肖像画
二度目の起床はどうやら危険が伴わないようだった。
私はいつのまにかお姫様ベッドで寝かされていて、
「くー、くー」
傍らにはイスに腰掛けたまま寝ているララと、そばのテーブルには食事が乗っていた。
どうやら、
……あまり認めたくないが、
ララは悪い奴ではないらしい。
そばにあったお盆を引きよせ、ご飯を食べる。
冷めていたが、なかなかにおいしいスープだ。
そのまま食事をとっていると、
「くーっくーっ……ん?はっ!」
ララが目を覚ました。
「不覚だわっ!寝てしまったっ!」
「どうしたんだよそんな慌てて」
食べものを頬張りながら言うと、
「あんたまた私に変なことしてないでしょうね!」
胸のあたりを抑えながら詰問するララ。
「してねーよ。私も今起きたばかりだ」
ちょっとホッとしたようだ。
「冷めてるけどまあまあおいしいでしょう?」
「うん。こんな美味しいの久しぶりだ」
私は素直に答えた。
なぜかララが少し前よりも親しい間柄になっているような気がした。
「まあ、ゆっくり食べなさいよ」
そう言ってララは後ろを向いた。
ララの視線の先には一つの肖像画があった。
馬に乗っている美しい男。
「それ誰だい?」
くるんと驚いたように振り返っるララ。
「見てたの?」
「そら、気になるさ。じっときみが見つめているんだもの」
ララは少し間を置いて言った。「これは、……ううん、なんでもないの。」
なにか隠しているなと勘づいたが黙った。
私には肖像画の男がどこか寂しげに見えたのだった。