巻物
次の日。
アクバルはルカを自室に呼んでいた。
「こちらでございます」
ルカの知らないメイドだ。
「ありがとう」
昼間のことである。
豪華な昼食が終わった直後であった。
ルカが部屋に通される。
すると
「畳?」
30畳ほどの部屋だった。
珍しく華美な装飾はない。
そして、奥の、
……ミカン箱で勉強していたのが、アクバルだった。
いや、勉強というのだろうか。
読んでいたのは
「排便の世界史」。
「随分な本を読んでますね」
「あははダミーさ、これは」
そう言って表紙のカバーをずらす。
すると、
「東方見聞録……」
有名なマルコ・ポーロの口述作品だった。
「オヤジの遺品さ」
アクバルが言った。
「ジャパンが好きだったからな」
どこかで同じようなことを聞いた気がするが……。
「で、キミを呼んだのは他でもない」
そう言ってひとつの巻物を手にとって、
「これだっ」
一気に広げた。
「なっ……これ」
春画だった。
「間違った!」
あわててくるくる巻き戻すアクバル。
「こっちだ」
別の巻物を
ばっと広げる。
そして、そこには、
「……戦」
日本国内の戦乱を描いたものだった。
「見覚えがあります」
誰かに見せてもらった覚えがある。
幼い頃のことだ。
「そうだと思ったさ」
だって、この巻物にキミが触った匂いがしたからね、とアクバルが続けた。
「におい!?」「はは、気にしないでくれ。ちょっとした能力、いや、勘さ……」
そうしてアクバルは巻物をしまった。
「それでな」
とアクバル。
「別に今のは本題じゃないんだ」
「え!?」
十分本題だと思っていた、というかさっき本題といっていなかったか、ルカは思う。
「まあ君とはさっきの絵の通り、縁があるらしいとわかったわけで」
続けて言う。
「そんな君にプレゼントだよ」
パチンと指を鳴らすアクバル。
すると、ルカの後ろの畳がガタガタと音を立て、
「開いたっ!?」
階段が現れた。
「今回はすぐだから安心しなよ」
アクバルが笑う。
「じゃあレッツゴー!!」