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第59話 帝宝復活!

「キレイになったあああああああああああああっ!」

「「「「スゲエエエエエエエエエエエエッ!」」」」


 赤市場の帝国エリア。


 ここにも大きめの広場が作られており、新品同然になった巨大コンロがその存在感を発揮していた。


「あんなにゴミみたいだったのに!」

「粗大ごみと一緒に置かれた時もあったよな!」

「汚すぎてモンスターも寄り付かなかったくらいだぜ!」


 コンロ君は泣いていい。

 ていうか、ストレート過ぎんか帝国民。


「よーしお前ら! 結界の外に行ってモンスターの肉をとってこーい!」

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」」


 筋骨隆々な男たちが剣や斧をもって結界の外に走り去っていった。


 ちなみにラータは一番早く飛び出していった。


 ……取り残された八風は思う。


(地上産のモンスターは死体が残って、ダンジョン産は魔石を残して消滅するんだよな。アイツらってダンジョンの氾濫で出てきたから、肉っておとさないんじゃね?)


 そんな感じで、のんきにお茶を飲んでいると……。


「八風君! モンスターが肉を落とさないんだけど!?」

「……帰ってくるの速いな」


 とはいえ、物量がとんでもないだけで、モンスターそのものは個体ごとにそこまで強くない。


 モンスターの討伐経験が多い帝国民ならこの程度は問題ないだろう。


 ヤバくなったら結界の中に戻ればいいだけの話である。


「そういえば、ラータってダンジョンって知ってる?」

「言葉は知ってるけど入ったことはないよ。だって帝国にないからね!」

「そうだった」

「そっか。アイツらってダンジョンから出てきたモンスターなんだね。うーん……」


 ラータが何か考えている。


「ねえ八風君。魔石をコンロで焼いて食べられるようにできるかな」

「え、魔石を食うの?」

「昔食べたことがあるからね!」

「……どんな味だったの?」

「不味かった! アレは人間の食べ物じゃないよ!」

「じゃあなんでまた食べようとしてるんだよ……」

「だって、もう倉庫にはあまり肉が残ってないんだもん!」

「おかしいな。冷凍庫に五トンくらい突っ込んだはずなんだが」

「帝国民の胃袋をなめたらダメだよ!」

「ラータはどれくらい食べたんだ?」

「うーん……4800キロだね!」

「残り二百キロしか残らねえじゃねえか。ていうか自分の体重の何倍だと思ってるんだ」

「えーと、私は52キロだから……」

「92倍とちょっとってところか」


 もはや人間じゃない。

 というか、帝国が食料に悩まされているのってコイツがいるからじゃないだろうか。


「なんでそんなに食べたんだ?」

「だって、帝都に植えられたあの種のおかげで、いくら食べても問題ないようになったんだもん! 八風君が来る前は、ひどかったら一週間断食だったんだからね!」

「……」


 大変だったんだなぁ。と思う八風だが、ラータの顔から少し視線を下げると、デカい胸がある。


(初対面からこんな胸だったはずだが、一体どういう原理なんだろうな)


 だんだんバカバカしい方向に進んでいる気がしなくもないが、八風は悪くない。


「というわけで、おなか一杯食べたいわけさ!」

「そうか……とりあえず、大型船に大量の肉を詰め込んでこっちに向かわせてるから、あと一時間くらいは待っててくれ」

「え、肉が来てるの!」

「宴会に突入するのは火を見るよりも明らかだったからね」

「さすが八風君だね! それじゃあ、私はコンロを使うための燃料用の魔石を集めてくる!」


 そういって、ラータは元気いっぱいな様子で飛び出していった。


「……ずずっ、はー……」


 のんびりお茶を飲む八風。


「おじいちゃんかお前は」

「あ、リューガ。どうしたの?」

「いや、とりあえずソーセージ持ってきた。そろそろ宴会かなーって思ったから」

「ああ、うん。多分あと一時間はこっちも肉が届くまで準備になるから、そのあたりでいいかな?」

「いいけど……なんか、疲れてるな」

「元気いっぱいな女性を見るというのは慣れてるはずだったんだが、思ったようにはいかないらしい」

「そうかい。ま、詳しくは聞かねえけど」


 リューガは巨大コンロを見た。


「こんなデカいコンロがあったんだな」

「ああ、帝都で初めて見たときは驚いたよ。デカいゴミだなって」


 コンロ君は泣いていい。


「はっはっは! まさかそれが帝国の宝だって話だ。すごいというかなんというか」

「まあ、歴史を勉強したら、あのコンロが宝だって言われるのも納得できたから、そこはいいけどね。モンスターの肉を大量に食べまくってるらしい」

「……それで、何がどうなると食糧問題になるんだ?」

「調理可能な種類が少ないからね。どうしても輸入になるよ」

「そんなもんか……でもまあ、バカだけど良い奴らだな」

「そうだね……」


 リューガも人のことはあまり言えないし、何なら祖母が帝国民だ。


 ただ……仲が良く、元気であるということは、素晴らしい事なのだ。


 ……ということにしないと精神が持たない。


 馬鹿すぎるからだ。ポジティブすぎるからだ。騒ぐときは盛大にみんなで騒げを地でいくからだ。


 ただし、それ相応の人数が集まれる赤市場だが、それでも他所のエリアに突撃しないところを見ると、分別はできているのだろう。


「そういや、ベレンゼたちはどこにいるんだ?」

「え、何か用事ってあったの?」

「あー、まあ、ヴィスタからあいつらに渡す手間賃を預かっててな。どこにいるのか知りたいんだよ」


 大きめの茶封筒を取り出しながら、リューガは言った。


「……ここからまっすぐ行って、黄色い屋根の建物が一軒だけあるから、そこから左に裏路地に入ったら、すぐにわかると思うよ。ラータが荒らしまわった痕があるから」

「とんでもねえ女帝だな」


 苦笑しつつ、リューガは歩き始めた。


 ★


 大宴会になっていた。


 何百年もできていなかった。宝のすべてを使って焼きまくって、みんなで食べまくるという宴会。


 暑苦しく、うるさく、しかし眺めていると、平和だと思う。


 真夜中だが、ここだけはとても明るい。


 王国側からアクアス商会が酒を持ってきたら、もう大変。


 『国宝復活祭』と題された宴会ではあるが、あまり関係ないだろう。


 そこに肉とコンロがあれば、こいつらは焼いて食べる。


 まあ要するに……そう、要するにだ。


「おい、大丈夫か」

「飲みすぎた。食いすぎた。腹がヤバいし寒気がします」

「さっさと戻した方が楽だぞ」


 というわけで、八風はマックスに介抱されていた。


 人間、自分の体に合わないことはやらない方がいい。

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