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第61話 町は平穏

 ヴィスタが語った『神公国ゴッズゴルド』の話。


 それはセラとダイナに大きな衝撃を与えたが、ヴィスタの様子は変わらない。


 そう……確かにヴィスタの話に驚いたのは事実だ。

 そしてその話の中に含まれていた真実にすでに気が付いている者がいるというのも、なんだか負けた気はするのだが、それだけだ。


 別に競っているわけではない。むしろこれからはしっかり協力するべき相手として認識するだけである。

 ただ相手がちょっと大きいだけだ。


 大樹国アルバのトップであるヴィスタがいつも通りで何も緊張していない。

 それゆえに、特に何も変わらない。


 なぜヴィスタが港を建造するようにダイナに指示したのか。

 しかも、大型船に対応しているかなり本格的な物だ。


 そこがわからない故に、いぶかしげに見ている者はいるが……まあ、ヴィスタが何を計画しているのかなど、わかるわけがない。


 要するに、大樹街フレスヴェルも、ユグシティも、平和なものだ。


「んー。ちょっとだけ落ち着いたか?」

「本当に大きな商会は、赤市場のほうに移っている人も多いですからね」


 政府役所の屋上。


 そこから町を眺めながら、ヘルバはアーシェと話していた。


「まあその分、世界樹の地下ダンジョンに入るやつらのなかで『上』が落ち着いたよな」

「『雷斬鬼』と呼ばれたヘルバさんにとっては、管理しやすいのはいいことですね」

「俺が管理者側になるなんてなぁ。普通にこいつらを振っていればいいと思ってたんだが、ヴィスタがいるとそうでもないらしい」


 両腰に装備されたサーベルの柄頭をトントンとたたいているヘルバ。


 メイド服をしているアーシェはニコニコしているだけで、何を考えているのかはわからない。


「そういや、港のほうにいる連中が、若干緊張感を持ってたけど、何かあったのかね?」

「さあ~……なんでしょうね!」


 アーシェはニコニコしている。


 ただ、アーシェは見た目十歳の黒髪ショートカットの女の子だが、普通ではない。

 彼女は『ケラダホア王国地下強化人間研究所』……裏の通称『超人ラボ』の作品であり、言い換えれば、ゴッズゴルドに対して確信を持っているオードリスの下の組織の人間である。


 隠密部隊としての性能も高く、セラやダイナにも知られることなく、ケラダホア王国から情報を得ている。


 ……さすがにヴィスタはアーシェの行動に気が付いているだろうが。


 というわけで、アーシェはゴッズゴルドの情報を持っている。

 が、ヘルバに話すつもりはないらしい。


「……」


 ヘルバは世界樹を見上げる。

 あまりにもスケールが大きいその姿は、変化があまりにもない。


 ただ……。


「……世界樹、ざわついてるな」

「?」


 アーシェは首をかしげたが……ヘルバもまた、アーシェには特に説明する気はないようだ。

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