第43話 竜上道中
ヴィスタは『とあるドラゴン』を呼んで、それをアルバとレッドエリアの輸送を解決するという話になっている。
ただ、普通に考えて、『ドラゴンの上に乗って移動する』ということを、赤ちゃんが耐えられるのかということだ。
馬車を用意し、地上で爆走するという選択肢は一応あるのだが、ドラゴン輸送との比較を考えると、なかなかスピードの効率に違いが出る。
もちろん、ドラゴンの上だからと言って安全性がないわけではない。むしろ、ヴィスタが用意するドラゴンであり、『何かある』と思うのが普通だ。
というわけで、サイラ君がドラゴンの上で問題ないならそれで、問題ありそうなら馬車にするということになるのだが……。
「う~。きゃっきゃ♪」
問題なさそうである。
正座しているセラの太ももにべったり張り付いて離れようとしない。
「やっぱりセラの太ももは全てを解決するんだな」
「後でボコボコにしますよ」
で、そのドラゴンの上なのだが、セラ、リューガ、マックス、八風、サイラの五人が乗っている。
なお、『輸送』という点で選んだゆえだろうが、腕もしっかり発達したドラゴンであり、かなり大きめの鉄の箱を運んでおり、ここに必要な物がそろっている。
「というか、このメンバーで一気にレッドエリアまで移動か……そこまで予想してたのかな」
「そうだろうな」
八風とマックスにとってはため息をつきたくなるような話だ。
レッドエリアだが、その開放に関して、王国、神聖国、帝国、大樹国の四か国がうまく手を出し合う必要がある。
とはいえ、上手く手を出し合うといえ、計画の発案は帝国であっても、全体指揮は大樹国、最大戦功は王国となるだろう。ぶっちゃけ、計画の根本はヴィスタとサイラで完結している。
とはいえ、そもそもの開放目的に『四か国の連携』があるので、神聖国と帝国もしっかり手を出す必要がある。
「……要するに、僕とマックスがレッドエリアにいるモンスターを倒しまくる担当になるってことも、ずっと前から見えてたのかな」
「だろうな」
「僕、『ものすごく働いてもらう』って初対面で言われてて、その割に何も言われないなって思ってたら、こういうことになるとは……」
八風はちょっと嫌そうな顔をしている。
というか、帝国から大樹国に来る場合、レッドエリアを少し避けて移動することになり、『あらかじめチラ見』してきたのかもしれない。
その時の様子を考えると、なかなか『マジで言ってんのこれ』となる状態だったのだろう。
「コアモンスターを発見して確保すれば、レッドエリアの包囲殲滅なんてコストのかかることをしなくてもいいからな。急所を突いてるようなもんだし。ただ、中でも強力な個体に守られてるって話だから、二人はそれを片付けるってことになるのか?」
「そうなる。とはいえ、同時に拠点の建築もやっておきたいし、それに関してはリューガに任せる。このドラゴンはサイラとセラと乗せて、上空から探ってもらう必要があるから、拠点の建築を一人でやることになるけど、問題はないのか?」
八風はリューガに疑問を口にする。
少数精鋭でここに来たということもあって、各々の素質はともかく数は少なすぎる。
ただ、伯爵家の長男であるリューガに拠点建築スキルがあるのだろうか。
一応、ヴィスタが書いた資料では『建築可能』となっているが。
「拠点の建築ならやったことがある。というか、今でもそういう現場に行くことが多いぞ」
「……伯爵家の長男なら、その手の仕事は書類の上だけの話だと思うんだが」
「俺は書類をまとめる能力なんて高くないから、現場の人間として動くことで信頼を得てるのさ!」
「胸を張って言えることか?」
リドナーエ家の場合、ヴィスタがフローチャートを用意して、その通りに進めている部分が多いゆえに、いうほど『伯爵家』全体で書類をまとめる能力を求められない。
もともとリューガは現場タイプだろうし、『手つかずの土地の開拓の初期にかかわる』くらいなら経験を積むという意味でよくある話だが、ここまでガッツリ現場に加わっているのは伯爵家という身分では聞いたことがない。
とはいえ、かなり武闘派なのがそもそものリドナーエ家であり、長男は現場の人間としての経験が求められるのだろう。
「まあでも、拠点の建築なら任せておけ。設計図も貰ったし、材料もしっかりしたものばかりだ。ヘマしねえよ」
「……まあ、僕があーだこーだ言う以前に、ヴィスタは君のことを理解しているだろうね」
「だろうな。だからこそ任せるんだろうし」
「とはいえ、関わらせる一番の理由は、リドナーエ伯爵領とレッドエリアが隣接するゆえに、リドナーエ家から重要な立場の人間が来る必要があるからでしょうね」
「あー。そっか。中央集権型で、特に神聖騎士団が何かを言えばそれが通る神聖国と、権力構造がしっかり定まっていない帝国に比べて、王国はそのあたりの分け方がきっちりしてるし、王国側からのレッドエリアの管理はリドナーエ家が担当することになるからね」
「……?」
わかっていないやつが二人いる。
片方は赤ん坊なのでいいとして、もう片方はちょっとまずい。
「……思ったより、行き当たりばったりだよな」
「そうだな!」
「嬉しそうにするな」
「俺の信条は二手先三手先を考えておけば後悔しない。だぜ!」
「一手先をまず考えろ。だからその場しのぎになるんだろうに」
……ただ、彼の父親であるゴードンは何か考えたり悩んでいるように時折見えても、実際のところは何も考えていないことが多い人間だ。
リューガは基本的に父親を見てきたので、ヴィスタの頭脳に嫉妬することがない反面、こういう『未来を見据える』ようなことはマジで苦手である。
……というか、まあアレだ。
ヴィスタからいるからリドナーエ家はどうにかまとまっているが、実際、彼らの管理能力を考えると、準男爵家くらいがちょうどいいのだ。
一人でシステム面を何とかしてしまうヴィスタがおかしいというだけで。
「……こんなのでよくバランス取れてたよなぁ。すごいというか、呆れるというか……はぁ」
ため息をつく八風だが、セラもマックスも同意見である。




