02 茜と泰時
茜は、自分が家族の中で違うと思っていました。
父と母は、周囲の反対を乗り越えて、生涯お互いだけを愛し抜いた。
沙夜と朝時は幼い頃に両想いになって、今もお互いを思っている。
最初は真玉の一目ぼれから始まった高明への思いも、今はすっかり睦まじい夫婦になっている。
自分は泰時に思いを打ち明けられ、泰時となら幸せになれると思って一緒になった。
泰時となら平穏に暮らしていけると思っていたからでした。
子供の頃から泰時は茜にとっては、優しい兄のような存在でした。
泰時は自分を思ってくれて、普段は優しい。
でも、政務を優先するので、忙しい時は家にいても殆ど顔を見る事がない。茜が実家に行くことは問題ないが、他に出かける事は気にいらない。
泰時に嫁いでから、茜は実家以外には殆ど出かけない生活をしていました。
実家に行っても、沙夜や真玉には子供がいる。
自分は子供を産んでも取り上げられてしまう。
泰時は自分のためと言っているが、茜にとっては邸は籠のようでした。
泰時は、茜と一緒になって自分が茜に執着してしまう事に戸惑っていました。
その一方、茜と子供達のために自分が最善の事をしていると思っていました。
泰時にとって茜は、夏の陽のように明るく輝く存在でした。
真面目なだけが取り柄の自分は、茜にとってはつまらないのではないかと思うと、茜が外に行くことを恐れてしまっていました。
沙夜は内気すぎると朝時が笑っていましたが、泰時は、茜が身内以外とは話せない沙夜のようであれば、自分はもう少し気が楽なのかもしれないと思っていました。
ただ泰時は、大人しい沙夜ではなく、はっきりした茜を愛していたのでした。
泰時は、月の半分を茜の許ですごすように努力し、茜が姉妹達と一緒であれば、出かけても気にしないように心がけていました。
時実は次男なので、茜の許で育てる事にしていました。
茜の苦悩を知った泰時は、やり直して幸せになろうとしていました。