第34話 お前おったんかい……
セラに暴言を吐かれてから一週間。
ルイベルは本当に周囲への圧力をかける行動を始めている。
無視されたり、逆に威圧されてビビり散らかしたり、リューガ・リドナーエから拳骨を食らったり、まあいろいろありながらも、ルイベルはいろんなところに威圧しに行っている。
「……なんか頑張ってるなぁ」
「ああ。あの行動力は何処から湧いてくるんだろうな。そろそろ理解してもおかしくねえと思うけど」
アルバ政府役所の二階。
そこでは、ダイナとヘルバが話していた。
ダイナは多くなっている書類を整理しており、ヘルバは荷物持ちである。
ヘルバは普段、政府直属の冒険者として地下ダンジョンの深いところにもぐったりしているが、そうでないときは役所で雑用をしていることが多い。
今回もその一環で荷物持ちをしているのだろう。
「マスターからは『喉元過ぎれば熱さを忘れる』んだが、この忘れるのが速すぎるっていうことらしい」
「……いや本当に速いな」
「実家の力をチラつかせて『俺に従わないとどうなるか』って言ってるみたいだけどな」
「ぶっちゃけユフェード家って、ヴィスタと争いたいって思ってるのか?」
「んなわけねえな。まあその、王国にしても神聖国にしても、階級が高くなればなるにつれてマスターを相手にしたくねえってやつが多くなる。ユフェード公爵家としても、戦いたくはねえだろうさ」
「要するに実家の気持ちもわかんねえのか……」
「国に戻ったら酒も肉も女も自由自在な身分だからな。『欲しいものがあったら手元に来るのが当然』って思考なんだろ」
「俺、アイツ以上に社会のことなめてるやつ見たことねえわ」
「俺もだ」
まあ、散々な評価である。当然だが。
「そういや、ヴィスタの兄貴だっけ。この町に来てたんだな」
「ん? ああ、来てたな。息子連れてたよ」
「へぇ……そういや伯爵家の嫡男か。二十歳だったっけ? それくらいなら子供がいる時代か……どんな奴なんだ?」
「いい感じにバカだな」
「そうか……」
「リドナーエ家は四代目の奥さんが帝国の人で、なんかそこからの血が強いのかわからんけど、基本的に陽気な性格だよ」
「ほー」
「あと、リドナーエ家の長男に共通して言えることなんだが、穢れを知らないのかってくらいめちゃくちゃ奇麗な目をしてる」
「本当に二十歳か?」
「本当に二十歳だな」
リューガにしても、その父親であるゴードンにしても、かなりきれいな目をしている。
まあ穢れを知らないというより、大抵のことは寝たら忘れるのだ。ちょっと帝国の皆さん遺伝子強すぎませんかね?
「ちなみに、その息子って、変な性質をもったりしてねえよな」
「それは知らんけど、まだ生後一か月だぞ」
「うーん、そんなもんか」
その時。
「あ、あの、ダイナさん。この子、どうすれば……」
そういって、女性職員がダイナがいる部屋に入ってきた。
その腕には、生後一か月くらいの赤子を抱えている。
ものすごく笑顔で、周囲をきょろきょろ見渡していた。
「げ、元気な子だなぁ……」
「うーん。ちょっと帝国の遺伝子が強すぎるな」
「帝国民って赤ん坊でもこんな感じなのか?」
「こんな感じだ」
「……」
ヘルバは『やってられねえ……』といった表情だが、残念なことに、これが真実である。




