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第41話 実際

「ほう、なるほど、確かにルイベルの表情がスッキリしているように見えましたが、そういうことですか」

「ヴィスタさんって優しいんですね!」


 アルバ政府役所のとある部屋。


 そこでは、ダイナがセラとアーシェを相手に、書類をまとめながら話している。


 あの夜に行われた説得に関してダイナが話して、セラとアーシェも思うところがあったようだ。


「まあ、優しいかどうかといわれると、疑問ではありますが」

「え?」

「私はいつものやり方だと思っていますよ」

「いつものやり方?」


 アーシェは首を傾げた。


「ヴィスタ様はあのようなカテゴリですから、まあいろいろ狙われやすいんですよ。確かに常軌を逸した頭脳の持ち主ですが、やはり物理方面が貧弱すぎますから」

「そうですね。あんなに細い人。初めて見ましたし、狙われやすいというのも分かります」

「そこで、目当ての人間に自分を攻めさせるような状況を整え、誘導し、それを圧倒的に迎撃するという方法をとります」

「巨大台風、凄かったですからね」

「そしてとらえるわけですが、ヴィスタ様は被害者という立ち位置に自分を置きながらも、それを一切責めたりしません。むしろ、そこで相手が抱えている悩みやコンプレックスを全て言い当て、そのうえで、相手がそれを受け入れられるような理屈を並べます」

「ほうほう」

「最後に、相手が自信を持てるように、最初の一歩を踏み出せるように、自分の才能を最大限伸ばせるような資料を渡します。これで大抵はおとせます」

「なるほど……その……なんていうか……詐欺師ですね!」


 アーシェはそうまとめた。


 確かに、明らかに善人とは言えないやり口である。相手も状況も、すべてを利用する気満々なのだ。


 もちろん、ヴィスタの怪物のような頭脳があるからこそ可能なことではある。


 しかし、使い方がなんとも……。


「とはいっても、実際に効くからな。人間ってのは、自分で抱えているものを晒したくはないけど、理解してほしいっていう矛盾を抱えてるもんだ。だから、『理解してくれて、自分の本当の力を引き出してくれる』っていうのは、なかなか抗えない」

「うーん……なんだか、凄いというかヒドイですね」

「ヴィスタ様もいろいろやりますからね。大体は、悪いのは相手、ひどいのは ヴィスタ様であるというパターンが多いですから」


 ただ、賢すぎるがゆえに、過去と可能性が見えるという。言ってしまえばそれだけのことなのだが、その精度が高すぎる上に、『それらを利用する気満々』というのがこういう状況を生むのだ。


「ヴィスタさん。人の心があるんですか?」

「愛されて育ったから、まあ、『普通に接する』分には普通に優しいだろ。ただ、感情は『重要』であっても『必要』とはならないからな。重要だからないがしろにはしないけど、だからと言って、『手に入れるべき結果』のために感情を最優先にすることはない」

「うーん……」

「過去の時点で、未来の自分が何を考えてしまうのかがわかるという部分はあるでしょう」

「だな。まあ、予想と実物の間には『おそらく頭脳だけではわからない違い』みたいなのが実際にあるだろうし、いくつか軌道修正できるようにはしてると思うけどな」

「私、ヴィスタさんとは普通の関係でいたいですねぇ」

「みんなそうだよ」


 ダイナはため息をついた。


「……まあでも、打算がすべてってわけじゃないと思うけどな。もしマスターが非情な人間だったら、もっと世界は別の形になってるだろうし、そもそも説得なんてしに行かねえだろ」

「それはそうですね!」


 ヴィスタも人間である。それは変わらない。

 変わらない……はずなのだが、まあいろいろ怪しい部分はある。


 とはいえ、『その程度』のことだ。

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