第45話 大暴れ
セラはサイラの傍にいる必要がある。まあ、遠距離攻撃ばかりをするのであれば、別にサイラの傍にいたままでもモンスターを殲滅できるが、『サイラがセラを警戒するとそれはそれでマズイ』ので、セラはドラゴンの上で待機だ。
というわけで、リューガ、マックス、八風の三人が大暴れすることになった。
ちなみに、河までギチギチにモンスターが詰まっているわけだが、それでも一つの『地方』と言える広さなわけで、『地形が様々』と言えるほどの広さがある。
平原、森、小山、湖(こっちはモンスターも平気)、廃都などなど、様々だ。
ただ、超えられないということは、言い換えれば空を飛ぶ個体や跳躍力のある個体は存在しない。
そして、船を作れるだけの知性や技術も存在しない。
彼らはレッドエリアから出てこない。だが勝てなかった。
過去に様々な作戦が行われているが、そのどれもが『物量』に負けたのだ。
とても長く放置されているが、いまさらそこに手を出すということは、この地には『理不尽』と『需要』が高まりつつある。ということだ。
「おりゃああああああ! ぜー。はー。宝剣って思ったよりキツイな」
リューガは『宝剣ニブルヘイム』を握っているが、疲労困憊に近かった。
周囲は『とんでもない膂力でたたきつけたような痕』があったり、高さ五百メートルに及ぶ『氷山』ができてモンスターが凍り付いていたりと、なかなか直感に反する現象が発生している。
「……なるほど、宝剣に『増幅装置』は備わっていないか。少ない魔力を大きな魔力に増幅させてから使うのではなく、もともと大量の魔力を要求している」
マックスは『聖剣タキオングラム』を握って、モンスターを殲滅していた。
『速くて重い斬撃を出せる』という超絶シンプルな能力故に、『物量自慢』のモンスターをなぎ倒しまくっている。
「もともと普通の人間が使うことを想定していない。ともいえるか」
刀を構えている八風の周囲には爆風が荒々しく巻き起こっている。
モンスターたちが風で作られた刃で切り裂かれ、暴風に巻き上げられて哀れなほど散っている。
「……」
「あら、トルちゃんも絶句してますね」
トルちゃんというのはドラゴンのことだ。
正式名称は『擬態魂竜トルーテ・アムト』というので、愛称は『トルちゃん』になったのである。
そして、『擬態』の名に恥じぬ性能を持ち、下に降りた三人はすでに、このドラゴンの場所がわからなくなっているだろう。
……ということはないか。八風が時々チラチラこちらを見ている。
ただ、物量しか自慢することのないモンスターは個体では弱く、擬態に気が付く様子もない。
「しかし、突っ込みどころのある戦場ですねぇ。サイラちゃんもそう思うでしょう?」
「う~?」
サイラの背中をなでるセラ。
サイラは気持ちよさそうにしているが、まあ、セラが何を言っているのかはさすがに分からないだろう。
「それにしても、宝剣ニブルヘイム。『自分がやったことを、巨人がやったこととして再出力する』能力と、『絶大な氷属性』ですか、シンプル……な方ですね」
特殊な効果というよりは、『膂力の強化』と『属性』というものなので、まだわかりやすい方だろう。
「サイラちゃん。将来、あなたはアレを使うことになるんですから、今のうちにちゃんと見ておきましょうねー」
「う~♪」
撫でているゆえに気持ちよさそうにしているサイラ。
ただ、その視線は……リューガのほうを向いている。
幼く、周囲の認識が魔力によるもののほうが大きいのが今のサイラだ。
リューガの魔力、のようなものがわかるのだろう。
……いや、コアモンスター云々に関しては、『五感よりも魔力感知のほうが優れているからわかる』というもので、別に魔力感知そのものも『赤ん坊レベルと言われれば納得するくらいのもの』だろう。
空中にいながらサイラがリューガの魔力を感知できるのかは疑問ではあるが……サイラの様子を見るに、リューガの魔力を感じ取ることはできているのかもしれない。
「あ~♪」
ただ、セラの太ももに張り付いて離れようとしないので、セラとしてはばかばかしくなってきているのも、また事実である。




