テルミドールの街
古くから、テルミドールはガザン国の中心都市だった。
カザノフ王宮を中心とし、灌漑による水田が一面に広がり、街の周囲には巨大な壁が張り巡らされた。豊かな自然に恵まれ、ぶどうやオレンジなどの名産として知られており、商業も盛ん。
人々は貴族、平民、メイドの三階級にわけられ貴族の各家庭には平均して50人のメイドが配置された。
中でも優美な建築で知られるカザノフ宮殿の主、アクバルは500人のメイドを抱えていた。メイドは家事や農業に使われるばかりでなく、戦争にも駆り出されたり、敵へスパイとして送り込まれたりする。
さらには一部の富裕層がメイド党を発足させ、国の政治にも積極的に関わっていた。
だからこのテルミドールの街ではメイド教育が盛んで、高度な教育を受けたメイドが少なくなかったのである。
市街は元気なメイドが買い物をしたり、闊歩したりしている姿が日常的に見られ活気が溢れていた。
外から来た者はその異様さに目を疑うこともしばしばだったという。しかし、ある日突然、何者かによって町中の男が連れ去られるという事件が起こる。
ある満月の夜のこと。町中は大パニックになり、メイドたちは
隣国のザザン朝グルジアをはじめ周囲の国々へ探索にいくも、どこにも見つからない。
そこで町唯一の男アクバル王は緊急事態宣言を出し、メイドたちに今後の事態に警戒するよう呼びかけた。
アクバルはこれから何か、例えば戦争や侵略が始まると予想たのだ。
その矢先のことである。
巨大な壁をもろともせず、強靭な脚力で一人の男が侵入してきたのは。




