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通商破壊戦

1942年6月8日。大日本帝国帝都東京首相官邸では、山本総理兼海相が対策会議を開催していた。内容は今月に入ってから海上保安庁が撃沈したアメリカ合衆国海軍潜水艦の数が急激に増加していたからである。改めて海上保安庁について説明すると第一次世界大戦後の1922年に設立された、輸送船団護衛と領海警備専門部隊である。海軍省外局であり準軍事組織として国内外に認知されていた。設立の理由は第一次世界大戦に於いてドイツ帝國の無制限潜水艦作戦による通商破壊作戦が、大英帝国を海上封鎖に追いやりかけた事により同じ海運国家として、海上輸送路の確保が国家の命運に繋がると判断されたからである。輸送船団護衛は『護衛隊群』と呼ばれる部隊が担っていた。護衛隊群は『航空護衛艦』と呼ぶ海軍の軽空母に相当する艦艇を旗艦として、『重護衛艦』(海軍の軽巡洋艦相当)と『軽護衛艦』(海軍の駆逐艦相当)から編成されていた。航空護衛艦はあくまで護衛を行う事から、搭載するのは艦上戦闘機と対潜哨戒機の2種類であり防空と対潜に特化していた。だがそれでも航空護衛艦は蒸気カタパルトを装備している事から、並の国の空母よりも高性能であった。その為に大日本帝国海軍が開戦後に始動させた『戦時艦船急速建造計画』で建造する軽空母10隻は海上保安庁の航空護衛艦を改良した設計になっていた。領海警備は大日本帝国の広大な領海を警備しており、『海防艦』を各港や海軍の鎮守府・警備府に配備して行っていた。護衛隊群や海防艦は大日本帝国の進撃に合わせて拡大しており、現在は西はアラビア半島、東はサモア、南はニュージーランド、北は樺太に至る広大な範囲を担当していた。そしてその海上保安庁が撃沈したアメリカ合衆国海軍の潜水艦が昨日6月7日の段階で、20隻を超えたのだ。先月までは月平均5隻であった為に、既に4倍も撃沈数が急増していた。これにより海上保安庁は異常な事態が発生しているとして、海軍省に知らせ海軍省は山本総理兼海相に事の次第を説明したのである。それを聞いた山本総理兼海相はアメリカ合衆国による通商破壊戦が行われているとして、国家危急の内容と判断し政府一丸となって対策を行う必要があるとの事で、対策会議を開催する事にしたのであった。

状況について海上保安庁長官は一通り説明すると、今そこにある危機だと断言した。生半可な対応ではアメリカ合衆国の通商破壊戦は封じ込める事は不可能であるとも言ったのである。通商破壊戦と聞いて岸信介商工大臣は、山本総理兼海相に早急な対応を求めた。大日本帝国が現在の戦時体制を行えているのは、岸商工大臣の手腕による所が大きかった。南方地帯や満洲帝国・中華民国・オーストラリア・ニュージーランドからの資源が大日本帝国に流れているからこそ、各財閥の軍需企業は大量生産を行え民生品も需要を満たす事が出来たのである。海運が寸断されるという事は大日本帝国はかつての戦国時代のように、兵糧攻めにされるのと同じ事であった。

賀屋興宣大蔵大臣も岸商工大臣と同じ危機感を持っており、通商破壊戦により海運が寸断されたら大日本帝国経済は破綻すると断言した。何と言っても現時点で大日本帝国が日本列島で自給出来るのは限られており朝鮮半島や台湾からの海運を始め、南方地帯や満洲帝国・中華民国・オーストラリア・ニュージーランドからの資源が海運で輸入されてこその大日本帝国経済であった。それが寸断されるとなれば製造業は壊滅的打撃を受け、軍に対する軍需物資製造のみならず民生品製造に対しても影響が出てしまう。そうなれば経済は完全に破綻し、戦争どころでは無くなってしまうと賀屋大蔵大臣は焦りながら語った。

岸商工大臣と賀屋大蔵大臣という大日本帝国の産業と経済を牽引すべき大臣が危機感を強めている事に、東條陸相と東郷茂徳外務大臣は通商破壊戦への対策は急務だと判断した。他の閣僚もそれに賛同しており山本総理兼海相の判断を待ったのである。全閣僚が通商破壊戦への対策を万全に行うべきという意見で揃った事により、山本総理兼海相は通商破壊戦への対策は海上保安庁に加え海軍連合艦隊も投入すると宣言したのである。投入するのは海軍連合艦隊の第5機動艦隊であり、第5機動艦隊は正規空母大鷹級の大鷹・沖鷹・神鷹・隼鷹・龍鷹・千鷹6隻を主力にしていた。更には大日本帝国本土や各要塞に展開する海軍の各航空隊が装備する対潜哨戒機も、通商破壊戦に投入すると断言したのである。海上保安庁長官はその言葉を聞き、感謝を述べた。

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