合同会議3
1942年5月20日。大日本帝国陸軍第1方面軍によるアラビア半島打通作戦成功から5日後、大日本帝国帝都東京首相官邸で『陸海軍合同戦闘評価会議』が開かれた。陸海軍合同戦闘評価会議はいつも通り、山本総理兼海相の挨拶から始まった。何と言ってもアラビア半島打通作戦により中東全域を解放出来た事は戦略的に重要であった。トルコとイランが中立を宣言しており、ロシアの大地は内戦状態である為にフランス・オランダの影響力から完全に解放された事になるのである。サウジアラビアは占領されていた為に解放後は、主権を回復し独立国として再起した。その為に大日本帝国はサウジアラビア・アラビア半島側のエジプト以外の地域、具体的には大英帝国のペルシア湾岸保護国・大英帝国委任統治領パレスチナ・フランス委任統治領シリア・レバノンでの占領統治を行う事になった。フランス委任統治領のシリア・レバノンは当然ながら、何故大英帝国の委任統治領と保護国に対して占領統治を行うかというと、大英帝国軍がフランス・オランダ陸軍の侵攻により壊滅しスエズ運河以西のエジプトに撤退していたからである。しかも大英帝国は現状では本土決戦の最中であり、部隊を派遣する余裕が全く無かったからでもある。その為にますます大日本帝国の既成事実が確立される事になり、大日本帝国陸軍は占領統治部隊として軽装備の自動車化歩兵師団2個を派遣する事になっていた。
山本総理兼海相の挨拶が終わると、次は各軍からアラビア半島打通作戦に関する説明が行われる事になった。まずは海軍が行う事になり、小澤連合艦隊司令長官が説明を始めた。今回のアラビア半島打通作戦は陸軍の活躍もさることながら、連合艦隊機動艦隊航空隊の絶対的な制空権獲得があってのものであった。フランス・オランダ陸軍航空隊を完全に圧倒し大活躍をした連合艦隊であったが、やはり航空兵力として展開出来るのが連合艦隊のみというのが負担が大きいものとなっていた。そこで小澤連合艦隊司令長官は本土から中東に新たに2個航空隊を有する『第10航空艦隊』を派遣すると語った。これにより中東地域での持続的な制空権確保が可能になると力説したのである。しかも新型機であるジェット戦闘機烈風と局地戦闘機紫電の大量生産も順調であり、配備も滞り無く進んでいると語った。更に一式爆撃機に代わる新型爆撃機として、中島飛行機製『重陸上攻撃機深山』が実用化されたと説明したのである。深山は戦前に開発生産が始まった一式爆撃機の後継機として開発されており、それは中島飛行機創業者の中島知久平直々の山本総理兼海相への直談判により行われたのである。中島知久平は開戦前から『アメリカ合衆国の大型爆撃機が量産に入れば大日本帝国は焼け野原になる』と語っており、大日本帝国の技術力を結集して対抗できる爆撃機の開発を山本総理兼海相に訴えた。その意見に山本総理兼海相も賛同した為に、重陸上攻撃機深山の開発が開始されたのである。その機体か遂に実用化され、大量生産が開始される事は海軍航空隊の戦力向上に繋がる事であった。
小澤連合艦隊司令長官の説明が終わると、次は陸軍となり東條陸相が説明を始めた。東條陸相はアラビア半島打通作戦に於ける海軍の協力と作戦の完遂に感謝の言葉を述べた。三四式戦車と一〇〇式機関短銃による打撃力向上が、フランス・オランダ陸軍に対してオマーン防衛戦時よりも圧倒出来た理由の1つだとも語った。現在大量生産が行われている41式機関短銃マンドリンに一〇〇式機関短銃から更新されると、歩兵部隊の火力は更に向上するとも力説したのである。だが東條陸相はアラビア半島打通作戦で大日本帝国陸軍の泣き所が顕になったと語り、砲兵部隊の機動力不足を改良する必要があると断言した。それは第1方面軍司令官の石原莞爾中将が意見書として纏め、輸送機により大日本帝国本土に届けられております東條陸相はその意見書を掲げながら、現在開発中の一式自走砲の早急実用化を強力に推し進めると説明したのである。それ以外の新兵器開発は順調であり、新型重戦車は海軍の10センチ両用砲を改良した主砲を装備した物として開発が進んでおり、海軍のジェット戦闘機烈風と共通機である陸軍の『ジェット戦闘機火龍』も実用化されたと語った。更に一式戦闘機隼の後継機である『二式戦闘機鍾馗』と、海軍の重陸上攻撃機深山の共通機である『重爆撃機連山』もそれぞれ実用化され大量生産が開始されたと語った。そして山本総理兼海相が説明したように、中東の占領統治部隊として軽装備の自動車化歩兵師団2個を派遣する事も改めて説明した。東條陸相は陸軍師団の増設が順調に行われているとも語った。開戦時の陸軍師団数は40個であったが、それを最終的には180個師団にまで増設、陸軍航空隊も開戦時の12個航空隊から100個まで増設する考えだと説明したのである。そしてそれが大日本帝国陸軍の徴兵可能限界だとも語った。海軍の艦艇増産計画と航空隊増強
、準軍事組織である海軍省外局の海上保安庁の増強も考慮する必要があり、しかも山本総理兼海相との取り決めにより根刮ぎ動員と軍需企業の熟練工の徴兵は行わない事になっていた。それでもこれだけの数が徴兵可能なのは女性も大日本帝国は軍人にしているからであった。
両軍それぞれの説明が終わると、次は詳細な戦闘評価について話し合われる事になった。
一気に新型機が4種類登場しましたが、詳細な説明はまた近い内に解説として投稿します。陸軍の重爆撃機連山は、史実なら連山も海軍の機体ですが、この小説の世界線はエンジンの共有や開発を共同で行っている事もあり、陸軍機として連山を登場させました。