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天使の僕が悪魔に恋をした話  作者: コインチョコ
一章
12/16

11 とある天使親子の話



父さんに改めて彼女との交際について聞き出されることになった。やっばり納得してなかったよこの人。


「あの娘とはどこで知り合った?どんな流れで付き合うことになった?」


リビングでテーブルを挟んで父さんの尋問が始まった。

内容はもっと細かかったけど、思い出せないから割愛しとく。


「一月くらい前。深夜の修行に行った次の日からだよ」

「あの日かぁ……」


僕はありのままのことを正直に話した。一年前に黒崎さんに一目惚れしたこと。その時点では正体に気がつかず、その後あの公園で黒崎さんの正体を知ったこと。

そして、命を取らない代わりに黒崎さんが持ちかけた契約で付き合うことになったこと。

初めてのデートで宇咲子ちゃんの妹の宇佐美ちゃんに出会ったこと。

そこで人拐いの鬼と戦ったことと、黒崎さんと協力して倒したこと。

デーモン教団に襲われて後は父さんたちが来てしっちゃかめっちゃかになったこととかも、とにかく全部を話した。


「おいおいおいおい。俺が思ってたよりも少しハードな恋愛じゃないか!初デートで鬼と遭遇するとか運悪すぎだろ!」

「うん、天魔町から遠くの場所を選んだのが返って悪かったのかも」


この天魔町は父さん曰く、過去の大戦で世界の境界線が破壊された結果、境界線の綻びが起きやすくなり、人外が集まりやすくなった土地だとか。

天魔町で熾天使の一人息子として有名らしい僕が悪魔がデートすれば、確実にこの町の人外たちの間で噂になるだろうから遠く離れた町の有名な遊園地に遊びに行ったのだ。

まあ、結果はいろいろ台無しだったけど黒崎さんのかっこいいところと美しいところとかわいいところを見られて満足だ。


「あの娘と別れる気はないんだな?」

「ない」


惚けた顔をしている僕に若干引きぎみの父さんに黒崎さんとは別れる気がないと告げる。てか、契約の関係上、別れる=死なんだけど。


少なくとも、卒業の日までには頑張って黒崎さんの気を惹かないと僕は黒崎さんに殺されるんだ。別れないし、別れられない。


「それなら俺があの娘を切るぞ」

「それは止めて」


やっぱり父さんは結構物騒な人(天使)だなぁ。


「それに、黒崎さんは普通に暮らしてるだけだよ?父さんの時代みたいに世界を征服しようとしてたり、人間を食い物にしてるわけじゃないんだよ?黒崎さんはいい娘だよ」

「この町は俺や努羅真さんを含めた人外たちの目が常に光ってるからな。魔界との境界線だからと言って、迂闊なことができないだけだ。現にお前は彼女の正体を知ったときに殺されかけたんじゃないか」

「でも父さん、天魔町には人を襲う人外だっていっぱいいるじゃん。はぐれ天使とか、犯罪者の妖怪とかさ」


そう、全ての天使が潔白という訳ではない。

天使にも堕天して悪魔に寝返ったり、堕天せずとも自由気ままに人を襲う犯罪者の天使もいる。

妖怪だって、元々は怪異が実体を得た存在だ。

宇咲子ちゃんたち妖怪兎みたいに、人に危害を加えない大人しい種族の方が異常なのだ。

努羅真先生はこの町に古くから根づいている龍神様だけど、信仰を得る前のただの龍だった時期はかなり暴れていたらしいし。


「こう思うと僕の周りってホントに人外が多いんだなぁ」

「今までお前が自力で気づいたことないけどな」


痛いとこつくな。本当、僕の嗅覚は鈍ちんだからね。

黒崎さんが悪魔だったこと、宇咲子ちゃんが妖怪だったことも分からなかったし。

全部父さんに後から教えてもらったことだったりするのは内緒だ。


「まあでも、そこがお前の良いところでもあるからな」


父さんはそう言って笑った。む、これはディスってない?ディスってるよね。


「でも、あの黒崎って娘との関係は別だ。すぐに別れるべきだ」


でたよ。父さんの悪魔嫌い。

こうなるから父さんにはバレたくなかったんだ。

昨日はデーモン教団とかいう人たちのお陰でゴタゴタしててなんとかなったけど、今日はホントに誤魔化しが効かない。


どうやって誤魔化す、いや、認めさせればいい?


父さんの悪魔嫌いは知ってるけど、僕は別に悪魔に対して悪感情はない。

せいぜい、昔天使と戦争やってたことくらいしか知らない。

それに、父さんから聞いた天魔大戦のことは壮大過ぎて、どこか遠くの、架空の世界で起こっていることのような、いまいちリアリティに欠けたおとぎ話にしか僕には聞こえないのだ。


これが実際に戦争してた世代と僕みたいな平和ボケした世代の差なんだろうけど、少なくとも、僕は悪魔嫌いの父さんと違って黒崎さんのことが大好きだ。


バルログさんと父さんは絶対に僕たちの関係を認めないだろうけど、この壁を乗り越えてこそ僕の初恋はけ、結婚……へと昇華するのだ。


当の黒崎さんは僕のことどう思ってるんだろうかというのは、置いておこう。大事な話だけどね。


「確か、父さんの言うことはいつも正しかった」

「分かってくれたか!ならあの娘に電話して……」

「でも!!僕は絶対に別れない!黒崎さんと一緒に居たい!!」


大切なことだから何度でもいうよ。


「僕は、黒崎さんとは別れない」


父さんは初めて見せる僕の親への反抗に、怒ったような、哀しむような顔を見せる。

父さんの気持ちも考えたけど、やっぱり僕の問題なのだから僕の気持ちを優先したい。

その結果、僕が黒崎さんに命を奪われたとしてもそれは僕の責任だ。父さんは絶対に納得してくれないだろうけど納得してもらうしかない。


「それに、父さんは言ったよね?愛は不可能を可能にする唯一無二の力を生み出すって」


一年前に僕が初恋をしたときに言われた言葉を引き合いに出す。

姑息な気もするが、これが駆け引きというものだ。


「彼女がお前の命を狙っているのにか?」

「そんなの承知の上さ」

「目を覚ませ。お前は遊ばれてるだけだ」

「なら僕は黒崎さんに僕のことを好きになって貰うだけだよ」

「お前には出来ねぇ。お前は恋愛経験もない。おまけにコミュ症で悪魔の天敵の天使じゃねえか」

「うっ…痛いな」


第一、なぜ黒崎さんは僕に契約を持ちかけたのか。

ポジティブに考えれば、僕を殺したくないから。

ネガティブに考えれば、僕で遊んでから殺すため。

分からない。黒崎さんが分からない。

難しいことを考えすぎて、僕は既にお目目ぐるぐる状態だ!


「空、俺が言うのもなんだが、あんまり深く考えるな。あの娘は俺にも分からん。悪魔の考えることは、基本分からん。メンタリティーが違うんだ。悪魔のことなんて理解したら負けだぞ」


父さんホントに一万年前、天界連合を率いて悪魔と戦ってたの?

逆に言えば、その父さんをしても悪魔の思考回路は理解不能ってことなのか。


「うん、考えるのやめる。でも黒崎さんとは付き合い続けるよ。だって黒崎さん好きだし」

「そうか。なら好きにしろ。せいぜい後悔すんなよ」


言うだけ言って、父さんは部屋を出ていった。


「好きにするよ。後悔したくないからね」


僕の声は父さんの背中にぶつかって砕けた。





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