第52話 アルティメット・パーフェクト・バーベキューセット……略してUPBBQセット
アルティメット・パーフェクト・バーベキューセット。
略してUPBBQセットと呼ばれることもあるが、これがどのようなアイテムなのかを簡単に述べるなら、『マジで何の変哲もないバーベキューセット』である。
……。
ラータは一応、このセットを『帝国の宝』と言っているわけだが、別に特別な力があるわけではない。
ただ、よくよく考えてみれば、別に古い時代の帝国は技術的に何かが優れているということもなく、単純に『思いっきり肉を焼いてみんなで盛り上がろう』で元気になれるような超ポジティブ国家なのだ。
モンスターの出現がものすごく多いため、ちょっとでもネガティブな感じになったら勢いに押し流されて全滅してしまう。
その危機感を胸に、全員がかなりポジティブなのだ。
まあ、だからと言って、王国の倍の人口まで膨れ上がるのは話が違うような気がしなくもないが。
……で、このバーベキューセットだが、何の変哲もないことは確かだ。
ただただ、『ものすごく汚れている』のである。
「信じられないほど使い込まれてるな」
「その割に手入れは雑だな」
「なんで洗浄しなかったのやら……」
「何を焼いたらこうなるんだ?」
でかいバーベキューコンロを見ながら呆れている。
「てか、こんなデカいのどうやって持ってきたんだ? 多分100キロはあると思うんだけど」
「担いできた!」
「は?」
「だって軽いんだもん!」
「もん! じゃねえよ。こんなクソ重たいものを軽々持ってくんなよまったく……」
完全に汚れまくっているが、一応宝であることに変わりはないのだ。
そんなものを軽々しく持ち出さないでほしい。
……あっても盗むやつはいないか。
「てか、何がどうなるとこんな色になるんだ?」
「うーん。なんか、『変な肉を焼いたら変な色になった』って何かに書かれてた気がする!」
大雑把。
ただ、モンスターの肉の中には、焼くとたまに変な成分が出てくる時があるので、おそらくそれが関係しているのだろう。
だからってこうはならんけど。
「使えそうなところでいろいろ焼きまくってたら、ついにすべてが『変に焦げ付いた』って感じだね。すごいね!」
「これを見てそこまで楽観視できるあなたのほうがすごいですね」
仮にも宝だというのに、これはどうなのか。
「だってバーベキューコンロなんて汚れてなんぼじゃん。だったら汚れてることそのものは気にしないよ。ただ、これ以上は使えそうにないから、それは困るんだよね」
「モンスターを倒し続けてるんだよな。その中の素材に、物をキレイにするものはなかったのか?」
「……!?」
そこまで頭が回らなかったらしい。
どうせ、何の変哲もない雑巾をつかってゴシゴシ頑張っていたのだろう。バカである。
「いや、実際のところ、モンスターの肉を変に焼いた結果、何かの種類の成分が原因で、『ほかのモンスターの素材の効果を受け付けない』ようになってる。洗浄する魔法に関しても耐性が高くて、僕もやってみたんだけどまったくきれいにならなかった」
「うーん……」
リューガは唸った。
一応言えば、彼も馬鹿である。それは自他ともに認めている。
ただし、それと同時に伯爵家の次期当主であり、二手先三手先のことをも考えるようにしているのだ。
……一手先は考えてないので基本行き当たりばったりだけど。
ただまあ、バカであるリューガも、このバーベキューコンロには思うところはあるようだ。
「なんだろう。芸術ってバカにしかできないんだなって思う」
「言いたいことはわかる」
八風が同意してくれました。
「で、これをキレイにできるかどうかだな。ヴィスタの資料には何か書かれてるのんか?」
「少し待ってください……あ、ありました」
「気色悪いね!」
「お前が言うな」
で、どうなっているのやら。
「どうにかする方法はありますね」
「おーっ! すごい! こんなゴミみたいになったコンロをもとに戻せるんだ!」
「自分でゴミっていうな。宝だろ」
「あっはっは! 宝なんて本質的にはみんなゴミみたいなもんだよ!」
「……」
まあ、その、『ある意味、どんなものであっても大切にできる』とも言い換えられるのか。
おそらく帝国だと、何の才能も持たない人間であっても、普通に社会の輪の中に入っていけるのだろう。
価値があるのかないのか。という視点に対する考え方が独特である。
「とりあえず準備をしましょうか。ピカピカにしましょう……本当になるのこれ」
「自信を持て。ヴィスタの資料なら大丈夫だ」
というわけで、混濁権化となっているコンロをどうにかしよう。




