第46話 ちょっと休憩
「疲れた……」
トルちゃんの上に戻ってきてぐったりしている様子のリューガ。
魔力は体に上手く流せば『身体強化』を行えるほど『体の状態』にかかわる要素であり、それがゴリゴリ持っていかれたことで疲れているのだろう。
「……思ったより扱いが難しい剣だね」
「戦いの規模に関しては聖剣を超えるが、人間が使うとなると長期戦は無理か」
八風とマックスもトルちゃんの上に戻ってきて感想を述べている。
三人とも、一応戦ってはいたが、やはりそこはモンスターが津波のように押し流されてくるので、いったん休憩ということでトルちゃんの上に戻ってきた様子。
「そういえば、宝剣はリドナーエ家の当主が持っているのではないのか?」
「いや、他の家の『家宝の扱い方』は知らねえけど、リドナーエ家に関しては、『管理権限』は父さんが持ってるけど、実際にだれが使うのかはその時次第だな」
「ふむ、まあ、その程度の緩さはあるか」
「父さんが使った方が強いのは事実だけどな。父さんのほうが魔力量が多いし」
「宝剣を使うなら魔力量は重要か……」
「宝剣は、初代がダンジョンの奥から見つけてきたものだって聞いてて、それを使って暴れまわったらしい」
「魔力量、どんだけ多かったんだ……」
「遺伝しやすいという話を聞いたことはありますが、その初代の父親もすさまじいですね」
リューガが使う宝剣の戦いを見ていたセラ。
その戦いを見ていた感想としては、端的に言って『消費魔力がえげつない』ということだ。
そもそもセラは『熾天使』であり、通常の人間の魔力量や身体能力を大幅に上回る。
それをもってしても、ダイナのスペックは『どうなってんねんアイツ』となるし、宝剣に関しては『どうやって使うねんコレ』となるわけだ。世界は広い。ただ、バカでもある。
「とはいえ、宝剣は『素材』は圧倒的だが『理論』が稚拙。という印象を受けるな」
「あー。ヴィスタも言ってたな。使ってる素材の質がエグイから、それだけ多くの『魔法文字』を書き込めるけど、研究が行われていないから、『効率的』じゃないみたいだ」
エンジンが安っぽかろうが、詰めるだけ詰め込んでブッパすれば何も問題はない。
そんなイメージがある。
もっとも、『研究』という点において、その手段も視点も当時は足りなかったのだ。
そのかわりに、上位存在にしか作れない『超質素材』とでも呼ぶべき素材が使われており、使われている理論も効率は良くないが、作り自体はしっかりしているので頑丈であり、『雑な使用』に耐えられる。
精密機械は定期的にメンテナンスを要求し、時には買い替えることも必要だが、それはマジックアイテムでも変わらない。
ただ、そこは『古代の超技術』とでも呼ぶのだろうか。いったいいつから存在しているのかすら不明な武器だが、その威力は圧倒的である。
まあ、この辺りは一長一短だろう。古代が良い悪いとか、現代が良い悪いとかそういうものではなく、単純に『有用品なのかどうか』という話にすれば、『宝剣ニブルヘイム』は『有用品』である。
「てか、八風のあの竜巻も見たことねえな。アレってどうやったんだ?」
「うーん……そもそも、僕が使っている術は母さんが使っていた戦闘術を父さんが強化したものでね。『儀典旋風刃』っていうんだ」
八風に急に話を振ったが、彼も彼で別に隠す必要がないのか、話し始める。
「『旋風刃』は、周囲の空気を操作して、自分にとって戦いやすい『空気の状態』を作りつつ、九方向の斬撃を反復練習で体に叩き込んで、そこに『名』を与えることで『技』として昇華させる。という手段をとっているんだ」
「へぇ……空気の調整と反復練習。それに『名を与える』か」
「そう。魔力っていうのは『安定を求める』というのが僕が知っていて使っている理論でね。その中でも、『名前がある』っていうのはその安定感が一番強いんだよ」
「初めて聞いたな。てことは、俺も適当に技名をつけたほうが威力が上がったりするのかね?」
「技名はつけたほうがいいけど、適当につけたらダメ」
「まあ、それはそうか」
「で、その『旋風刃』に、『儀式』の力を付与することで強化しているのが『儀典旋風刃』だ。まあ、『儀式化』に関しては話すと長いからちょっと端折るけど」
「ふーん……まあ、なんとなく、司祭がなんかやってる時の雰囲気と似てる部分があったから、うっすら予感はしてたけどな」
「私もだ。ただ、あれほど効率のいい儀式もなかなかないが」
マックスは頷きながら『儀典旋風刃』を評価している。
神聖騎士団第二隊隊長として多くの神官を見てきただろうが、その中でも『理論的に優れている』のだろう。
「しかし、モンスターが多くてやばいな……」
そう言いつつ、リューガは自分のリュックの中から缶を取り出している。
タブをいじって、そのまま口に運んで飲み始めた。
「ちょっと待て、なんだそれは」
「ん? アルミ缶だけど、知らんかったか?」
「初めて見たぞ」
「あー。これ量産できないからな。アクアス商会がリサイクルで繰り返し使ってるって言ってたような……」
「……はぁ、で、何が入ってるんだ?」
「ん? 炭酸飲料だぞ。八風も飲むか? 美味いぞ」
リュックからもう一本出して八風に渡す。
タブを慣れた手つきで開けると、少しにおいをかいで飲んだ。
「あ、普通に美味いな」
「だろ? アクアス商会が昔からレシピを管理して作ってるんだ」
「へー……」
八風は頷きつつ……。
(炭酸飲料っていうか、これエナドリじゃん……っ!)
八風の脳内に天才的などうでもいいひらめきが発生した。
『エナドリ』を逆から読んで『リドナエ』
そこに伸ばし棒をつけて『リドナーエ』
「……どうした? 八風」
「……いや、なんていうかすごく、どうでもいいことを考えた」
「あっそ……」
そう、どうでもいいことだ。八風にはどうしようもない。
(というか、そういう命名方法だったのか、いや、それで考えると『ケラダホア王国』もかなりやばいけど……突っ込まないようにしよう)
正しい判断である。
「セラは炭酸が苦手だったよな。マックスも飲むか?」
「私も苦手だ。遠慮しておこう」
「そうか。ならサイラに」
「何言ってんの!?」
「いや、サイラ、こう見えてゴクゴク飲むんだぞ」
「「「……」」」
宝剣の頭おかしい性能だとか、儀典旋風刃の構成だとか。リドナーエ家の命名方法だとか。
そういうのを全部すっ飛ばして、『生後一、二か月の赤ん坊がエナドリをがぶ飲みする』という事実にドン引きする三人である。




