ロンドン攻防戦
大英帝国陸軍は機甲師団を前進させ、フランス・オランダ陸軍迎撃を行う事にした。大日本帝国陸軍の三四式戦車の能力を高く評価しており、迎撃は苦も無く行える筈であった。だが大英帝国陸軍機甲師団三四式戦車の前に姿を現した、フランス陸軍の戦車は三四式戦車よりも更に巨大な姿をした重戦車であったのである。
『ロンドン侵攻作戦にフランス陸軍が投入した新型重戦車は、[VI号戦車ティーガーI型]であった。最大重量57トンを誇る重戦車であった。このVI号戦車ティーガーI型はIV号戦車に代わる新型中戦車であるV号戦車パンターとは違う目的で、陣地突破用重戦車として開発された為に大日本帝国陸軍の新型戦車である三四式戦車の登場によるT34ショックより以前から開発されていた。その為にVI号戦車ティーガーI型はそれまでの試作重戦車を拡大した設計であって、後のV号戦車パンターと異なり、三四式戦車と遭遇したうえでの機械的比較や戦訓をもととした、傾斜装甲などの革新的な設計は取り入れられていなかった。しかしながらVI号戦車ティーガーI型は装甲の厚さがこれを補ったのである。更にこの戦車はアメリカ合衆国も採用し大量生産を行っており、フランス陸軍がロンドン侵攻に定数を満たす事が出来たのもアメリカ合衆国の大量生産によってであった。
フランス陸軍の新型重戦車に驚いた大英帝国陸軍機甲師団であったが、こちらも大日本帝国陸軍の新型戦車である三四式戦車を装備していた。その為にVI号戦車ティーガーI型が有効射程内に入ると、55口径85ミリ砲を一斉に発射したのである。一糸乱れぬ一斉射はその大多数がVI号戦車ティーガーI型の正面装甲に命中した。これまでの戦車より遥かに強力な55口径85ミリ砲はVI号戦車ティーガーI型を撃破すると誰もが思っていた。しかしその砲弾は甲高い音と共に弾き返されたのである。驚く大英帝国陸軍機甲師団の将兵達であったが、次は自分達が砲撃される番であった。前進を続けていたVI号戦車ティーガーI型はその長砲身から強烈な砲撃を行うと、次々と三四式戦車は撃破されたのである。しかも三四式戦車の1番装甲が分厚い砲塔正面から撃破されたのだ。衝撃的な光景であった。
呆気にとられた大英帝国陸軍機甲師団であったが敵の新型重戦車は遅く、速度では三四式戦車が有利と判断し機動戦を行うべく突撃を開始した。機動力に勝る利点を最大限に活かして、VI号戦車ティーガーI型に500メートルにまで接近し砲撃を行う事で、ようやく撃破する事が出来たのである。だが深刻な差であった。砲撃力と装甲では圧倒的に三四式戦車が負けていた。何とか速度だけは勝っており機動力を活かした戦いを挑んだが、VI号戦車ティーガーI型は熟練工した戦車兵が乗り込んでいるのか、超信地旋回と砲塔旋回を巧みに組み合わせて三四式戦車に後方に回り込まれないように対抗していた。
その為に機動力により彼我の距離が縮まる事によりVI号戦車ティーガーI型も撃破される車輌は増えたが、それ以上に早く三四式戦車は撃破されていった。あまりの被害の大きさに大英帝国陸軍機甲師団は後退を決定し、空軍に支援攻撃を要請した。それを受けて大英帝国王立空軍が出撃し、こちらも大日本帝国から提供された陣風艦上戦闘機が飛来した。その姿を見た大英帝国陸軍は圧倒的な航空支援により、フランス陸軍の新型重戦車を破壊出来ると確信し歓声を挙げた。だがそれは突如として飛来した轟音に掻き消されたのである。何事か驚く大英帝国陸軍の将兵達は轟音のする方向を見ると、フランス陸軍航空隊の識別表示を付けたジェット戦闘機が向かってきたのである。大英帝国陸軍将兵達は呆然としながらその機体を見つめていたが、呆気にとられたのは大英帝国王立空軍陣風艦上戦闘機の操縦士達も同じであった。まさかフランス陸軍航空隊もジェット戦闘機を投入してくるとは思ってもいなかった。その為に対応が遅れフランス陸軍航空隊のジェット戦闘機[Me262]の30ミリ機関砲をまともに喰らい次々と叩き落された。慌てた大英帝国王立空軍も何とか現実を受け入れて空中戦に突入しようとしたが、そこに新たな機体が乱入して来た。その機体は従来機であるレシプロ機であったが、今迄のフランス陸軍航空隊の主力機だったBf-109とは違う新型機であった。新たな機体はFw190と呼ばれる機体だった。純粋に大日本帝国海軍の陣風艦上戦闘機に対抗して開発途中であった機体に、武装やエンジン換装を行い実用化させた機体だった。しかもFw190はMW50と呼ばれるメタノールと水がほぼ同量より成る混合液を利用した出力増強装置を装備していた。Fw190はアメリカ合衆国の開発したR-2800ダブルワスプエンジンを搭載し、MW50出力増強装置を使えば10分程度の間2270馬力、720キロを発揮出来た。
その10分間の出力増強を可能としたFw190であったが、陣風艦上戦闘機の基本的な格闘性能には及ばなかった。しかし未だに機体に慣れていない大英帝国王立空軍の操縦士達は練度不足により、Fw190に撃墜される機体があった。その中に更にMe262が速度を活かした一撃離脱戦法により突撃して来た為に、更に陣風艦上戦闘機は撃墜される機体が続出した。あまりの被害に大英帝国王立空軍は陸軍を支援出来る状況にあらず、陸戦もVI号戦車ティーガーI型に圧倒されるばかりであった。その為にロンドンの防衛司令部は、グラスゴー近郊の空軍基地に移転していた大日本帝国海軍航空隊第11航空艦隊に対して救援要請を出したのであった。』
小森菜子著
『欧州の聖戦』より一部抜粋
ジェット戦闘機Me 262シュヴァルベですが、史実でもヒトラーが色々言わなければ、早期実用化は可能でした。その為にこの小説の世界線はヒトラーはそもそも画家になっていますし、開発者はフランスがスカウトして開発しております。
その為に実用化可能として、フランス陸軍航空隊の新型機として登場しました。




