緊急閣議2
まずは1つ目のイタリア王国への援軍派遣に続いて、東條陸相がアメリカ合衆国への対応策を話し始めた。アメリカ合衆国がカナダへの侵攻を行ったが、それこそがアメリカ合衆国海軍が動かす事が出来ない証拠だと語ったのである。東郷外務大臣はピンときてなかったのか、東條陸相にどういう事か尋ねた。1926年(大正15年)に陸軍大学校の兵学教官に就任した事のある東條陸相は、かつてを思い出しながら東郷外務大臣に説明を始めた。先のトラック島沖海戦で海軍連合艦隊がアメリカ合衆国海軍太平洋艦隊を撃破した事により、アメリカ合衆国は残存艦隊の改装工事に追われていると推察出来ると東條陸相は東郷外務大臣に説明した。
如何にアメリカ合衆国が工業力の高い国だとしてもあれ程の数の艦艇を短期間で改装工事を行わせられず、しかも単なる修理では無く海軍連合艦隊に対抗出来る対空兵器増設の改装工事である為に、時間は必要だと推察出来ると語った。それにアメリカ合衆国の事であるから、開戦後に海軍が計画した『戦時艦船急速建造計画』を容易に上回る規模の増産計画を実行している筈で、その建造と改装工事でアメリカ合衆国全土の造船所は満員御礼の筈だ、とも語った。その説明に東郷外務大臣はようやく理解したように頷いたのである。山本総理兼海相も東條陸相の言葉に賛同し、改装工事と『戦時艦船急速建造計画』を容易に上回る規模の増産計画は間違いなく行われている、と断言した。
東條陸相はその為にアメリカ合衆国は海軍を現状では動かすに動かせない為に、動員可能な陸軍と航空隊でカナダ侵攻を行ったのであろう、と語ったのである。そしてアメリカ合衆国が海軍を動かせないなら、大日本帝国としては一気に中東方面からフランスとオランダを一掃するべきだと力説したのである。それを行えば苦戦する大英帝国に対しても義理を果たす事になり、海軍連合艦隊の殆どがオマーン沖に展開しているのも支援にうってつけだとした。ただしその作戦は海軍連合艦隊の支援が前提になってしまい、山本総理兼海相に賛成して貰えるか判断をお伺いしたい、と東條陸相は言葉を結んだのである。
山本総理兼海相は東條陸相の提案を全面的に支持した。とにかく中東からフランスとオランダ勢力を一掃し、大日本帝国と中東〜地中海のルートを確保する事が出来れば今後の戦略は何倍も楽になる、と語った。1942年3月10日に大日本帝国帝国議会に於いて更なる戦費として『第三次追加予算』が成立した。それは210億円にも達し、陸軍海軍の更なる軍備増強と軍需企業・海軍工廠・陸軍兵器廠の生産設備投資が行われる事になった。それから10日が経過し、陸軍の新型戦車である三四式戦車と一〇〇式機関短銃の大量生産が行われているが、その部隊配備による更新は未だに陸軍全体の2割であった。
だが山本総理兼海相は海軍連合艦隊の輸送船を動員するので、その更新された陸軍部隊をオマーンに送り込みフランスとオランダ勢力に戦わせて見てはどうか、と提案したのである。驚く東條陸相であったが、山本総理兼海相は新型戦車の実戦投入による評価も兼ねたほうが良いと言った。それを聞き、東條陸相は納得し山本総理兼海相の提案を受け入れる事にしたのであった。