第63話 台風という武器
世界樹……台風……うっ、頭が。
そんな感じにネタに走らないとやってられない。
台風を見て思い出したのだ。
『そういや、この国のトップはあのヴィスタだったわ。遠慮ないの忘れてた』
とまぁ、こんな感じである。
ゴッズゴルドの存在は知っているし、別に港町にいたのはダイナとセラだけでなくそこそこの人数がいたので、話が広まった今、大砲を問答無用で向けてきていたことは大勢が認識している。
そして、そこに思いっきり巨大台風をぶつけて沈没させたことも大勢が認識している。
そう、こう、なんというか、将来的に船を使って販売網を広げようと思うものもいるにはいるのだが、『お前らも調子に乗ったらこうだからな?』と言われたような気がするのだ。
気がするだけだといいなぁ。
と考えていたのだが、ユグシティの広場にある政府広報掲示板に、このような紙が貼られていた。
『世界樹が台風を発生させるとき、葉が青く発光していますが、あれは演出です。実際には光らなくても台風を出せます ――アルバ政府役所』
という……メッセージが記載されているのを見て、一部の経営者は『気がするじゃなくて確信か』とあきらめることにしたようだ。
世の中、諦めが肝心である。
「しっかし、いきなり大砲を向けてくるなんて、アイツらは何を考えてるんだろうな」
ソードハウスでダイナはヴィスタと話していた。
やはり彼としても、何の会話もなしに港へ大砲を向けてくるというのには思うところがあるらしい。
「一応聞くけど、いきなり台風を向けることに対して思うところはないのかい?」
「こっちも遠慮しないっていう姿勢は重要だろ。別にこの国はいろいろ『粒ぞろい』だけどそこまで規模が大きいわけじゃないしな」
「まあ、そういう自覚をしているのならいいか。で、お相手側の考え方に関してだね」
ヴィスタは書類を書きながら話をつづける。
「簡単に言えば、彼らは大樹国アルバのことを、国家だと思っていない。だから、港町を見て『なに勝手に入り込んでんだ』みたいなノリになって大砲を向けてきたというわけだね」
「……国際法には適してるよな」
「条件は全部揃えてるし、書類もしかるべきところに出してるから、ちゃんとした国家だよ。それは向こうにも届いてる」
「じゃあなんで、国家だと思っていないんだ?」
「『世界樹はゴッズゴルドのものだ。あそこに町を作ってるやつらは不法侵入で、国家を名乗るなどおこがましい』……といえばわかる?」
「大雑把にはわかった。てか、あんまりマスターは怒ってるようには見えねえな」
「まあ、主義に善悪はないからね。ただ、無知は不幸を招く。彼らは、私を敵に回したらどうなるのかわからなかったから、今回、自慢の大型船が沈んだという、それだけのことだよ」
アラガスが五万の軍勢を用意した時、 ヴィスタはこう言っていた。
『奪うだなんて行儀の良い事言ってないで、超えるっていう厚かましい事を言うくらいじゃないと。とどかない』
力があるものが欲しいものを手にする。
そういう弱肉強食をヴィスタは否定しないが、無抵抗を選択することもない。
お相手が世界樹の力を超えてくるというのなら、着地点をちゃんと探すくらいはするが、相手が議論をする気がないのなら、こちらも議論をする気はない。
相手はこちらを超えていないのだから、手にする資格はない。
相手の主義に怒鳴ることはないが、弱者の傲慢など捻りつぶして終わりだ。
「というより、国家間のやり取りなんだし、こちらをバカにしてる暇なんてないはずなんだよね。一にも二にも警戒。それが外交というものだよ」
「警戒。ねぇ……」
相手は別の国なのだから主義主張が違うのなんて当たり前で、敵が敵対的な行動をとるのも当たり前だ。
だからこそ警戒しなければならない。
「まっ、これで懲りる人たちでもないか。何隻か沈めよう」
「……」
苦笑いをするしかないダイナである。
「……一応聞くけど、嵐に負けないような魔道具を船に積んで来たらどうすんの?」
「魔道具を無力化させる雨を降らせるだけです」
「そんなのあるの?」
「特定の植物を育てるためには必要だからね。世界樹はありとあらゆる植物を育てる力があり、そしてその上で必要なことはすべてできる。そういう存在だから、そういう雨も出せます」
「……」
人間レベルの話を世界樹に持ち出しても仕方がない。
なんとなく、それで受け入れるしかないようである。




