中東派遣軍
1942年2月23日午前9時
インド洋セイロン島コロンボ
連合艦隊機動艦隊は補給の為、セイロン島に寄航した。中東は何せ遠い。中東派遣軍は一路中東目指して航行していたが、何せ無茶をして士気を低下させてはならない。そこで大本営は大英帝国に要請し、万全の補給体制を整えた。
第1機動艦隊旗艦超弩級空母大和艦橋
「報告致します。補給はあと5時間で終わるとの事です。」
「了解、ありがとうね。」
第1機動艦隊司令長官中野真知子中将は満面の笑みを浮かべながら、伝令に礼を言った。言われた方の伝令は頬を染めると敬礼をして艦橋を出ていった。新しく配属されたばかりの2等兵であり、中将であり女性である中野長官にお礼を言われた事に照れたのであろう。それを見た参謀長の松田直人少将は笑いを堪えていた。それを見て艦長の飯島奈美大佐が口を開いた。
「長官、手を出しては駄目ですよ?」
「結構可愛いじゃない。私は年下好きだから良いわよ?」
「そう言う問題ではありません。艦隊司令長官ともあろう方が、2等兵と肉体関係を持ったとあっては派遣軍の士気に関わります。」
「愛に階級は関係無いわよ?」
「だからそう言う問題ではありません!!長官は第1機動艦隊司令長官だけでは無く、中東派遣艦隊司令長官であり、中東派遣総軍司令長官であります。少しは自覚して下さい!!」
飯島艦長は大声で叫んだ。飯島艦長の言うように中野長官は中東派遣艦隊司令長官と中東派遣総軍司令長官に就任した。中東派遣艦隊は中東に派遣された第1~第4機動艦隊を纏めて編成され、中東派遣総軍はその海軍と陸軍・両軍航空隊全てを纏めて編成された。この派遣にも関わらず相変わらずアメリ合衆国カ軍は太平洋で更なる行動を起こしていない。否、アメリカ合衆国軍は戦略の大転換により、行動を起こしたくても起こせなかったのである。
2月10日のフランスによる大英帝国上陸作戦は大日本帝國を震撼させた。この事態に新たなる戦線を構築し、大英帝国侵攻を瓦解させる事を大日本帝國政府は考えた。そして中東への大規模な派遣を行ったのである。現在アメリカ合衆国は海軍の再編成を行っていた。太平洋艦隊は大日本帝國海軍連合艦隊に大敗し、大西洋艦隊は動かすに動かせない状態であった。太平洋艦隊の大敗はアメリカ合衆国に大きな衝撃を与え、海軍戦略の大転換を行う必要性が生じた。これにより大西洋艦隊をわざわざ太平洋に回航しても連合艦隊に現状では敗北する、更に下手に大西洋艦隊を回航すると大英帝国海軍は未だに強力であり奇襲上陸を果たしたフランス軍が孤立する恐れがあった。大英帝国海軍を残した状態で上陸作戦を強行したフランス軍の失態ではあるが、大英帝国を自国本土に釘付けにして中東方面を弱体化させる狙いが有る為、戦略的には非常に有意義であった。
「それは良いとして、中東の状態は?」
「中東情勢は圧倒的に劣勢です。仏蘭軍に大英帝国軍は敗退を続けています。特にフランス軍はドイツを占領した事によりドイツの技術力を丸々接収しました。その技術は早速戦車に利用され、大英帝国上陸部隊に配備されているもようです。」
中野司令長官の質問に松田参謀長が答えた。その陸軍戦力が今回の中東派遣に於ける唯一にして最大の問題であった。海軍戦力と航空戦力は現状では圧倒的に大日本帝國が優位であったが、陸軍戦力は劣勢の極みである。特に戦車が仏蘭に通用するのかが、問題となった。連合艦隊機動艦隊空母は最新鋭の陣風戦闘機・彗星爆撃機・天山攻撃機を搭載しており、更に陸軍海軍の陸上航空隊も進出する為航空優勢は確実視された。その中で陸軍は主力が九五式戦車であり、38ミリ砲と最大装甲厚30ミリの戦車で勝てるのかが問題であった。
「まあとにかく、中東に向かうしかないわ。陸軍はしっかりと航空支援を行う事が重要よ。」
中野司令長官はそう呟いた。