米仏蘭三カ国首脳会談
1942年3月14日。フランスの海外領土であるグアドループではフランス大統領とオランダ首相、そしてアメリカ合衆国ルーズベルト大統領が首脳会談を行っていた。現在のフランスとオランダは絶好調の極みであった。ヨーロッパ大陸はイタリア以外は既に占領下にあり、中東地域からも大英帝国を叩き出しほぼ制圧する事に成功していたのである。それに対してアメリカ合衆国は1月に行われた中部太平洋海戦(大日本帝國はトラック島沖海戦と呼称)での敗北で活動は目に見えて停滞していた。だがフランスとオランダの大英帝国本土侵攻を受けて、アメリカ合衆国はカリブ海の大英帝国領西インド諸島へと侵攻を行い占領した。そのアメリカ合衆国のカリブ海占領があったからこそ、フランス・オランダ・アメリカ合衆国の首脳会談がフランスの海外領土である、グアドループで行えたのである。大英帝国の誇る王立海軍本国艦隊はスカパフローを包囲するフランス海軍潜水艦部隊の対処に手一杯であり、地中海艦隊はイタリア海軍と共にフランス海軍・オランダ海軍の地中海艦隊と死闘を繰り広げていた。その為にフランス大統領とオランダ首相は大西洋を横断してグアドループに到着していた。
フランスの海外領土での開催である為に、フランス大統領がホストとなったがルーズベルト大統領としては、内心腹立たしく思っていた。フランスとオランダがここまで大規模に活躍出来ているのは、ひとえにアメリカ合衆国からのレンドリースあってのものであったからだ。
フランスは陸軍戦車としてドイツ人技術者をスカウトして開発したIV号戦車を投入していたが、フランス陸軍全体としての数の主力はアメリカ合衆国からのレンドリースであるM2戦車であり、陸軍航空隊としてもドイツ人技術者をスカウトして開発したBf-109を投入していたが、陸軍航空隊全体としての数の主力はアメリカ合衆国からのレンドリースであるP-40であった。しかもレンドリースのみならず経済的支援も行っており、ルーズベルト大統領にしてみれば人の財布で戦争をしておきながら偉そうにするな、という気持ちであった。一方のフランス大統領とオランダ首相は、アメリカ合衆国は所詮は金持ちの堕落国家だと考えていた。大日本帝国海軍を一瞬で蹴散らすと豪語していたにも関わらず、中部太平洋海戦で手痛い敗北を逸し、太平洋方面は完全に活動を停止してしまった。
フランス大統領はルーズベルト大統領に単刀直入に、大日本帝国への対抗策はあるのか尋ねた。ルーズベルト大統領はその棘のある言葉にムッとしたが、何とか気持ちを抑えながらルーズベルト大統領はフランスとオランダが逆立ちしても真似できそうに無い、軍拡について説明を始めた。ルーズベルト大統領はまず最初に海軍の『両洋艦隊法』について語った。海軍作戦部長クイーン大将が中部太平洋海戦での敗北後に立案した『クイーンプラン』を叩き台にした大拡張計画である。巡洋戦艦エセックス級を空母に改造し、正規空母エセックス級として図面を書き直し23隻の建造を決定した。更には建造途中の軽巡洋艦クリーブランド級の船体を流用し改造した軽空母インディペンデンス級を11隻建造。護衛空母としてボーグ級を45隻、カサブランカ級を50隻、コメンスメントベイ級を35隻、それぞれ建造する事になった。戦艦は建造しないが空母の護衛艦は必要であるとして、大型巡洋艦アラスカ級が6隻、重巡洋艦ボルチモア級が24隻建造。軽巡洋艦もクリーブランド級が護衛空母インディペンデンス級に改造する分を除いた43隻、アトランタ級が11隻建造。駆逐艦に至ってはおびただしい数の建造が決定しフレッチャー級が188隻、アレンMサムナー級が70隻、ギアリング級が152隻、それぞれ建造される事になった。潜水艦はガトー級を330隻建造される事になり、総建造数は988隻にも及ぶことになった。艦載機も新型を開発する事になり15000機以上の生産を予定し、補助艦艇の改装、巡視船・護衛船・その他船舶の建造、設備投資、兵器・弾薬製造設備の増築、 各種施設拡張工事、等々おびただしい軍拡となっていた。中部太平洋海戦で敗北した太平洋艦隊は対空兵器増設の改修工事を行っており、アメリカ合衆国全土の造船所は24時間体制で稼働中だと言い切った。
それを聞いたフランス大統領とオランダ首相は驚愕の表情を浮かべた。イタリア王国を除くヨーロッパ大陸を制圧したとはいえ、到底真似できる規模の建造計画ではなかった。陸軍の戦車についても説明が行われ、昨年に正式採用し量産を行っていたM3戦車は今年末には生産を終了し、先月から生産の始まったM4戦車を陸軍の主力戦車にすると語った。その為に現状レンドリースとしてフランス・オランダ両国にM3戦車は200輛ずつしか送れていなかったが、M3戦車はアメリカ合衆国陸軍の師団に配備されている物を含めて全て即時に送り込む事を宣言した。生産終了までの生産ロットは全て送り込む事となり、M4戦車も大量生産を行う事によりアメリカ合衆国陸軍の師団に配備すると同時に、フランス・オランダ両国へのレンドリースを行うと語った。
陸軍航空隊も新型機開発が多数同時進行されていると、ルーズベルト大統領は説明した。大日本帝国の航空機に対抗出来る機体を開発中で、エンジンは海軍の艦載機と共有する事で効率化を高めると語った。それらの機体も実用化され大量生産が開始されたらレンドリースを行う用意があると、ルーズベルト大統領は飄々と語ったのである。言外にフランスとオランダには真似が出来ないであろう、と匂わせての発言であった。そしてルーズベルト大統領はフランス大統領とオランダ首相に、そちらの自国開発中の兵器はどうなのか尋ねた。
フランス大統領は何とかルーズベルト大統領を見返してやろうと、気を取り直して説明を開始したのであった。
ルーズベルト大統領が説明した両洋艦隊法は、史実通りの建造艦艇です。
両洋艦隊法以後に建造した艦艇も、今作は両洋艦隊法に含めました。
俗に言う『週刊空母』と呼ばれる建造スピードに達した物量作戦ですね。