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第20話 仕込みって一番ダルい

 垂毒龍皇は彼らが毒霧竜と呼ぶあのドラゴンの進化版だ。


 言い換えれば、持ち合わせている『機能』に関しては、毒霧竜の完全上位互換といえる。


 圧倒的な感知能力と、土の中にずっといたとは思えない戦闘センス。

 これだけ言えば、搦め手も正攻法も通用しない理不尽ドラゴンだが、理不尽なのはこのドラゴンだけではない。


 ダイナもセラも、そしてマックスも、十分『理不尽』なのだ。


「おりゃああああ!」


 ダイナが剣を振り上げると、そこから三日月のような形をした魔力の塊が放出される。

 高速で飛んで行ったそれは垂毒龍皇の胸にあたるが、鱗を削った程度であまり聞いた様子はない。


「それっ」


 セラが指先からレーザーをいくつも出して足に直撃するが、やはりあまり聞いていない。


「ふんっ!」


 マックスが肉薄して腹に剣で一閃。

 鱗に切れ目は入ったが、傷は深くはない。


「グルル……ギャオオオオオオッ!」


 傷は深くない。

 ように見えるのだが、垂毒龍皇は叫び声を出した。


「ふーむ……マスターがレシピを書いたあのポーション。毒属性に対してかなり特攻性能があるみたいだが、思ったより効いてるな」

「そうですねぇ。とはいえ、それだけではないような気もしますが」

「こんな化け物を相手に『普通』に戦えるか。なかなか理不尽な話だ」


 それぞれ話す三人。

 ヴィスタが考案したポーションを飲むことで、一時的に毒属性に対して攻撃力がかなり上がっている様子。


 むろん、相手は全長五十メートルの化け物であり、人間サイズの剣で斬った程度で何かが起こるようには感じられない。というか、事実として彼らが与えた傷は深くないわけだが、事実として垂毒龍皇は相当嫌がっている様子。


「はぁ……めんどくせえな。こいつの倒し方」

「仕方がないでしょう。倒すだけなら、このメンバーなら一分もかかりません。ただ、そのまま倒してしまうと毒が放出されます」

「毒霧竜の毒とは明らかに性質……というか、『目的』が違うな」


 それぞれ構えつつ、攻撃を加えていく。


「ったく、ちょっとずつ毒を変質させるってことらしいが、やらなきゃならん身にもなってほしいぜ。チマチマやるのはあんまり好きじゃないんだよなぁ」


 文句が多いダイナ。

 というより、彼の基本スペックを考えると、とりあえず目の前にあるやらなければならないタスクはぱっぱと済ませることができるタイプだ。


 そのため、あまりチマチマしたことを最近やっていない。


「はぁ、ヴィスタ様があなたに何か支持をするとき、そういうチマチマしたことを頼まないだけでしょう。私は時々頼まれますよ」

「あ、そういうことね……」


 完全に余裕のダイナとセラ。


 ただ、二人に比べると、マックスは真剣な目つきで垂毒龍皇を見ている。


「ん? どうしたんだマックス。そんな真剣に見て」

「お前たちほど余裕ではいられないということだ」

「え、でも、馬車の中でマスターが書いた資料を読んだだろ?」

「隅々まで読んだ。が、正直、考えて書いただけにしては、情報の密度が濃すぎてその……」

「直感に外れると? ヴィスタ様の頭脳と普通の頭脳を同列に扱うと痛い目にあいますよ」

「……それはそうか」


 ヴィスタが用意した資料。

 垂毒龍皇の特性や、戦う場合に必要なこと。

 そして、アルバ大森林と神聖国において、彼にかかわる『因縁』など、様々なことが記されていた。


 マックスも、ヴィスタの頭脳が異常なレベルに達しているのは知っている。

 ただ、また直感的に受け入れられるわけではない。


「まあ、信じる信じないは自由だしな。ただ、ヘマすんなよ」

「わかっている」


 マックスはうなずいた。


「……そろそろですね。今から倒せば、毒は放出されず、体内の特定の器官にたまるようになります」

「やっとか! よっしゃあ! ぶっ倒してやるぜ!」


 一気に元気になったダイナ。

 魔剣を使ってもなおダメージは少なそうだが、いったい何を始める気なのやら……、

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