砲撃戦開始
いやはや、長い間再びお待たせしまして申し訳ありません。
午前10時35分
トラック島北東785キロ地点
遂に日米両艦隊が砲撃戦を開始した。砲撃は矢張り、アメリカ合衆国海軍のユナイテッドステーツから始まった。
大日本帝國海軍連合艦隊砲撃部隊旗艦重巡洋艦翔鶴艦橋
『敵弾、本艦前方に着弾!!水柱の大きさから予測通り、敵戦艦は46センチ砲を搭載している模様!!されど、命中率は極端に低下しているものと思われます!!』
艦橋トップの見張り員の報告が、艦内スピーカーを通して艦橋に響き渡った。それを聞いた艦長の野田美咲中佐は、一言呟いた。
「……大艦巨砲主義の終焉。」
「確かに今回の海戦は大艦巨砲主義の終焉を連想させる戦いでした。空母艦載機による攻撃は、一方的で戦艦を撃沈する事に成功しました。艦長の言われる通りです。」
砲術長の倉持愛佳少佐が通訳の如く、野田艦長の一言を説明した。この2人幼なじみである。小さい頃から野田艦長は一言しか喋らなかった為、倉持砲術長が説明していた。それは海軍兵学校・海軍大学校でも続き、卒業後の配置先は必ず2人1組で行われるようになった。倉持砲術長は野田艦長に思いを寄せており、何時かそれを伝えようと考えている。
「……全艦全速前進。」
「航海長、機関全速。最大速力で突撃します。通信長、空母部隊の大和に連絡。『砲撃部隊は全速で突撃を開始し、敵部隊を無力化せんとす。』以上を連絡して下さい。」
「「了解。」」
航海長と通信長は倉持砲術長からの『命令』を受けると、行動を開始した。この光景は他艦では絶対に見れない光景だ。何せ同格の砲術長が航海長と通信長に命令するのである。最初の内は反発もあったが、今では当然の事と受け取られている。何せ野田艦長は双眼鏡を手に仁王立ちして、海原を睨み付けていた。倉持砲術長は命令を下し終えると、艦内電話の受話器を手に取った。
「主砲塔と魚雷発射管、攻撃準備は出来てる?」
「攻撃準備完了!!」
全箇所から一斉に声が聞こえた為、倉持砲術長は顔をしかめた。
「攻撃命令を下すまで、各部所は待機。」
「了解!!」
倉持砲術長は慌てて受話器を置いた。
「声が大きい。」
そう呟くと、野田艦長の隣に立った。
「……面舵、雷撃。」
「!?航海長、面舵!!通信長、全艦に面舵命令!!」
「「了解!!」」
倉持砲術長は突然の命令に、慌てて命令を下した。その命令を下すと共に、自らも受話器に飛び付いた。
「面舵と共に、魚雷発射!!」
砲撃部隊は慌ただしく攻撃を開始しようとしていた。
アメリカ合衆国海軍太平洋艦隊残存艦部隊旗艦超弩級戦艦ユナイテッドステーツ艦橋
「命中しませんね。」
「さっぱりね。」
ユリア司令官とエリス艦長は呆れたように呟いた。
「4万3000メートルの最大射程での砲撃は無理だったかしら?」
「各砲塔の個別測距義しか使用出来ない状況ですからね。これ以上の精密射撃は無理でしょう。」
「そうね。射撃間隔も疎らだからね。」
ユリア司令官はそう言うと、司令官席に腰を下ろした。
「!?敵部隊転舵しました!!」
「転舵!?」
エリス艦長が見張り員の声に反応した。艦橋の上部は完全に瓦礫の山となっている為、見張り員は艦橋に詰めていた。
「何を考えているのでしょうか?」
「雷撃よ。」
砲術長の独り言に、ユリア司令官が断言した。それにエリス艦長が尋ねた。
「この距離で雷撃ですか?」
「えぇ、そうよ。IJNは戦艦の保有を自ら放棄したわ。戦艦と言う艦種の特徴は?」
「巨大な砲塔ですか?」
「そう。戦艦は敵よりも巨大な砲塔を装備するのが大事なの。その頂点が私達の乗っているユナイテッドステーツ級ね。」
戦闘中にも関わらず、艦橋はちょっとした授業が開かれた。主砲はこの間も攻撃を行われている。
「しかしIJNは空母しか保有していません。それなのに魚雷ですか?」
「そう。かつて我が国も超射程の魚雷を開発中だったわね。」
「………酸素魚雷ですか?」
「そう。最終的には複雑な方法が必要で、砲より時間が掛かるから開発は中止になったわ。」
「!?それをIJNは開発した。」
「そう言う事。このユナイテッドステーツ級に負けない程の射程を有した魚雷がね。」
ユリア司令官の言葉に、エリス艦長は見張り員に命令を下した。
「総員、目を凝らして酸素魚雷を発見するのよ!!」
日米英の砲撃戦は第2段階へと進んだ。