雷撃
九七式艦上攻撃機の攻撃が始まった。
「片平!!行くぞ!!」
「了解!!」
後部座席からの声が、無線を通じて聞こえた。清水純中佐は既に配下部隊に攻撃命令を下しており、全機が雷撃態勢に入っている。清水中佐機は攻撃部隊の一番槍を努めるべく、海面スレスレを飛行していた。
「まだだぞ、まだ……」
「隊長!!」
「……撃ぇ〜!!」
清水中佐の命令を受け、片平主水少佐は魚雷発射スイッチを押した。それにより魚雷は機体を離れ、敵艦に向かって疾走を始めた。
超弩級戦艦ユナイテッドステーツ艦橋
「取り舵いっぱ〜い!!」
エリス艦長が声を絞り上げた。
満載排水量83000トン・全長290メートルの巨艦が、ゆっくりと回る。
「2本回避!!」
「残り。」
ユリア司令官が尋ねた。
「4本です。回避は苦しそうです。」
エリス艦長が額に汗を浮かべながら答えた。意外に自信有りげなのは、ユナイテッドステーツこそが世界最大で最強だと信じているからだ。確かにユナイテッドステーツは魚雷の4本ぐらいで、即沈没と言う事態には陥らないはずだ。
「来るわよ!!何かに掴まって!!」
エリス艦長が叫んだ。ユリア司令官も窓際のパイプを握り締めた。
ドグワァァァァァン!!
83000トンの排水量を誇るユナイテッドステーツだが、右舷に4本の水柱が立ち上った。
ガタンッ!!
新入りの参謀が、振動でバランスを崩して倒れた。そこに第2撃がユナイテッドステーツに訪れた。
ドガァァァァァァン!!
更なる衝撃がユナイテッドステーツを襲い掛かった。
「艦長、被害は?」
揺れが弱まるのを確認して、ユリア司令官が叫んだ。
「お待ちください。」
「艦長!!左舷から魚雷です!!」
「何本!?」
「3本です!!艦攻の数が多いでしから、まだ増えるかもしれません!!」
「分かったわ!!」
エリス艦長が左舷の海原を睨んだ。
「来ます!!」
「面舵いっぱ〜い!!」
エリス艦長の命令でユナイテッドステーツは、大きく回りはじめた。しかしユナイテッドステーツは、2本の魚雷の餌食となったのである。しかも2本共が、艦尾を直撃した。
「舵は?」
エリス艦長が焦ったように聞いた。
「少し反応が鈍いですが、致命的ではなさそうです!!」
操舵手の答えに、艦橋スタッフ全員が胸を撫で下ろした。舵を失えば全長290メートルのユナイテッドステーツは、ただの標的艦になってしまう。ユリア司令官は航空機の恐ろしさをこれまで以上に痛感した。
(世界最大最強のユナイテッドステーツがちっぽけな航空機に翻弄されてる……。想像はしてたけど、これ程までに一方的とはね。IJN恐るべしね。)
そこへ。
「あっ!?艦長!!舵が利きません!!」
操舵手が絶望的な声を上げた。エリス艦長は呆然と、艦長席に座り込んだ。これでユナイテッドステーツは、直進しか出来なくなった。魚雷が直撃した影響で、舵が吹き飛んだのかもしれない。しかも速力が落ちていっている為、スクリューもやられたかもしれない。とにかくユナイテッドステーツは、数分もしないうちに『海に浮かぶ要塞』となる。ユリア司令官は、1つの決断を下した。
「通信長、マイクを。」
通信長はユリア司令官にマイクを渡した。マイクは艦内訓示用の、特別装備である。
「艦内総員に伝える。本艦は完全に進撃能力を喪失したわ。舵も破壊され、スクリューも破壊された可能性が高い。これにより本艦ユナイテッドステーツは機関を完全停止させ、進撃してくるであろうIJNをアウトレンジ砲撃するわ。これは帰還する事を捨てる、捨て身の戦いとなるわ。もし退艦したい者がいるなら許可するわ。けど出来れば合衆国軍人として、最後まで戦ってほしい。その判断は皆に任せるわ。」
ユリア司令官はそう言うと、マイクを置いた。
艦橋スタッフは覚悟を決めた清々しい表情を見せていた。
「司令官、私はお供致します。」
エリス艦長がユリア司令官に敬礼をしながら答えた。
「自分も司令官にお供致します。」
「自分も。」
「私もです。」
他の艦橋スタッフも次々と進言した。
『第1砲塔お供致します。』
『第2砲塔、どこまでも司令官に付いていきますよ!!』
『機関室もお供致します。』
『医務室、覚悟は出来ています。』
各部署からも、次々と賛同の声が届いた。
「みんな、ありがとう。本当にありがとう。」
ユリア司令官の目には涙が浮かんでいた。
「最後の戦い、頑張りましょう。」
「勿論よ。」
ユリア司令官とエリス艦長は、しっかりと握手を交わした。死を覚悟した人間の顔程、清々しいものはない。ユナイテッドステーツは『海に浮かぶ要塞』として、最後のご奉公に挑むのであった。
次回は……
第二次攻撃と砲撃戦となります。