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第一話 異世界転移

「ふぅ、今日から2年生かぁ、凛達と同じクラスだと良いなぁ」


朝稽古の後、私は稽古をしていた木造建築の道場でそう呟く。


私の名前は如月(きさらぎ) 美紗希(みさき)

とある剣術家の娘で、何処にでもいる普通の高校生だ。

しかし、私には普通とは1つだけ違う事がある。

それは私が如月流剣術の継承者であると言うこと。

そう聞くと、一見そんなにおかしな事では無い様に思えるが、問題は受け継いだ剣術に問題があった。

如月流剣術―――それは遥か昔、鬼や(あやかし)と言った人智を超えた存在が実在した頃、それ等の存在を討ち倒す為に作られた剣術、それが如月流剣術なのだ。


現在では人の技術が発達により、それ等の存在が衰退し、今では存在しているかすら怪しいが、それ等を討ち倒して来た剣術は未だに受け継がれて来ていた。

そして現在の如月流剣術当主が私。

美紗希は女の身で有りながら、凄まじい才覚を見せ、3年前に見事如月流剣術の全て受け継ぎ、当時の当主だった父親から、当主の座と代々受け継がれて来た家宝の刀『夜月』を受け継いだ。

これ等の理由で、私は普通とは少し違っていた。

________


「あ、凛!同じクラスだったんだ」


学校に登校し、指定された新しいクラスに入った私は、その教室に数少ない親友である宮代(まやしろ) (りん)を見つけ、そう声を上げる。


「美紗希!私も美紗希が同じで良かったよ。クラスに仲の良い友達が居なかったら、どうしようって考えてたところだったから」

「いやいやいや、凛は人気者だからその心配はないでしょ!寧ろ私の方が心配だからね?」

「そうかな?美紗希も結構顔は広いと思うんだけど···」

「確かにそうだけど、私の場合は放課後は家の家事とか稽古で余り皆と遊んだりしてないから、仲の良い友達は少ないんだよ」

「美紗希も大変だね」

「そうでもないよ?家事も慣れれば区にならないし、稽古は好きでやってる事だしね」


今日は高校の始業式。

私達にとっては、高校2年生のクラス替えにして初日だ。


「おはようっす!」

「おはよう。凛と美紗希も同じクラスなんて、運が良いな」


すると、教室の入り口の方からそんな声が聞こえてきた。


「あ!誠也(せいや)君おはよう」

「おはよう凛、今年もよろしくな」

「う、うん、よろしく···」

「おはよう誠也、今年もよろしくね」

「ああ、美紗希もよろしく」


今声を掛けてきたのは、緒方(おがた) 誠也(せいや)

誠也は文武両道で正義感が強く顔も良い為、この学校で恐らく一番モテてる男子だと思う。

案の定、凛も誠也に落とされた女の子の1人な訳だけど、あいにくと誠也が凄まじく鈍感な為、中々進展していない。


「それにしても2年連続で3人揃うなんて、本当に運が良いな」

「確かにそうだね。うちの学校って結構クラス数が多いから、以外と凄い事かも」

「あれ?俺っちはスルーの方向っすか?結構元気良く挨拶しただけに、スルーされと流石に恥ずいんすけど···」

「ふふ、冗談だよ!(しのぶ)も同じクラスで良かったよ」

「あ、忍君も居たんだ。気付かなくてごめんね」

「···もう何時も事だから良いっすよ」

「まぁ、からかってる私はともかく、凛は誠也にしか眼中に入ってないもんね」

「ちょ!美紗希!それは言わない約束!」

「ん?凛が俺にどうかしたのか?」

「な、なんでもないよ!」


そして先程から『っち』とか『っす』とかが語尾に入ってる、少し変な喋り方の男子が葉山(はやま) (しのぶ)

多少オタクが入っていて、言葉遣いも少し変だけど、以外と話が合って、良く場を盛り上げたりしてくれる。

忍も誠也と同じで、比較的仲が良い友達の1人だ。


「もう、凛もそんなんじゃ超鈍感な誠也は気付いてくれないよ?」

「で、でもやっぱり恥ずかしいし···」

「はぁ、誠也は女子からの人気高いんだよ?そんなんじゃ誰かに取られても知らないよ?」

「そ、それはそうだけど···」

「はぁ···」


親友のヘタレっぷりに私は、ため息をつくしかなかった。


「なぁ忍、凛と美紗希は何をこそこそ話してんだ?」

「まあまあ、女子同士積もる話もあるんすよ。それに口を出すのは野暮ってもんっすよ」

「そんなもんか?」

「そんなもんっす」


とまあ周りから見たら、凛が誠也の事をどう思ってるかなど、一目瞭然なのだが、こんな風に全く進展しない。

凛もこの学校で5本の指に入る程の美少女なので、いい加減付き合って欲しいと思う事が良くあるけど、凛のヘタレっぷりと誠也の鈍感さが見事にかみ合ってしまい、全く進展しない。

まぁ、誠也の方は誰にでも優しいから、凛の事をどう思ってるのか分からないけど····。

_______


それから時間はつつがなく進み、後はホームルームを終えて帰るだけとなったが、先生がなかなかが教室に上がって来ない。


「先生遅いね?」

「うん、なんか会議が長引いてるらしいよ」

「え、そうなの?困ったなぁ、今日の学校は昼までだから、早く帰って、お父さんと弟に昼ご飯を作らないと行けないのに···」


本当にどうしよう。お父さんと連夜を待たせるのは悪いし、早く終わらないかな?

しかし、その願いは叶う事はなかった。


「お、おい!何だこれ!?地面に何か変な模様が浮かんで来たぞ!?」


異変にいち早く気付いた男子がそう声を上げる。

それにつられて私も地面に目を向けると、先程男子が言っていた様に、何かの模様の様な物が地面から浮かび上がっていた。


そして私はそれの異常性に気付いた時には、既に親友の元に向かっていた。


「凛!大丈夫!?」

「み、美紗希、どうなってるの?」

「私にも分かんないよ。でもこれって何かの模様というより陣みたい。何かおかしいよ。とにかく早くこの教室から―――」


しかし、私はその先を言う事を出来なかった。

地面から浮かび上がっている陣から、突然眩い光が溢れ出し、私達は何も出来ずにその光に飲み込まれた。


そしてその光が収まった時、その教室の地面に模様はなく、そこには先程まで騒いでいた生徒達は、誰一人として居なかった。



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