作戦会議
お久し振りです。
1942年1月27日午前9時
大日本帝國帝都東京海軍省4階軍令部会議室
軍令部は海軍省と同居している。その為海軍省の建物は大きくなったが、軍政と軍令が同一ヶ所にあるのは何かと便利で、陸軍省と参謀本部も3年前に同居を決定した。更に帝國政府は『帝國国防方針』の改定を検討しており、それにより海軍省・陸軍省の統合すなわち『国防省』の創設を目指している。
「それでは本題に入る。」
軍令部総長永野修身大将の言葉に、出席者は姿勢を正した。
出席者は連合艦隊司令長官小澤治三郎大将であり、お互いに部下を数名従えているだけである。今回は作戦会議と言うより先の作戦の洗い出しと、次の作戦への検討が目的である。
「まずは先の海戦の勝利、見事だった。」
「ありがとうございます。」
永野軍令部総長の言葉に小澤司令長官は頭を下げた。
「今回の作戦に於いては空母の有効性が証明された。これがまさに今回の作戦勝利の大きな要因であるな。」
「……そうですな。」
小澤司令長官は永野軍令部総長の言葉に苦笑いしながら答えた。
永野軍令部総長は小澤司令長官や山本総理と違い、空母戦力の有効性を懐疑的に捕らえていた。それがこの海戦に勝利したとなると掌を返したように空母戦力の有効性を認める事を言い始めた。小澤司令長官はその事に少し機嫌を悪くしていた。
「特にアメリカ合衆国の艦載機は我が国の物に比べて性能が低かったと報告があったが?」
「はい、アメリカ合衆国の艦載機は我が国より二世代は遅れていると断言出来ます。その事が今回の勝利の一因でもあります。」
「となると、次期艦載機の実用化を急がなければならんな。」
「そうなります。実用化は間もなくだと。」
「少しぐらいなら前倒しも出来るだろう。そうなれば更にアメリカ合衆国よりも優位に立てるだろう。」
「はい。」
永野軍令部総長が言った次期艦載機は現在最終調整に入っている、陣風艦上戦闘機・彗星艦上爆撃機・天山艦上攻撃機である。更に次々期艦上戦闘機A7M(烈風)が開発中である。A7Mは世界初のジェット機として開発が進められており、完成すれば連合艦隊機動艦隊は世界最強の座を守り続ける事になる。
「これからの戦略はどうする?今回の勝利により西太平洋の制海権は確固たるものとなった。東南亜細亜から米蘭は駆逐され、戦略的に我が国は優位に立てた。次の一手は?」
「今回の戦闘では敢えてクェゼリンを敵に占領させて誘い出しました。これによりクェゼリン・ウェーキ・ミッドウェーのラインが出来ました。トラックは問題無しと思われますが、大英帝国のタラワが占領される危機があります。幾ら敵に打撃を与えたからといっても敵は大工業国家です。その国力を全力で使えば連合艦隊以上の空母を揃えるのは簡単です。更に潜水艦を利用し輸送路の遮断を狙ってくるかもしれません。そうなれば海上保安庁にも大きな負担になるかもしれません。あらゆる事態を想定し、動けるようにしないといけません。」
「なるほど。」
「今後の戦闘は現状の戦力差は歴然としており、連合艦隊の3分の1思い切って半分を地中海に派遣するのも良いかと思います。」
「地中海。」
「地中海に派遣する事により大英帝国とイタリアの支援が出来ます。陸軍も派遣すれば更に支援の幅が広がると思います。」
「確かにそれは良い考えだな。」
「はい。」
永野軍令部総長の言葉に小澤司令長官は大きく頷いた。
「そう言った手筈で今後の作戦を決めていく。今回は以上だ、解散。」
永野軍令部総長の言葉に小澤司令長官以下出席者は、敬礼をすると会議室を後にした。