全速前進!!
午前8時55分
トラック島北東800キロ海域
アメリカ合衆国海軍太平洋艦隊旗艦超弩級戦艦ユナイテッドステーツは現在、負傷艦を従えて停泊していた。
ユナイテッドステーツ艦橋
「敵偵察機、接近します!!」
見張り員からの報告が、艦橋に飛び込んだ。
「遂に来たわね。」
エリス艦長が呟いた。
「艦長、進撃出来る?」
「最大で11ノットしか出ません。」
「それで良いわ。IJNはレーダー装備が充実してるからね。さすがに停止しては標的艦よ。」
「それでは。」
「艦長!!最大速力、前進!!」
ユリア司令官の命令で第1打撃部隊は進撃を始めた。
大日本帝國海軍連合艦隊第1機動艦隊旗艦超弩級空母大和艦橋
『九八艦偵(九八式艦上偵察機)より入電です。[115キロ先、敵艦隊進撃中。なお全艦小・中破の艦艇のみです。]以上です。』
通信室からの連絡が艦橋に響き渡った。
「艦長、どう思う?」
第1機動艦長司令長官中野真知子中将が飯島奈美大佐に尋ねた。
「敵は残存艦部隊を逃がす為に、自らで私達の足止めを狙っているようです。ここはその敵の考えを逆手に取り、航空部隊を残存艦部隊に差し向ければ宜しいかと。」
「………」
中野長官は腕を組むと、考え込んだ。
「航空部隊は進撃中の負傷艦部隊に差し向けるわ。手負いの部隊が自ら向かってくるんだから、攻撃して沈めれば良いわ。何隻が拿捕出来れば更に良いんだけどね。」
「確かにそうですね。」
「結果が出ました。」
2人が話していると、参謀長の松田直人少将が艦橋に入って来た。
「凄い戦果ですよ!!」
「早く言って頂戴。」
「了解!!」
松田参謀長は深呼吸すると戦果報告を始めた。
「戦艦・モンタナ級2隻、アイオワ級2隻、ノースカロライナ級1隻。重巡・3隻。軽巡・9隻。駆逐艦・34隻。面白い事に、浮上していた潜水艦1隻も含めて、52隻撃沈しました。」
「おぉ〜〜!!」
艦橋は拍手に包まれた。遂に航空部隊だけで、海の女王戦艦を撃沈したのだ。
「あまりにも数が多過ぎて、撤退中の部隊は全て被害無しです。進撃中の部隊は手負いの艦艇ですが。」
「それは分かってるわ。」
中野長官は飯島艦長に顔を向けた。
「艦長、第二次攻撃部隊出撃。ただし出撃するのは艦爆隊のみ。」
「艦爆隊のみですか?」
「えぇ。艦爆隊で打撃を与えて、砲撃戦で止めを刺すのよ。」
「本気ですか!?」
飯島艦長が驚きの声をあげた。他の艦橋要員も同じ心境だろう。
「本気よ。それに航空攻撃だけで終わったら、あの子達と彼等の出番が無いじゃない。」
中野長官はそう言うと、海原を見つめた。
「重巡洋艦翔鶴級とロイヤルネイビーのね。艦長、早く出撃命令を出しなさい!!通信長、艦隊全艦及び東洋艦隊に命令!![最大速力で敵艦隊に進撃せよ]。以上!!」
「「了解!!」」
大英帝国海軍東洋艦隊旗艦戦艦プリンスオブウェールズ艦橋
「長官、中野提督から命令です。」
リーチ艦長が受話器を置きながら言った。
「何だね?」
「『前進で敵艦隊に進撃せよ。止めは貴艦隊の艦砲で行う。』以上です。」
「中野提督は我々にも、花を持たせてくれるのだな。流石は日本人。『思いやり』の精神だな。」
フィリップス長官はそう言うと、紅茶を飲んだ。
「報告によると、進撃中の敵艦隊はユナイテッドステーツを含むと言っております。」
「ユナイテッドステーツ!?」
リーチ艦長の言葉に、フィリップス長官は紅茶を吹き出しそうになった。
「ユナイテッドステーツは46センチ砲搭載艦だろう。大丈夫なのか!?」
「大丈夫です。2基破壊されており、前後1基となっています。」
「それなら大丈夫だな。」
フィリップス長官は溜め息を吐いた。
「それにあの重巡洋艦も強そうですし。」
「確かにそうだな。」
「砲撃戦が楽しみです。」
リーチ艦長は嬉しそうに笑った。
日英艦隊は全速力で進撃を始めた。
太平洋で一大砲撃戦が始まろうとしていた。
結局、延びました。
次回こそ第二次攻撃と砲撃戦です。