第57話 筋肉の塊のような鎧と書くとため息が出そうだが、筋肉塊鎧と書くと若干かっこいい……いや、何を言っているのだろう。
ベレンゼとダンストンは、赤市場に集まる物を強硬派のものにするために動こうとしている。
四か国の重要なものが集まる場所であり、ここに集まる財を強硬派のものにできれば、確かに『功績』と言えるだろう。
四か国から重要な立場の人間が集まっており、ここで決まったことが今後に大きな影響を与えることは間違いない。
一度にすべて手に入れられるとは思っていないが、少なくとも八割くらいは手に入れておきたいとベレンゼたちは考えている。
頭を冷やせ。
で、これに対して、四か国がとった行動だが……。
「なあ、あれ、人間か?」
「種族的には普通の人間だぞ」
「普通の人間なのに250センチ300キロというのは存在できるのか?」
「いるんだから仕方ねえだろ。帝国民だからってことで納得しとけ」
マックスとリューガは赤市場の役所の一階で無表情になっていた。
彼らの先にいるのは、とある男性。
マックスがつぶやいた通り、身長250センチで体重は300キロもある。
筋肉の鎧を身にまとったような風貌で、圧倒的に愛嬌のある笑みを浮かべているため、見た目ほどの怖さはない。
まあ、近づくと威圧感はあるが。
名前はアムダ。年齢は三十二歳。マックスと同い年である。
役所で働いている人間として一般的な制服を着ているが、さすがに特注品だ。
……ちなみに、現在、男性職員が着ている服を用意したのはダイナなのだが、三着(一着と予備)ほど人間とは思えないサイズがあったので資料を三度見したらしい。
「……ただ、これで何とかなってしまうのがなぁ」
マックスは役所の出入り口付近を見る。
すると、そこでは祭服を着たベレンゼとダンストンが歯ぎしりをしながら中を見ている。
……アムダがいるので『これはだめかもしれん』と思っているのだろう。帝国の空気に毒されすぎだ。
「なんだろ。ああいうの見てると、ルイベルって思ったよりすごく自分を保ってたんだなって思うよな」
「それは……そうだな」
神聖国の公爵家長男であるルイベル・ユフェード。
彼は神聖国から帝国に送られて、そこで強硬派として活動していたはず。
幹部である二人が筋肉主義に染まっていることを考えると、思ったより彼は自分を保つ才能があったのかもしれない。
「……まあ、アムダと最初に見たときの衝撃もすごかったがな」
「ああ。本当に人間かって疑ったけどな……帝国にはすごい人もいるんだなぁ」
「あと、アムダは三つ子の末っ子ということだが、兄二人もあんな感じだと思うか?」
「……双子だからってそんなそっくりな成長をするものなのかね? まあでも、普通の兄弟と比べれば似てるんじゃねえかな。普通の兄弟よりも遺伝子は同じだろ」
「まあ、それはそうだな」
「ただ、痩せてる人間を見るたびに、なんか朗らかな顔になるんだよな。試しに聞いたんだけど、両親ともに痩せてるし筋肉も多くないみたいで、なんか重ねてるんじゃないかって本人は言ってた」
「ほう、なるほど」
「ちなみにヴィスタの写真を見せたら『本当に人間か?』って言われた」
お互いのセリフだと思うが。
ちなみに、ヴィスタは身長175センチ体重40キロなので、身長差は75センチで体重差は260キロである。
何がどうなるとこうなるのやら。
「まあそれはいいとして、極端という言葉の使い道がよくわかった気がするな」
「極端……か。そうだな。確かに」
「ちなみに長男はアムダよりちょっとデカいみたいだけど、あの女帝と腕相撲したら瞬殺されたらしい」
「実力主義とは言え、皇帝が平民と腕相撲するのか……」
「まあ、力の差ははっきりするからな。父さんはオーゼルト陛下を秒殺したって言ってたぞ」
「威厳もクソもない……」
もうちょっと……もうちょっと理性的な育ち方はできなかったのだろうか。
そんなことを思うマックスである。
そう、こう、いろんな意味で、神聖国は『大体はマトモ』なので。疲れるのだ。




