滞在約3時間、4600円也
窓から刺す光に照らされ目を覚ます。体を起こし、軽く伸びをした。ベッドの横にあるデジタル時計は、17:37を正確に示す。大体3時間位経ってる。休憩にはちょうどいい時間だったかな。
布団に手を置くと、まだ寝ている彼の手に触れた。この様子だと、少なくともあと30分は起きない。この人は私より早く起きて身支度を済ませるか、私が叩き起こすまで寝続けるかのどちらかだから。
今日はあのまま寝てしまったのか。彼も私も下着姿で同じ布団に入っていたので、ようやく寝ぼけた頭を整理することができた。汗も乾いて、ちょっと肌寒い。彼を起こさないよう、できるだけ静かに布団から出て、シャワールームへ向かった。
電気をつけ、石造りの床へ足を踏み入れる。先に浴びたシャワーのせいで、少し冷えてしまっていた。
赤と青のハンドルをひねり、ちょうどいい塩梅の温度に設定する。一度落ち着いたあとのシャワーは、少し熱めのほうが好きだ。汗とか色々なものが、しっかり洗い流せる気がして。
最初の冷水でひやっとしたくないので、床へ向けてお湯を流した。寒かったシャワールームはみるみる湯気で充満し、鏡も真っ白にくもってしまった。
ボディソープは、無香よりもちゃんと香りのある方が好きだ。その日ちゃんとつながった証拠が、自分から香るのが好きだから。周りに撒き散らしてるみたいに言われるかもしれないけれど、私がいつどこで何をしてるかなんて、詮索する人間もいない。
シャワーを止め、洗面台に向かった。なんとなくの保湿を済ませ、髪を乾かそうと襟足の髪を持ち上げる。と、そこには新しいキスマークが残っていた。珍しい、今日は見えやすい位置につけたんだ。
鏡越しの自分を、首から下へなぞってみた。鎖骨は昨日の彼。胸のキスマークと噛み跡はその前の彼。脇腹は……覚えていないけど、ずいぶん長く残ってる。さらに下へ、太ももに2つ。あと確か、背中に2つ。それらは先週、今日の彼が着けたものだ。
キスマークの数だけ、幸せな時間があった気がする。
けど、いわゆる"運命の相手"なんて、きっとこの方法じゃ見つからない。
それでももう。
溺れてしまえば、その沼すらきっと都なのだ。
どの彼も、その時間の私を、誰よりも欲してくれる。
それが心地よくて、息苦しくて、冷たくて、生ぬるい。
それでも私は、一度始まった純粋で薄汚れた遊びを、やめられないでいる。
彼はまだ起き出しそうにない。よっぽど疲れてしまったのか。部屋の料金の半分を、小さなテーブルに置いた。彼が起きるまでの30分の分も加えて。
それじゃあ、次はいつかわからないけれど。きっと話がはずんだその日にでも。
私は、抱かれる男を選ばず、運命を探す女だ。