きなのです。


 だから「聖女召喚」の時も「アンソニーにおねだりされたら、つい、ね」という軽い理由で6年も前倒しで成功してしまったのです。


 権力欲がなく人の好いアンソニーが陰謀渦巻く教会組織で若くして枢機卿まで昇りつめることが出来たのも、おそらく彼に起こる「神の奇跡」が関係しているのでしょう。


 そして、わたくしとノア。


 最初、いろいろ真っ黒だったノアは、アンソニーに少しずつ浄化してもらって、今では茶色の目に茶色の髪で、アンソニーとよく似ています。


 落ち着いた温かみのある茶色で、品が良く知的なかっこよさです。


 妖艶さは…… 

 えーん。ごめんなさい。ノア。

 わたくしがこの神様に魂の器を作ってとお願いしたばかりに……


 いえいえ、まだ13才ですもの。きっとこれからですわ!


 キリッ。


 神様にそっくりでちょっとだけアンソニーに似ているわたくしと、アンソニーに似ていて神様にちょっとだけ似ているノア。


 いとし子の魂の器を作る時に自分と好きな人をモデルに混ぜ込むのって、恥ずかしくないんでしょうか?


 きっと恥ずかしくないんでしょうね。


 そんなことを考えていたら、「恥ずかしいわよ~。恥ずかしいに決まってるじゃない。でも、すごくかわいくできたと思うのよ。貴方とノア」と羞恥に悶えていらっしゃいました。


 祈りの途中に考え事をするのは良くありませんね。

 思考を読まれてしまいました。


 そして恥ずかしついでに教えてくれました。


 神様の外見はアンソニーに好まれるように、全力で彼の理想の女性像に仕上げた、と。


 ごめんなさい、アンソニー。


 わたくしはあなたの恥ずかしい秘密まで知ってしまいました。

 こういう感じがお好みだったのですね。


 ボン・キュッ・バーンですわ。



 のろけが解放された神様は、祈りの時間にコイバナをするようになりました。


「アンソニーの祈りは、キュンなの。3才で初めての祈りを捧げてくれた時からずっと毎日毎日わたくしが心安らかにあれるように祈ってくれるのよ」


 神様はアンソニーが3才の頃からずっとキュンなのですって。

 それって、もう30年ぐらい片思いしているって事になりますわね。


 アンソニーも流石に気づいてくれていますでしょうかね?


 今回は、派手にやりすぎてますからね、流石に気づいてくれているでしょうね?


 アンソニーには、神様が自身をアンソニー好みに作っていることを知る術はありませんから、「おじいさん」な神様を想像しているかもしれません。


 アンソニーが神様の片思いに気付いていてくれることを神に祈ったのですが、祈った先が当の神様ですからね。あまり意味がないことをしてしまいました。


 わたくしに何かできることがございますかしら……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ