対応策
中華民国政府からの特使が帰国すると、山本総理兼海相は緊急閣議を招集した。中華民国が参戦表明をするとは完全に予想外であったからである。緊急閣議で山本総理兼海相はまず初めに、中華民国政府からの特使による参戦表明について説明を行った。中華民国特使は今この瞬間から中華民国は、大日本帝国と共同で第二次世界大戦を戦い抜くと宣言し、陸軍は人口規模もあり既に50個にも及ぶ師(師団相当)を編成し、航空隊もパイロットの大量育成を行っており、規模を十二分に拡大出来ると語っていた。そして山本総理兼海相は今回の中華民国の参戦表明は、未だに非公式なものであり日程を調整して中華民国から蒋介石国家主席が来日して、日中首脳会談で正式に発表すると語ったのである。それには閣僚達は一様に驚いた。あの蒋介石が大日本帝国に直々にやってくるのだ。
東條陸相は中華民国軍の軍制に詳しかったが、現状の中華民国軍では正直に言えば『烏合の衆』だと厳しい意見を述べた。それは山本総理兼海相も同意見であり、中華民国陸軍の能力は大日本帝国陸軍の10分の1程度だとみていた。唯一にして最大の利点は中華民国の人口による動員可能兵力だけであった。兵器にしても中華民国軍の兵器は大日本帝国からの輸入兵器で構成されていた。これは中華民国が清朝の時代からの方針でもあり、自分達で兵器を開発生産するより、他国からの購入で賄おうとする方針だったのである。その為に清朝は日清戦争の時には主にドイツ帝国から兵器を購入していた。そして清朝が崩壊し中華民国となり、大日本帝国と同盟関係になってからは中華民国の兵器は大日本帝国製に切り替わったのである。これは中華民国にとっては直ぐ隣に兵器の製造が行える事による即効性が担保されるという利点になり、大日本帝国にとっては重要な兵器の輸出先である大口の顧客が直ぐ隣にいるという、双方にとって重要な利点となっていた。
そこで山本総理兼海相は海軍と陸軍共に、新型兵器の大量生産による更新を行っており更新対象の旧式兵器を全て、中華民国軍へ譲渡する事を提案したのである。それは東條陸相としても反対する提案では無かった。寧ろ更新による旧式兵器は訓練用に再利用しようにも、既に訓練用の旧式兵器は余っており戦争による技術革新により、兵器の入れ替わりは激しくなると予想される為に中華民国軍への譲渡は、中華民国軍の能力を底上げする為にも重要だと思われた。
他の閣僚達も反対する理由は無く、寧ろ戦争遂行に重要な兵数が増えるのは重要な点であり、有り難い事であった。