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天使の僕が悪魔に恋をした話  作者: コインチョコ
一章
9/16

8 僕と構ってちゃん





ボードゲーム部を設立してから数日が経った。


時が経つにつれどんどん激しくなってくる宇咲子ちゃんの妖怪忍法構ってちゃんの術攻撃をなんとか回避しつつ、僕は黒崎さんと二人だけの空間を楽しんでいた。

黒崎さんと二人でいると、すごく幸せな気分だ。


最近になって天魔町に夜な夜な黒いローブを来た不審者集団が歩いているとか、そんな噂を聞いたとしてもそんなの僕の興味の範囲外だ。

せいぜい、僕が黒崎さんを家に送るまでの口実になってもらったくらいだ。

あと、僕の真の名前を父さんが未だに教えてくれないことも、今ならどうでもいいと思えるくらい許せる。

それくらい、僕は今、幸せの絶頂期にいた。


「ソラソラ~。最近構ってくれなくて寂しいよ~」

「宇咲子ちゃんには妹ちゃんがいるでしょ!」


教室を出ようとする度に、宇咲子ちゃんの構って攻撃が始まるのが悩みの種ではあったが。

でも、あまり宇咲子ちゃんに構っていると、僕にとっては困ることになる。


天地空は森宮宇咲子と付き合っている。


なんて噂が流れていたことは知っているからね。


その上で、最近は黒崎一乃と付き合いだしたという噂も流れているのだ。誰が流したかは知らないが、黒崎さんと付き合っているのは真実だ。だが、宇咲子ちゃんと付き合っているの事実無根の言いがかりに近い話だ。


熊谷くんと藤虎さんは事情を話せば分かってくれたが、最近は他のクラスメイトを始めとする周囲の学友たちと教師の目が痛くなってきた。

曰く、黒崎さんと宇咲子ちゃんを侍らせているクズ野郎だってさ。

茨木先生や努羅真教頭にも目をつけられているのだ。

あの二人とてつもなく怖い先生なんだ。

茨木先生は鬼の茨木と呼ばれている生活指導の先生だし、努羅真教頭は目を合わせるだけで龍に睨まれるくらいの怖さがある。

修行中に日本神話所属の龍神様とも組み手で戦ったこともあるから、恐ろしさは知ってる。


僕は誠に身勝手ながらも、そうやって勘違いされたままなが嫌だったから、宇咲子ちゃんには悪いけどスキンシップは控えてもらうことにした。

それくらい茨木先生と努羅真教頭は怖い。


まあ、人の噂も七五日って言うし、宇咲子ちゃんには少しだけ辛い我慢を強いることになるが、我慢さえしてもらえれば、その内そんな噂も忘れ去られるだろうね。なかったことにはならないだろうけど。


そんなこんなで、今日も今日はで宇咲子ちゃんの妖怪忍法構ってちゃんの術攻撃を回避して旧校舎の部室へと足を運ぶ。


黒崎さんはここ数日でどうやって手に入れたのか、大理石のテーブルや高級そうな黒革のソファーを持ち込んでいる。

僕も負けじと私物のゲームや漫画(ラブコメもの多数)を並べ、自腹で部室にエアコンや冷蔵庫を取り付けていた。もちろん、顧問の先生に許可を取ってだよ。最近熱いからクーラーとアイスは必需品だよ。

でも、黒崎さんには敵わない。どうやってこんなの飼ってきたんだろう。


「黒崎さん、どこからこんなに物を買う資金を調達したんですか」

「契約相手の人間から貰ったお金や株を売って買ったのよ。これくらい、私にとってはちょっとしたものよ」


こんなのを『ちょっとしたもの』なんて言えるなんて、どんだけ稼いでるのさ。契約相手社長とかなの?大富豪とかなの?ビル・ゲイツなの?


実に自慢気な黒崎さんは、臀部から伸びる尻尾も嬉しそうにピョコピョコしてる。

僕も自慢の白い翼を出して、ソファーに寝転んでリラックスしている。

二人して正体を晒しているけど大丈夫だ、問題ない。

僕が旧校舎全体に認識阻害の魔術結界を張っているので、不意に人間の生徒や教師がこっちに来ても平気なのだ。

彼らの目には、正体を晒している僕たちの姿が普通の人間に見えるようになっている。


ここ数日ですっかり日常になった二人トランプや二人人生ゲームとかをして時間を潰していると、ドアが爆発して乱入者が登場した。

僕らが「何事?!」と飛び起きれば、その乱入者が僕に抱きついてきた。


「うさうさー!宇咲子ちゃん、です☆」

「痛い痛い痛い!」


抱きつく力が強すぎて体がミシミシ言ってるから!僕の骨が悲鳴上げてるから!真の天使としては未覚醒の僕に、兎妖怪の怪力は堪えるから!ハーフ天使(未覚醒)だから普通に物理攻撃効くから!


どうして兎の妖怪なのに、腕力強いんだろうとか、そんなの僕も知らない。とにかく、兎妖怪は昔から強いんだ。父さんの生きた時代はそれほどでもなかったらしいけど、今の時代の兎妖怪は鬼ほどじゃないんだけど、否!鬼より強い者もいるんだ!

だからヘッドロックかけるのをやめてね。首とれちゃうから。


「あらウサギさん、なんのようなの」

「この宇咲子ちゃんを、このボードゲーム部へ是非ともいれて欲しいのです!因みに、入部届けは既に受理されていますよ!」

「僕たちの許可をとる意味」


僕の突っ込みを華麗に無視して宇咲子ちゃんのテンションはさらにヒートアップしていく。お目目ぐるぐる状態で。


「へいへーい!この盛り上げ役担当の宇咲子ちゃんがいるからには、読者の皆様ももう安心ですよ☆このワタクシめが、このなんの変哲もないこのバカップルどもの部活をアゲアゲにしてみせましょー!」


宇咲子ちゃんがドアップ&カメラ目線で言った。


「彼女、どこに向かって喋ってるの?読者ってなんのこと?」

「そっちは壁だよ宇咲子ちゃん」


最近はめっきり僕が構ってやれなかったばっかりに、宇咲子ちゃんの構って成分が足りなかったから理性が崩壊して暴走しているようだ。

ここは幼なじみの僕が、彼女の精神状態を説明するしかない。


「説明しよう!宇咲子ちゃんは構って成分が足りなくなると、こうやって不思議電波ちゃんになるのだ!」

「あなたまでどうしたの空くん。彼女って割りといつも電波じゃないの」

「はっ!電波受信してました」


宇咲子ちゃんの電波が一瞬僕にも移ったみたいだ。一瞬僕の頭も壊れたが、黒崎さんに叩かれて僕は正気に戻った。

僕の頭はあれか?ブラウン管テレビかな?


「ソラソラ~!構ってよ~!」

「え、でも……」


黒崎さんの方をチラッとみる。契約とはいえ、彼女である黒崎さんの目の前であの激しいスキンシップをするの?

てかあれって、スキンシップなの?


「良いわよ空くん。構って上げて」


黒崎さんの許しが出たので、やっぱり宇咲子ちゃんに構って上げることにした。黒崎さん心が広いね。


「ほーら宇咲子ちゃん。ソラソラだよー!」

「ソラソラーー!」


バッと飛び付く宇咲子ちゃん。

子犬見たいな動きで少しかわいい。まあ、僕は黒崎さん一筋だけどね!


「ほれほれ~。ここがええんか~!これがええんか~!」

「うわっ……ぷは、激しすぎるよ!」


僕は座ったまま、宇咲子ちゃんは立った状態で抱きついてくるから僕の顔面に宇咲子ちゃんの胸を押し付けながらのスキンシップになる。息が苦しい上に、これじゃあ宇咲子ちゃんが出ていった後に黒崎さんに殺されるよこれ。

頭をくしゃくしゃに撫でられたり、頬を突っつかれたり、翼をモフモフされたりと、されるがままにされる。


「……」


ほら、おっぱい押し付けてるから黒崎さんの目が冷くなってるじゃん!あれは屋上行った日の時と同じ目だよ!


「ほれほれ!ほれほれ!」


宇咲子ちゃんはそんなこと気にもとめず、僕の翼に頭を埋めて匂い羽毛の柔らかさを堪能しだしてるし!

さすがに弱い部分はやめ……あんっ。

敏感な部分を思いっきり擦るのやめて!


そこで、見かねた黒崎さんが、無言で僕ら二人を押し退ける。

大悪魔の娘である黒崎さんの怪力は、熾天使の息子である僕や兎妖怪の宇咲子ちゃんをはるかに超えている。

多分、僕ら二人が一緒になっても腕相撲は勝てないだろう。


「やっぱり構わないで。空くんは私のだから」


「好き」発言に続き、「私のもの」発言。これはテレるってもんじゃない。黒崎さんと両思いじゃないかとすら思うレベルだ。

両思いになったら契約はどうなるんだっけ?

そんな俗なことを思わずにいられない。


「うっさうさ~☆ソラソラ分補給完了!宇咲子ちゃんは元気になったので、退散しまーす☆」

「それは良かったわね。二度と来ないで」


正気に戻った宇咲子ちゃんは颯爽と出ていき、黒崎さんは角の先まで炎のオーラを纏って怒っている。


「オーケーイ!またくるよ!」

「あなた、日本語通じてる?」

「そんなに怒ってたらソラソラも愛想尽かしちゃうよ?じゃーねー!」


宇咲子ちゃんは去っていった。

突然現れて、用がすんだらさっさと去っていく。まさに嵐のような女の子だな。


「じゃ、ゲームの続きをやりましょうか」

「はい」


黒崎さんの笑顔が怖い。でもそんなドSっぽいとこも素敵だよ。


僕らのゲームは続いていく。







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