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第7話:今日天気になぁれ

 目が覚めた瞬間、目に見える全てがモノクロだった。


 ポン、ポンポポポポ。


 そして出てくるサイコロ。ベッドから降りて拾い上げると、


<今日の天気は、>

<1・2:晴れ>

<3・4:曇り>

<5・6:雨>


 もう、慣れっこです。既に起きてる人たちの歴史も、このサイコロの目で決まるんだ。


 ポン、、ポン、ポン、コロコロコロコロ。


 出た目は、3。景色が元に戻っても、窓の外だけはどんより灰色だった。



 朝食。今日は、ゲンさんが作ったらしい。特に当番とか決めてるようには見えないけど、気まぐれ作ってるのかな、この人たち。


「さあスミレさん、今日は朝からお仕事ですよ」


「そうね。昨日と一昨日、2日合わせて1万円いってないから頑張らないと」


 お金を貯めて何になるんだっていう話もあるけど。


 朝食を食べ終えると、景色がモノクロになった。来たわね。


「来ましたね」


 ポン、ポンポポポポ。


 サイコロ登場。


<1・2:コンビニバイト>

<3:工事現場の交通整理>

<4:アコーディオンで路上ライブ>

<5:カジノのディーラー>

<6:カジノのギャンブラー>


 今日の4番は、まさかのアコーディオン。その手の楽器に触ったのは、小学生の頃の鍵盤ハーモニカが最後なんだけど・・・。4が出ない事を祈りつつ、それっ。


 ポン、、ポン、ポン、コロコロコロコロ。


 出た目は、6。今日も、カジノでギャンブルね。昨日は上手くいったけど、それでも5,000円だったし、どうだろう・・・バイトが恋しい・・・。


 --------------------------------


 カジノに到着。またサイコロ登場。


<1:ルーレット>

<2:ポーカー>

<3:ブラックジャック>

<4:バカラ>

<5:スロット>

<6:クラップス>


 昨日と同じラインナップ。1か5、1か5、1か5!


 ポン、、ポン、ポン、コロコロコロコロ。


 出た目は、5。よしっ。


「今日はスロットですね」


「うん、頑張る」


「と言っても、運で決まるんですけどね」


「え? でもボタン・・・」


「あれは、ボタンを押した瞬間に当たるかどうかが決まるもので、押すタイミングで当たりを狙うものではないですよ」


「え? そうなの?」


 知らなかった。ミリ秒単位の超絶妙なタイミングで押せば当たるものだと思ってた。あとちょっとで、回るやつを目で追いながらタイミング計ってやるとこだった。


「はい。ですが、そうとは知らずに一生懸命タイミングを計るスミレさんも見てみたかったですね」


「ちょっと!」


「失礼しました」


 全く。


 他のゲームと同じく、チップでできるようなので15,000円分を用意して、スロットの場所へ。日本のゲームセンターにもあるようなスロットマシーンが並んでいる。ミシンのボビンみたいなやつに“7”とかスイカとかが書いてあってグルグル回るタイプと、完全にアニメーションのタイプもある。


 ここで景色がモノクロに。はい、サイコロ登場。


<偶数:ボビンみたいなやつ>

<奇数:アニメーションのやつ>


 そうくるよね。


「ボビンみたいなやつ、とは・・・?」


「多分私が、あのグルグル回るやつをボビンみたいって思ったから」


「ああなるほど、そうでしたか・・・・・・プフッ」


「ちょおっ」


「す、すみません。度々失礼しました」


 なんか納得いかない部分もあるけど、気を取り直してサイコロを投げた。


 ポン、、ポン、ポン、コロコロコロコロ。


 出た目は、6。


「では、ボビンのやつですね」


「ボビンって言うのやめて」


「最初に言ったのはスミレさんですが」


「そう、なんだけど・・・」


 いや実際は心の中で思っただけなんだけど、サイコロに拾われた。


「さすがにどの台を使うかまでは指定してこないでしょう。適当に選んでください」


「余計なこと言わないでよ、サイコロ出て来ちゃうんだから」


「それならそれでも良いじゃないですか」


「よくない!」


 隣に知らないおじさんがいるとかは嫌だから、人口密度が低めの場所に行って適当に選んだ。近くで見ると、メインとなるボビン(もう諦めたからこう呼ぶ)がある部分の上に、


 JUCKPOT \159,264,300


 と書かれていた。見ている間にも数字が増えていく。


「これなに?」


 指をさして聞いてみると、


「ジャックポットですね。かなりの低確率ですが、そこに書いてある金額が当たります」


「えっ? いや、これ・・・1億、5千、900万、だけど」


「そうですね」


 いや、“そうですね”って。


「これまで、スロットに投じられてきた額だと思ってください。同じ機種の台はみんな同じ金額になってますから、共有されているようですね。100円が1億6千万になる、夢があっていいじゃないですか」


 夢あり過ぎでしょ。倍率100万倍以上じゃん。まさにミリオンドリーム。


「まずは、100円、っと」


 100円チップを投入。


「3枚入れましょうか。MAXにするのが基本です」


「MAX? ってこれか、2枚だと上と下の段、3枚だと斜めもあるもんね」


 確かに、斜めで揃った時に「3枚入れとけばよかったぁ~!」とか言いたくない。斜めでも確率低いはずなんだから、入れとかないと。


 チップを3枚投入し、スタート! ここで、景色がモノクロになった。


「え・・・?」


「なんでしょうね」


 立ち上がり、サイコロを拾い上げると、


<サイコロを3回振ってください。3連続同じ目で大当たり!>

<2~6:その数字の倍率分の当たり>

<1:111倍当たり>

<大当たり後、さらに2連続同じ目でJUCKPOT!!>


「は、はあ・・・」


「これは・・・どうなんでしょうね。普通のスロットの当選率がよく分からないのですが」


「どっちにしても、やるしかないのよね」


 ポン、、ポン、ポン、コロコロコロコロ。


 最初は、6。この時点で111倍はなくなった訳だ。サイコロは自動で私の手元にスゥッと戻って来た。次、2回目。


 ポン、、ポン、ポン、コロコロコロコロ。


 3。ハズレ確定。でも、またサイコロは私の手元にスゥッ。もう1回、振れと。


 ポン、、ポン、ポン、コロコロコロコロ。


 5。ここでようやくサイコロが消え、景色も元に戻った。でもスロットは回り続けている。・・・押せと?

 どうせまたサイコロを振らされるから、立ったままボタンを3回押した。もちろんハズレ。


「チップ、5,000円のやつを一気に入れましょうか。100円チップの方も、僕が大きい額のに替えておきます」


「あ、うん。ありがとう」


 5,000円チップを入れ、スタート。景色がモノクロになると共にサイコロ登場。


 1回目は、6。 1、出ないかあ。

 2回目は、1。 ハズれたし。

 3回目は、3。


 景色が戻り、スロットマシーンのボタンを3回押した。ハズレ。何これ、面倒なんだけど・・・。

 周りを見ると、座ったままの人たちがルーチンワークでボタンをポンポン押しているのが見えた。こうして見ている間にも、1回、また1回と、スロットが回っていく。私、すごい効率悪くない?


 再び、斜めまで賭けてからスタート。そしてサイコロ登場。


 1回目は、1。 おっ、111倍、いっけえー。

 2回目も、1。 あ、マジ? リーチじゃん! 300円掛けてるから当たれば一気に3万円!


 そして3回目。


 ポン、、ポン、ポン、コロコロコロコロ。


 3だった。


「はぁ~・・・」


 そう上手くはいかないかあ。肩を落としているところに、ヒロキが戻って来た。


「リーチでもハズしたんですか?」


「うん。1のリーチだったのに」


「おぉ。それは、惜しかったですね」


 気を取り直してもう1回。


 1回目は、4。 1、出ないかあ。

 2回目は、2。 リーチ出すのも難しいなあ。

 3回目は、4。 あ~、2回目だけがハズレだぁ~。


 もう1回!


 1回目は、1。 よしきた!

 2回目は、3。 はぁ・・・。

 3回目は、4。 終了。


「はぁ、はぁ、・・・」


 結構、疲れた。まだ5回しかやってないのに。だってこうしてる間にも他の人たちは10回20回と進めてるんだよ? 何で私だけ、わざわざサイコロ振らなきゃいけないの。苦行だよ~~!


「スミレさん、頑張ってください」


「頑張る、けど」


 今、1,500円使ってる。チップ投入した分は3,800円残ってるから、なくなるまではやってみよう。


 と、ここで、スタートボタンを押してないのにサイコロ登場。ちょっと、待ってよ・・・。


「今度は何でしょうね」


 私には、大体分かります・・・。


<1・2:5,000損するか得するかまでやる>

<3・4:10,000損するか得するかまでやる>

<5:12時までやる>

<6:1回でも当たれば引き上げる!>


「なるほど、そうきましたか」


 とりあえず、“JUCKPOT出るまでやる!”がなくて良かった。5は何気に辛いけど終わりが分かってるからいい。3か4さえ出なければ大丈夫。


 ポン、、ポン、ポン、コロコロコロコロ。


 出た目は、2。ホッ。さっき思ったことが、そのままサイコロにも導かれた。


「よーし、頑張るぞ」


 6回目の挑戦、3、1、3でハズレ。

 7回目の挑戦、2、3、2でハズレ。


 この、2回目だけハズれる展開・・・。よし、次!


 1、1、よし来た!


「お、大チャンスですね」


 1、お願い!


 ポン、、ポン、ポン、コロコロコロコロ。


 2だった。


「ああ~もう!」


「スミレさん、落ち着いて」


 分かってる。分かってるけどぉ。


「お客様」


「「はい?」」


「あの、恐れ入りますが、着席しての、遊戯をお願いします・・・」


 あ。


「す、すみません・・・」


 怒られた。

 次は、最初のサイコロの登場も私の手元にスゥッと出てきた。これなら座ったままでも手間なくできるわね。サイコロ振ること自体手間なんですけど!


 と文句を言っても仕方ないので、サイコロを振り続ける。


 9回目の挑戦。1、今1が出た~~! さっきの2、取り消せないの?

 残り2回は、6、6。 2連続で6が出たけど、リセットされるのよね・・・。


 次、10回目の挑戦。4、4、リーチ! でも当たっても4倍かぁ。

 最後は、5だった。しかもハズれるし。


 ここまでで3,000円のロス。1/36で当たっても2~6倍なんだから、実質上、1で当たるか5,000円負けるかじゃん。


 次、11回目の挑戦。4、6、1。

 ハズレが決まった後も3回目を振らされるのが辛い・・・。


 12回目の挑戦。6、3、6。

 13回目の挑戦。1、2、5。 お金だけが減っていくぅぅ。

 14回目の挑戦。3、5、5。 私の気力も擦り減っていくぅぅ。

 15回目の挑戦。6、6、リーチ!

 でも中途半端に当たるよりは、さっさと5,000円負けちゃいたい。

 最後が5で、ホッとした。心は嘘をつけないのです。


 16回目の挑戦。4、5、3。

 ここで、ロスが4,800円になった。


「次が、最後ね」


「1以外で当たらなければ、ですが」


「怖いこと言わないで」


 17回目の挑戦。最初は、6。これで私の勝利はなくなった。


 次は、1。


「ふうっ」


「残念、でしたね」


「いいわよ。もう疲れちゃったから」


 何も懸かるものがなく、消化試合的に振った最後の目は、1だった。せっかくの1の2連続も、こんな所で出られても盛り上がらないわね。


「はあぁ~~、疲れたぁ~」


「お疲れさまでした」


 時計を見ると、もうすぐ12時。クッション性の大きなサイコロを51回も振ったのだから、そうもなるか。


 スロットマシーンを見ると、200円分残っていた。


「そっか、最初だけ100円チップ3枚でやったから」


「残していくのは、あんまりよくありませんね。消化しましょう」


 景色がモノクロになり、サイコロ登場。正真正銘、最後の1回。


「200円分しか賭けなかったのに、同じ確率なんですね」


「最後のサービスなのかしら」


「ですかね」


 サイコロを投げると、出た目は6。お願い、ハズれて!

 願いが通じ、次は5だった。3回目の登場はなく、景色が元に戻った。


「あ」


「ハズれた瞬間に消えたのも、サービスでしょうか」


 だったらずっとそうして欲しかったんだけど。


 カジノを出ると、朝と変わらない曇り空。私の心もどんより曇り空だ。ぶっちゃけ、5,000円の損よりも疲れの方が大きい。


 ここで、景色までグレーになった。今度は、なに。しかも、サイコロ、また地面に落ちるように戻ってるし。しゃがんで拾い上げると、


<1が出たら晴れるよ! 天気だけは>


 天気だけは!


「何なのよ、もう~」


 ポン、、ポン、ポン、コロコロコロコロ。


 4だった。


「はぁ。 お昼、食べよ」


「そうですね。何がいいですか?」


 5,000円損したばっかりだけど、


「焼肉!」


「やけ食い、ですか」


「心を晴らすためよ」


「そうですか。では行きましょうか、焼肉」


「うん」


 そのままカジノを離れ、ヒロキが家族でたまに行くと言う焼肉屋さんに向かった。


次回:よい子はだぁれ

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