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家族からの罵声と嘲笑

「全く、エリオット様から愛想を尽かされるなんて…」

「やっぱりお前はダメな子ね…」

「お姉さまみたいな可愛げのない女に、王子妃なんか務まるわけないじゃない」


 婚約破棄された私を待っていたのは、両親からの罵声と妹からの嘲笑だった。そこは想定内だからどうでもいいのだけれど、姉の婚約者を奪った恥さらしな妹と、それを擁護する両親の残念さにため息しか出ない……婚約者がいる男性と親密になるなんて、かなり恥ずかしいことなのに……


 あの時は陛下がいらっしゃる前に退出したけど、その後どうなったのかが気がかりだったわ。陛下のご命令で婚約したのにそれを勝手に反故にしたエリオット様を、陛下はともかくあの厳しい王妃様が許すとも思えなかったから。それは新しい婚約についてもで、勝手にそんな事を決めたエリオット様にお咎めなしとは思えなかった。


 それに、本当に婚約は破棄されたのかしら…


「とにかく、陛下からもヘーゼルダイン辺境伯の元へ嫁ぐようにとのご命令だ」

「陛下から?」


 それはちょっと……いえ、かなり意外だった。陛下や王妃様はいつもエリオット様よりも私の味方だったから。それもエリオット様は気に入らなかったみたいだけど、陛下はともかく王妃様まで了承されるとは思わなかったわ。それなりの時間をかけて国王ご夫妻とは信頼関係を築いていたと思っていたから、婚約が破棄されても辺境伯への輿入れはないと思っていたから。だけど、どうやらそれは私の独りよがりだったらしい…


「エリオット様からは、準備が出来次第すぐに出発するようにとのご命令だ」

「……そうですか」

「何と言ってもお前は殿下から愛想を尽かされた我が家の恥さらしだからな。必要な荷物は追々送ってやるから、早々に出立するように」

「……わかりました」


 両親は私をさっさと厄介払いしたいのね、だったら早急にこの家を出た方がよさそうだわ。本当はお友達や仲良くしてくれたみんなに会ってご挨拶をしたかったけど、それが許される状況にはないらしい。お礼や別れの挨拶もしないのはマナーに反するけれど、王家からの命令では仕方ないもの。出立までにお手紙くらいは出せるかしら。





「ふふっ、お姉様みたいに勉強ばっかりしているだけじゃダメなのよ。女は見た目と性格も大事なのよ。私みたいにね」


 部屋に戻って自分の持ち物を確かめていた私のところにわざわざメイベルがやってきた。確かにメイベルは美人で男性には人気がある。赤みのかかった金の髪と零れ落ちそうなほど大きな黄色がかった緑色の瞳は、セネット家特有の銀髪と紫瞳の私とは姉妹と思えないほど色が違う。庇護欲をそそる愛らしい顔立ちで、この見た目のせいで大抵の事は許してもらえるのだけれど……そのせいでこの子は勉強もマナーもさっぱり出来ていない。勉強を嫌がって家庭教師を追い返したり、仮病でサボったりとやりたい放題で、お祖母様が生きていらした頃はよく叱られていたっけ。


「そう、でも王妃様は大変厳しい方よ。王子妃教育、頑張ってね」

「ご心配なく。王子妃に必要なのはみんなから愛される事よ。私のように美少女で可愛くて愛嬌があればそれで十分よ。難しい事は臣下たちの仕事ですもの」

「そう」


 多分、無理なんじゃないかなぁ…いや無理だろうとは思うけれど、言い返すと際限なく絡んでくるから反論するのはやめた。いずれ身をもって知る事になるから。今まで散々私を馬鹿にしてきたこの子に教えてあげる必要はないわよね。慌てふためく様が見れないのは残念だけど。


「わたしたちの結婚式には、是非とも辺境伯様とお姉さまも出てくださいね」

「そうね」

「辺境伯様って昔はお美しかったけど、顔の怪我が原因で大層恐ろしい顔に変わってしまわれたそうよ。お姉さま、お可哀想に…でも、一応王族だし、面目は保てるわね。婚約破棄された令嬢など、どこかの後妻かうんと年の離れた難ありの方しか貰い手がありませんもの」

「そうね」

「エリオット様もお優しいわね。お姉様にちゃんと縁談をご用意してくれて」

「そうね」

「ふふっ。お姉様ったら、悔しくて「そうね」しか言えないのね。でも安心して。エリオット様は私が幸せにするから。ああ、お母様に新しいドレスをお願いしなきゃ!」


 勝ち誇った笑みを浮かべたメイベルはそう言うと、さっさと去っていった。言いたい事が言えて満足したのだろう。あの妹は自分が一番で優越感に浸るのが生きがいみたいなものだから。そんな事をして、痛い目にあわなきゃいいけど……とは思うけれど、もう知った事ではないわ。





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