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第44話 レッドエリア

 レッドエリア


 王国の南西、神聖国の南東、帝国の北の国境線に位置する、文字通りの『中心地』と言える場所だ。


 ここが発展していたら、領土問題でもめることはあるだろうが、少なくとも今以上に発展していただろう。


 ずいぶん昔の話で、モンスターの大氾濫が発生したことで、誰も手が付けられず、そのままになっている。


 ちなみに、大氾濫の正体そのものはわかっていて、『ダンジョンの暴走』だ。


 ダンジョンは内部にモンスターが湧き出てくる特殊環境だが、これが一定数を超えると、ダンジョンの外に出てくる。

 しかし、普段はモンスターが外に出てくる様子はなく、『一定数を超える』という状態になったとき、はじめて外に出てくるという、学者が頭を悩ませているものだが、理屈はともかく、発生した大氾濫を鎮圧するために三国から戦力が派遣され……モンスター側の物量になすすべもなかった。


 ただし、彼らには一つだけ弱点がある。

 それは、『一定以上の量の水を嫌う』のだ。


 ただ、これに関しては『レッドエリアを囲っている逆三角形の河』を彼らが超えてこないことを理由としたもので、真相はわかっていない。

 ただ事実として、彼らは河を超えてこない。


 だが、モンスターはあふれ続け、意思がなく本能のみで動き、空気中の魔力を吸うだけで生きていけるゆえに、どこまででも増えていく。


 最終的に、立錐の余地もなくなった。


 ★


「めちゃくちゃぎっしり詰まってるな」

「腕を動かすことすらできませんねアレ」

「壮絶な量だが、逆に言えば、ダンジョンというものがどれほど融通が利かないのかがわかるな」

「帝国でもモンスターを倒し続けてるけど、なんだかここまでくると……言葉も出ない」

「う~♪ あ~♪」


 特に状況がわかっていないサイラ君はセラの太ももでのんびりしているが、ほかの四人は立錐の余地もなくなったレッドエリアの悲惨な現状に頬が引きつっていた。


「しかし、そこまであいつらは河が嫌いなのか……」

「外側にいるモンスター。内側からあふれてるモンスターのせいで落ちそうだけど、めちゃくちゃ耐えてるもんな。足を地面に埋めてまで」

「何故河が超えられないのか。それに関しては学者を悩ませているみたいですが……ただ、コアモンスターがいて、そのモンスターを確保すれば倒せることは事実ですね」


 目的は変わらない。

 ただ、ちょっと現実の光景が衝撃的だっただけだ。


「しかし、そんなコアモンスターが、これほどのモンスターに紛れていてわかるものなのか?」

「時々デカいのがいるから、そいつらの近くにいるって言ってたし、まずはそのあたりをどうにかしねえとな。てか、数が減らねえと拠点なんて作りようがねえぞ。ちょっと隙間を作る程度だと、すぐに周りから流れ込んでくる」

「それはそうだな。とりあえず、モンスターの数を減らすことを第一に考える必要があるか。ていうか、ここまで多いとは想像だにしなかったんだが……」

「はぁ……ヴィスタ様からの資料に何か書かれていますか? やることはシンプルなのであまり読み込んでなくて……」

「セラってヴィスタの側近のわりにそういうところが杜撰だよな」

「やかましいですね」

「きゃっきゃ♪」

「笑うなクソガキ」

「赤ん坊になんてことを」


 指先で頭を押さえてちょっとグリグリしているセラに八風が苦笑する。


「まあ、昔からヴィスタが書いた資料を読み込んでるのはダイナのほうだったな」

「ダイナのほうが読んでいたか……まあ、そうだろうな」

「でしょうね。えーと……河を超えられない理由が書かれていますが、読みます?」

「短いなら」

「簡単に言うと、『嫌いな質の魔力が濃密に含まれているから』だそうです」

「嫌いな質の魔力?」

「レッドエリアを囲っている逆三角形の河は、すべて、神聖国よりも西にある、縦に伸びた山脈から流れてきたものですが、この山脈であふれている魔力が水に流れ込んでいます。それを嫌っているとのこと」

「あー、なるほど。だから、『水属性魔法を使えば攻略できる』っていう手段が通用しなかったわけか。さすがにそこまではわからねえもんな」


 河を超えられないと聞くと、普通に考えれば『水が嫌い』か『水属性が弱点』となる。


 そのため、水属性魔法使いが用意されたが、それでも攻略できなかった。


 山脈から流れてくる水だからこそ嫌がっているのであって、普通に魔法として使う水はどうでもいいのである。


「……ただ、普通の水が効かないから、河の水に理由があると考えるのが普通では?」

「魔力が含まれてるのはわかっても、山脈の魔力だとはわからんだろ。実際の山脈まで距離が遠すぎて、若干『直感の外』になる……いや、『賢人学会』がわからねえとは思えねえんだが……」

「さすがに『わかっているけどあえて漏らさない』ということはないよな。団結させたくない強硬派ならわかるが、賢人学会は保守派だろ?」

「……」


 若干きな臭くなってきた様子。


「まあ、とりあえずモンスターを減らすか。話はそれからだ」

「そうだな」


 これからやること、一手先は決まっている。

 ならば、二手先三手先のことはとりあえず後回しだ。

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