ララの悲劇
銀髪メイドのララがぐずぐずしているのをまったく無視して、アクバルは男に語りかけた。
「きみ」
「何でしょうか」
にっこり笑うアクバル。
「どこの国からきたのだ」
男は答える。
「ジャパンです」
「ほおっ」
いささか驚いたような顔をしたアクバル。
「あの黄金の国か」 「まあ」
アクバルは凄く興奮したように質問する。
「で、あの話は本当なのか」
「残念ですが、
金はあまりとれません」
「そうか……」
ちょっと残念そうなアクバル。
「しかし」
男が続ける。
「銀ならたくさんあります」
「本当かっ!」
今度は嬉しそうだ。
「……それより国王様、まずは私の縄をほどいてくれませんでしょうか」
と言う男の腕には縄がきつく食い込んでいて、どこか全体が紫色だった。
ちょっと慌てて
「すまんすまん、おいララ、ほどいてやれ」と国王。
「嫌です」
泣き止んだ一瞬で拒否。
「じゃあ選択肢は2つだ。縄を解くか、
インゲンを食べるか」
するとララはしぶしぶといった顔で縄をほどき始めたのだった。ララはやはりまだ強烈に恨んでいるらしく、縄をほどきつつも小声で
「焼いてやる、煮てやるぅ」
といっていたが。
男はなんとか危機を脱したことに安心して余裕があったので、ララの言葉を聞こえないふりをしていていた。
ようやく解き終わると
アクバル王が言った。
「すまんかったな、ジャパンの者よ。
旅人、いや使者のような者だ。丁重にもてなそう」
男は救われる思いだった。
「ありがとうございます」
深々と頭を下げる。
「で今日寝る部屋は、あーと、ララ、どこか空室はあったか」
「ないです。こいつが寝る部屋などありません」
即答。
「そうか……客室も今は使えないし、ん!」
なにかひらめいた様子のアクバル。
「ララよ」
「はい」
「お前、確か部屋に一人だったよな」
「はい、えっ、まさか」
ヤバいといった顔のララ。
「まあ、ほら空きがないし、」ニヤリとして、言った。
「ジャパンの者よ。ララの部屋で寝てよいぞ」