新型噴進弾視察2
『巨大な噴進弾を見た山本総理兼海相と東條陸相は、驚きのあまり顔を見合わせた。驚く2人にコロリョフ技術者はこれがフランスの投入した、大型噴進弾に対抗出来る代物だと断言したのである。糸川技術者がこの新型噴進弾について説明を始めた。全長12メートルで直径1.4メートル、1トン弾頭を装備しマッハ2の速さで300キロを飛翔すると語った。それを聞いた山本総理兼海相と東條陸相はまたしても驚いた。そして製造単価も4発で重陸上攻撃機深山1機分だと語り、大量生産も容易だと説明したのである。それは今後の配備にも直結する事であり、その製造単価の安さは最大の利点であった。
そしてコロリョフ技術者はこの新型噴進弾を今後の全ての噴進弾の基準とし、現在別の部署が開発している誘導装置を組み込み誘導弾とする事が最初の目的だと語った。将来的には地上配備型は現在の1段型から多段型にして射程を伸ばし遠く離れたアメリカ本土まで直接攻撃が可能になり、更に対空用・対艦用・対地用の多用途に及ぶ誘導弾を開発し艦艇に搭載したり地上車輌や航空機にも搭載可能となり、特に潜水艦に搭載する事が可能になれば秘密裏に攻撃するのが可能になると語った。そして糸川技術者は空を指さしながら弾頭を人工衛星に変更すれば、偵察型を打ち上げて宇宙から偵察が可能になり通信型を打ち上げて地球各地と連絡がとれる等、更なる可能性があると語り将来的には月にも行けると断言した。
驚くべき構想に山本総理兼海相と東條陸相は圧倒されたが、コロリョフ技術者は取り敢えずはこの噴進弾の発射実験を見てもらうと語り、糸川技術者や他の技術者と共に発射準備に取り掛かった。海軍航空技術廠長はその準備の間に山本総理兼海相と東條陸相に、あの2人がいるからこそ大日本帝国の噴進弾技術は発展していると断言した。それはこの短時間ながら山本総理兼海相と東條陸相にも良く分かった。その間に発射準備が整ったようでコロリョフ技術者と糸川技術者が再び2人の元に戻って来た。そして発射準備の整った新型噴進弾について改めて説明した。新型噴進弾は軍用トラックに牽引する発射機に設置され、その発射機を垂直に持ち上げて燃料を注入してそのまま発射するというものであった。その為に発射台がそのまま牽引する発射機である為に機動性が高く、陣地転換が容易で戦略性が高いとコロリョフ技術者は自信満々に語ったのである。そして耳栓を山本総理兼海相と東條陸相に渡すと、発射に備えるように語った。そして発射の最終手順を整え、コロリョフ技術者が腕を振り落とすと新型噴進弾は凄まじい轟音を発しながら海に向けて発射されたのである。それを呆然と見つめる山本総理兼海相と東條陸相であったが、暫く飛翔を続けると海面に着弾し壮絶なる水柱を巻き上げた。
あまりの性能に山本総理兼海相と東條陸相は目を見開き見つめるばかりだった。誘導装置はアナログコンピューターを用いたものであり重陸上攻撃機深山用に大量生産している電機メーカーの日立製作所・三菱電機・東京芝浦電気に対して、更なる大量生産を要請したとも語ったのである。しかしそれでも誘導装置は初期型の簡単な物に過ぎず、単に方向を大まかに指定する事しか出来ないとも説明した。その為に誘導弾への昇華へはまだ先になると残念そうに、コロリョフ技術者は口にした。しかし電機メーカーは新型コンピューターを開発し、誘導装置の開発も同時進行中だと語り誘導弾への進化は近いとも語った。
しかしその副産物として近接信管の開発が順調であり、年内には全ての噴進弾と両用砲砲弾に近接信管が組み込めると海軍航空技術廠長は力強く宣言したのである。それを聞いた山本総理兼海相と東條陸相は驚いた。ここまで電子技術が発展しているとは思わなかったのである。しかし電子技術は新時代に於いては重要な要素を占める為に、山本総理兼海相は更なる支援を行う事を語った。そして新型噴進弾と自走式多連装ロケット砲カチューシャを大量生産し軍に配備する事を決定した。それは東條陸相も反対する理由が無く、更に空技廠への予算増額を山本総理兼海相に提案した。山本総理兼海相はそれは当然の措置だとし、更なる予算増額を約束した。これにより大日本帝国に於ける噴進弾開発速度は飛躍的に向上するのであった。』
小森菜子著
『帝國の聖戦回顧録』より抜粋
フランスがブラウン博士によりロケット開発を行っており、大日本帝国はコロリョフ技術者によりロケット開発を行っています。中々面白い事になりますね。しかもフランスとアメリカ合衆国は同盟関係にありますので、史実より早くアメリカ合衆国にはロケット開発技術が入る事になります。