第55話 祭服の下にシックスパックがあるとは神でも思うまい。
さて、ベレンゼとダンストンは船を用意し、荷物を詰め込んでさっそく出航。
クリムゾン・クレイドル。最近では『赤市場』と呼ばれることもあるところまで遠路はるばるやってきたわけだ。
二人だけで。
船は小さい物なので、確かに二人でも動かせないことはない。
しっかりと帆を張れば、南から北に向かって吹いている風を掴めるので、確かに行けなくはない。
だが、いくら何でも暗躍活動をするというのに二人で来るものなのだろうか。
「……なんというか、アラガスたちは『滑稽』だと思ったが、アイツらは脳みそがすべて筋肉になってしまったようだな」
「マックス。お前が言うと誰もフォローできなくなるぞ」
リューガとマックスは書類を作っていたが、報告書に書かれていたベレンゼたちの情報を見て、ため息をついた。
リューガは二人に会ったことはないのだが、マックスはあったことがあるのだろう。
過去の二人がどのような人間だったのかはわからないが、おそらく『今のような感じではなかった』はずだ。
とはいえ、何の成果もあげられないのに頑張れていたところを考えると、もともと根気のある性格なのだろう。
出なければ付き合いきれないし。
「幹部は二人だけだが、強硬派の構成員くらいはまだ帝都にもいたはずなんだが……ここまで何も考えられなくなっているとは思わなかった」
「そういう連中は何をするかわからねえから本来は怖いんだけどな。本来は」
「ああ……」
マックスはため息をついている。
『本来は』とリューガが主張している以上、マックスも今回のベレンゼたちの行動に対して、思うところはあるが不安はない。
「ヴィスタは彼らの行動を完全に予想しているな。まさか二人だけでやってくるとは思っていなかった。荷物もそう多いわけでもない。最低限……というか、帝国民にやはり毒されているな。かなり少ないぞ。思ったよりどうしようもないレベルで計画性が以前より下がっている」
「マックスがあいつらに思うところがあるのはわかったが、それ以上は言っても無駄だろ。同じ言葉を繰り返すだけだぜ」
「そうだな」
過去に何があったのかはわからない。
マックスにしてはなんだか『呆れ』というか『モヤモヤ』というか、そういう状態が強すぎる。
本当に、こう、彼にとって忘れられない過去があるのだろう。
別に彼は帝国民を蔑む気はないので、ベレンゼたちを堕ちたとは表現する気はない。
ただ……バカになったと思う。
「しかし、報告書で一番笑ったのは、アイツらって鍛えててシックスパックになってるんだな」
「神官が何をやっているのやら」
神官が鍛えてはいけないという理由は何一つない。そんなことは教典のどこにも書かれていない。
ただ、祭服の下がシックスパックだからと言って、神に信仰は届かんぞ。




