牢獄
気づくと牢獄にいた。
これは間違いなく牢獄である。所謂独房である。
私の目の前にも牢屋がいくつかあって、
なぜかメイドが収容されていた。
一人は長身でヤンキー姉さんみたいな人。もう一人はメガネをかけた大人しそうな女の子。あと一人は
一人だけメイド服が黒いが、というかゴスロリだが、かわいらしい少女だった。
もっと他にも囚人がいるのかもしれないが、見えるのはこれくらいである。
「新人さん、ご機嫌よう」
と言ったのはゴスロリである。
顔を傾けて愛らしい挨拶。
「……どうも」
正直ララよりかわいい。
「おい新米」
といったのはヤンキー。
「あ、はい」
ちょっと怯える私。
「よろしくな」
しかし割といい奴だった。
「よろしく」
そして、
「……」
寡黙なのはメガネっ娘。
さっきからうつむいている。
ヤンキーが話かけてきた。
「おい、お前」
お前とは私のことらしい。
「はい、何でしょう」
「お前自分がいつのまにここにきたのか知らないだろ」
確かにそうだった。
「あ、はい」
「お前な……ララのクソ野郎に引きずられてここにきたぞ。あいつ牢屋担当でもないのに何でだ?」
私は今すべてがわかった気がした。
ララはまた独断で牢屋に放り込んだのだ、まったく。
まあ、それなりのことはしたけど。
「ララ、顔が真っ赤でしたわ」
とゴスロリ。
「ああ、そうだったな」
とヤンキー。
「なにかなさったの?」
ゴスロリが私を見ている。
「まあ、ちょっと」
「ちょっと何だよ、殺人か、メイドにレイプでもしたかっ」
ヤンキーは楽しそうだ。
「……ちょっとララの胸を揉んでしまって」
「ぶはっ」
「うふふっ」
「……くすっ」
三人が一斉に笑った。はじめてメガネが反応したぞ。
「お前ばっかだなあ、あははは、あいつそういうの超怒るぜ」
「いつか、アクバル様の大事な所を蹴り飛ばしたことがありました」恐ろしいメイドだ。ご主人までその勢いとは。
「まあ、あいつは純粋なメイドじゃ……」
とヤンキーがいいかけた時、扉が金切り声をあげて開いた。
コツコツコツコツ
と誰かが近づいてくる音。
そして、ピタリと私の前で止まった。
「うぃーす」
と軽い声をあげたのは半袖短パンの
アクバルだった。
「やあやあ面白いとこにいるね」
すごく嬉しそうだ。
「どうやら僕ちんの作戦は大成功らしい」
こいつはじめからこれを……。
「ああ、違う違う。別に君を牢屋に入れるつもりはなかった。そうじゃなくて、その……揉んだらしいなっあははは」
大笑いするアクバル。
こいつ最初からそれを狙ったらしい。
「ララが顔を真っ赤にして怒ってたぜ。それに君、キスもしたらしいじゃないか。やるなあっ、あははは」
アクバルは本当に王なのだろうか。心配な奴だ。
「……国王。それよりまずはココから出して欲しいのですが」
「ああゴメンゴメン。ほらよっと」
ようやく開けてもらった。良かった。
私はなんだかこの庶民的なアクバルにも親しみを覚えたのだった。