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第16話:招かれた迷い人

 郵便配達の最後のお届け先が、王宮だった。それも、封筒を手にした配達員が直接配達するようにと書かれている。宛名、ダイス6世は、多分だけど国王。今日のお仕事の選択肢にも国王の秘書があったから、私は今日、国王に会うことになってたんだと思う。この封筒が誰かのイタズラって可能性もあるけど、行ってみるしかない。


 どう考えても、すぐには郵便局に戻れない。電話をかけ、ただ単に遅れてて間に合わないとを伝えると、午前中と言ったのはあくまで目標だったから構わない、お昼も外で食べてきて良いとのことだった。意を決して、王宮を目指して自転車を漕ぎ始めた。


 少しずつ、立派で大きい家が増えていく。王宮に、近づいてるんだ。道行く人たちも、どこか優雅で上品な身だしなみや、身のこなし。



 そして、王宮の入口に到着。当然のことながら、門の前には鎧を身に着けた兵士。王宮の建物までもまだ距離がある。


「すみません」


「どうした。道にでも迷ったか」


 さすがに、ここに郵便配達しに来たとは思ってないようだ。私は王宮宛ての封筒を取り出し、


「これ、なんですが・・・」


 と、表裏両方を見せた。


「何だこれは」


 兵士は封筒を手に取り、何度か表裏を交互に見た後、


「・・・誰かのイタズラだろう。全く。持ち帰ってよいぞ」


「は、はい・・・」


 封筒を返されたので受け取る。だけど、どうしてもこのまま帰る気分にはなれなかった。自分は、ここに招かれて来たような気がする。足を動かせずにいると、


【イタズラなどではない】


 と、遠くから、声が聞こえてきた気がした。けど、私たちに視線を向けている人はいない。もう1人の門番の兵士でさえ、正面を向いたままだ。


「こ、これは、・・・国王陛下!」


 封筒を見せた兵士が慌てたように声を出す。この声の主が、国王なんだ。ここで初めて、もう1人の兵士も動いた。


「どうした。どこに陛下がいる」


 こっちの兵士には、声が聞こえなかったみたいだ。


【その者を通せ】


 兵士は驚いたような反応を見せ、


「し、しかし・・・!」


 戸惑っている。もう1人の兵士も、


「この、配達員を・・・? 」


 と言った。今度は2人に聞こえるようにしたみたいだ。


【そうだ。私が招いた】


 兵士は顔を見合わせ、揃って首を縦に振る。


「か、かしこまりました」


 2人の兵士は定位置に戻り、ここに私が来る前と同じように背筋を伸ばして、


「国王陛下がお呼びだ。通れ」


 正面を向いたまま、淡々とそう告げた。


「はい。ありがとうございます」


 自転車を門の脇に停めさせてもらい、2人の兵士の間、それから門を通って王宮の敷地の中へ。


【六方、菫】


「・・・はい」


【そのまま、私に会うまで真っ直ぐ進め】


「はい」


 正面の、ずっと先に王宮。その手前には階段。言われたことを信じるなら、中に入ってからも真っ直ぐ進めばいい。見張りの兵士がいる中を、ダイス6世宛ての封筒を片手に、一歩ずつ、進んで行く。



 5分ほどで、王宮前の階段に到着。近くで見ると、かなり大きな宮殿だ。階段は30段ほど。1段ずつ、しっかりと踏みしめて上って行く。


 全てを上りきり、入口に到着。周りの兵士たちが動く様子はない。真っ赤なカーペットの上を、真っ直ぐ進む。所々に太い柱があるけど、広い空間だ。

 そして現れる、大きな扉。コンサートホールにあるような大きさで、それよりも貫禄のある立派な扉。左右1つずつある取っ手を、それぞれの手でつかみ、ゆっくりと押した。


 その先は、廊下だった。5mほどの幅で、両側の壁に威圧感がある。取っ手から手を離すと、扉は勝手に閉まっていくようだったので、そのまま前に出て振り返らずに前に進んだ。少し先には、また大きな扉が見えている。


 程なくして、次の扉に到着。同じように、両手で1つずつ取っ手をつかみ、ゆっくりと押し開けた。



 今度は、広い部屋だった。そして正面には、立派な椅子に座り、頭に王冠を戴せた人の姿。少し離れた位置に、従者もいる。手を離し、一歩前に出て、扉が閉まるのを待つ。


 トッ。


 かろうじて聞こえる程に小さく、扉の閉まる音がした。まだ距離があるので前に進もうとすると、


「よくぞ来た」


 さっき門の前で聞いた声。門の前の時とは違う、生の声。


「ダイス、6世様でしょうか」


「そうだ」


 私は、前に向かって歩き出した。ダイス6世も従者も私を止める様子はなく、ただ私を見ていた。私も負けじと、ダイス6世から目を離さずに前に進む。


 そして、すぐ目の前という距離まで近づき、


「あなたに、お届け物です」


 手にしていた封筒を、差し出した。


「ご苦労だった」


 国王は封筒を受け取り、従者を呼び寄せた。私は国王の方を向いたまま、3歩下がって距離を置いた。従者は封筒を受け取ると、すぐに国王から離れて元の位置に戻った。



 しばらく、無言のままお互いを見ていた。先に口を開いたのは、ダイス6世。


「ここでの生活は、楽しめているか」


 6日前に聞かれたら、NOと即答できた質問。


「・・・はい。とても、楽しいです」


 ダイス6世はゆっくりと目を閉じ、


「そうか。それは、何よりだ」


 と言った。そしてすぐに目を開く。頭の中まで見透かされているような感覚がする。


「それでも、元の世界に帰りたいか」


「っ・・・」


 ここしばらく、たまに頭をよぎっていたこと。だけど、


「帰りたいです。確かに同じような毎日で、家族や友人に会うことも煩わしく思える時がありますが、二度と会えないのは、困ります」


「元の世界に帰れば、ダイスワールドの人間に二度と会えなくなるぞ。同じことではないのか」


「ダイスワールドの人たちとは、別れが訪れることが初めから分かっていたから、割り切れます。それにここは、突然迷い込んだ世界。自分が生まれ育った世界に、帰るべきなんです」


「まるで義務のように聞こえるな。元の世界での生活は、楽しくないのか」


 正直に、答えよう。


「・・・そうですね。1日1日の楽しさで言えば、ダイスワールドの方が上です」


「それでも、帰りたいのか。楽しさに劣る方の世界で、生きることの意味とは何だ」


「それ、は・・・、」


 言葉に詰まってしまった。確かに、生きている限りは毎日楽しく過ごしたい。二度と会えないのは困るという家族や友人と会うのは、楽しいこと・・・? 一緒にテレビを見ながら適当にコメントを出す、お互いの近況を語り合いながらご飯を食べる、その他諸々。

 1日駅長と比べれば、雲泥の差。それでも私が、元の世界の人たちに会えないのは困ると思うのは、縁あって知り合ったから、ということになる。血の繋がりや、学校や職場の仲間。そう言った人たちと、たまに会ってお互いの人生の一部を共有する。


 じゃあ、それが生きる意味・・・? 私は、何のために生きていた・・・? 同じような毎日を繰り返す中で。人に会うことが煩わしいと思うこともある中で。


 言葉を返せないでいると、ダイス6世が再び口を開いた。


「迷い人は、自身の日々の生活に疑問を持っている者を招いたものだ」


「え・・・」


 そう、だったんだ・・・。あの時もちょうど、同じ毎日を過ごすことにモヤモヤしていた。


「ここに来たこと自体が、君に迷いがあった何よりの証だ」


「っ・・・・・・」


「君は、日々をどう過ごしたいんだ。君自身は、どうありたいんだ」


「私は、・・・」


 私が思う、私のあるべき姿は決まっている。自分の名前、菫の花言葉。謙虚・誠実・小さな幸せ。そして私が勝手にこだわっている、乱暴は振るわないこと。“バイオレット”は、菫は、“バイオレント”とは違う。穏やかな存在だ。


 まず、それにこだわって生きることは楽しくはない、得するどころか損することの方が多いだろう。私がどんな思想で生きていても、周りから見れば“六方菫はこういう人”、性格の一部でしかない。そして、名前に対する意識が薄らいでは何かのきっかけでまた意識する、を繰り返した。特に、この名前をくれた祖母が亡くなってからは。私の生き方を見せる相手がいなくなって・・・。


 親とも友人とも、気恥ずかしくてそんな話はしない。だけど、その時の勢いもあったかも知れないけど、ヒロキに名前のことを話した。それからは、少し変わったような気がする。自分の行動に責任が持てるようになった気がする。


 もう一度、思い出そう。謙虚・誠実・小さな幸せ。


 謙虚とは、控えめで、つつましく、人の意見を素直に聞き入れること。


 今の私は、ダイス6世を納得させることばかり考えている。それは、謙虚とは言えない。自分が思っていることを表に出すように言われているのだから、素直に本心を答えればいい。彼の質問は、楽しさに劣る方の世界で生きる意味、私は日々をどう過ごしたいか、私自身はどうありたいか。


 3つ目には、すぐに答えられる。


「私は、謙虚で、誠実で、穏やかで、かつ、多くの命がある世界の中の、小さな幸せでありたいと思っています」


 “小さな”と付いているのは、広い世界の中で私は小さな存在に過ぎないという意味。だから単純に、私自身が幸せであればいい。幸せの定義は難しいけれど、ただ単に毎日楽しければ良いという訳では、きっとない。


「・・・それが君の思う、君の理想の姿か」


「はい」


「では、日々の過ごし方、生きる意味についてはどうだ」


「日々の過ごし方は・・・、楽しむことよりも優先すべきなのは、今言った、自分の理想であり続けることです。確かに、せっかくなら毎日楽しく過ごしたいという想いもあります」


 誠実とは、私利私欲を交えず、真心があること。


「ですが、私の人生の中で、日々の楽しさを選んで家族や故郷を捨てるなんて出来事は、一度たりとも必要ありません」


 ダイス6世は、ゆっくりと目を閉じ、


「そうか」


 また開いた。


「その為なら君は、ダイスワールドで世話になった者たちに別れを告げずに去ることが、できるのだな」


「それ、は・・・、」


 また、言葉に詰まってしまった。


「君は、このままダイスワールドで世話になった者に別れを告げずに去るのと、生まれ故郷や家族・友人との縁を切りダイスワールドに残るのと、どちらを選ぶ」


「っ・・・!」


 その2択しか、無いなんて・・・。どちらを選んでも、誠実さには欠けることになる。それ以前に、どちらも選べない。選びたく、ない・・・。


 こうなったのは、私の責任だ。すぐに元の世界に帰ることはないだろうと、そのうちまた会うだろうと思っていた。いつ別れが訪れるか分からなかったのだから、ちゃんと、これが最後かも知れないという前提で接する必要があったんだ。

 マナミにだけは、最後のお別れが言えるか分からないと伝えることができたけれど、それでもこんな急なのは嫌だし、他の人たちには何も伝えきれていない。


 1日でも猶予があれば、きっと、色んな人とお別れの挨拶をしてから帰るという道を選ぶだろう。本音を言えば、それでもあまりに急だから3日ぐらいの心の準備期間が欲しかった。


「迷っているようだな」


 完全に、見透かされている。


「・・・ではそれが、運任せで決まるとしたら、どうする」


「え・・・」


 まさか、それさえも、サイコロで決まってしまうの・・・? それくらい、ちゃんと自分で決めたい。だけど、迷っているのは事実。サイコロで決まってしまえば、どちらに転がっても、突然サイコロに決められたと言い訳ができる。なんて考えてしまう自分が、悔しい。私がちゃんとしていれば、不誠実なくダイスワールドのみんなとお別れすることができたんだ。


 自分の意志で決めれば、選ばれなかった方はどう思う・・・? 落ち込んだり、怒ったりするだろう。そしてきっと、元の世界の家族・友人は怒る、ダイスワールドのみんなは落ち込むという形になる。元の世界に帰るべきだとは思っているのに、怒られるか落ち込まれるかの片方を防げるのなら、落ち込まれる方を防ぎたい。

 日々の楽しさを選んで家族や故郷を捨てる事はしないけど、私を温かく迎えてくれた人を悲しませないために家族や故郷を捨てる事は、でき、る・・・?


 いや、でも、本当にそれでいいの・・・?


「案ずるな」


 ダイス6世が強くそう言った。


「え・・・?」


「運任せで決まるのは、確定している。君が選ぶ必要は、ない」


「っ・・・」


 そん、な・・・。

 選ぶ必要はない。選ぶことはできない。


「改めて聞こう。運任せで決まるぞ。どうする」


 ダイスワールドを治める国王が言うのだから、もう・・・。

 もう、変えられないのなら・・・。


「・・・それでも、構いません。ダイスワールドにいる限り、私は迷い人。サイコロが決めたことに、従います」


 元の世界の人たちか、ダイスワールドの人たちか、どちらかに対して不誠実を働くことが避けられないのなら・・・、それは私の責任であり、私の行動次第では防げたという後悔もある。だから、その責任も、後悔も、全部背負って私は生きる。


「元の世界に帰れなくなっても、ヒロキやみんなを落ち込ませることになっても、それを全部自分の心に刻んで、それから先、二度と同じことをしないように、生きていこうと思います」


 ダイス6世は、ゆっくりと目を閉じた。


「・・・そうか」


 と独り言のように呟き、目を開いた。


「大した覚悟だな。では、残りの質問だ。君が生きることの意味は、何だ」


 答えは、決まっている。


「自分の理想を目指し、それを貫き続けることが、そのまま私の生きる意味です。私は、私の思い描く理想の自分でありたい。楽しくなかったとしても、きっと喜びにはなります。元の世界かダイスワールド、どちら一方に、別れを告げずに別れるという不誠実を働くことになってしまいましたが、許してもらえるように、“六方菫”を育て上げます」


 私にとっての、私の幸せ。自分自身が、自分の理想であること。


 人に憧れたりするようでは、それは幸せな状態ではない。私が目指すのは、誰にも負けない究極の人間。誰にも負けない最高の人生。自分の人生は他の誰にも絶対に負けない、そう思えるようになりたい。


「サイコロで決まってしまうのは、仕方がありません。ですが、それがどんな結果になっても、私は、自分の人生を最高のものにしてみせます」


「そうか。・・・ならば、その覚悟のほどを見せてみよ」


 次の瞬間、私の体が白い光に包まれ、視界が真っ白になった。


 --------------------------------


 体が、宙に浮いている感覚がする。いや、少しずつ、落ちて行っているかも知れない。どうだろう、分からない。


 目を開けた。真っ白な空間だった。光はもうなく、自分の体は普通に見える。自由に動かせる。


 これから、始まるんだ。私の行く末を占う、最後の試練が。


「フーーーーーッ」


 目を閉じ、大きく息を吐いた。このまま、元の世界に帰ることになれば、みんなとはお別れだ。何も伝えることもできずに。



 ヒロキ。


 1週間、面倒見てくれてありがとう。一昨日に連れて行ってくれた、六方が菫の花に囲まれた場所、とっても素敵だった。私と初めて会った時から、いつか連れて行こうと思ってたのかな。


 おかげで私は、自分のあるべき姿を思い出すことができたよ。本当は、あの時ヒロキに話すまで、頭の片隅に追いやられてたの。引っ張り出してくれて、ありがとう。


 もし二度と会えなくなって、次の迷い人がやって来ても、私のこと、絶対に忘れないでね。胸を張って生きていけるように、頑張るね。



 シゲおばあちゃん。


 2人の祖母を亡くしていた私にとって、シゲおばあちゃんは、本当におばあちゃんのような存在だった。一緒にご飯を食べたり、テレビを見たりしていただけだったけど、嬉しかった。


 もし元の世界に帰れなくなったら、また一緒にテレビ見ようね。



 マナミ。


 最初は、家にいないこと多いし、ロッポウさんとか言って私のことからかってくるしで、正直、あんまり印象は良くなかった。だけど、サイコロ勝負したり、一緒にお風呂入ったりして、仲良くなれて良かったな。私の名前のこと、褒めてくれてありがとね。


 もしこのまま黙って帰ることになったら、ごめんね。許してもらえるか分からないけど、これからは、菫の名に恥じないように生きるよ。



 ゲンさん、ミズエさん。


 あんまりお話できませんでしたが、突然やって来た私を、文句も言わずに受け入れてくれてありがとうございました。この1週間楽しく過ごすことができたのは、他でもない、お2人の支えがあってこそです。


 もしずっとダイスワールドで暮らすことになったら、またお世話になってもいいですか。今度は、文房具屋さんのお手伝いもしますね。




 どうしてだろう。元の世界に帰れなくなる可能性だってあるのに、思い出すのはダイスワールドで出会った人たちのことばかり。私を育ててくれた両親には感謝してるし、また他愛のない話をしたい友だちだっている。それなのに・・・、




 アヤカさん。


 私の初仕事が、あのレストランでした。ちゃんとできていましたか? 新メニューの愛情オムライス、調子はどうですか? 認めてもらえそうですか? もしダイスワールドに残れたら、食べに行きますね。でも作りませんからね。サイコロで決まらない限りは。



 アサトさん。


 三ッ星レストランシェフの豪華料理、ごちそうさまでした。美味しかったです。ですが、幾度となくサイコロを振って来た身としては、あの勝負で負けたのはちょっと悔しいです。アドバイザーを、目指すんですね。きっとまた、自分の生き方に迷った人がやって来ます。私が帰ることになっても残ることになっても、その人のこと、よろしくお願いしますね。



 カラスちゃん。


 キミとお話しできて、嬉しかった。初めて会った後も、私のこと見ててくれてありがとね。ホントにいい子だね。まだいい子にしてるよね。してなきゃダメだからね。“いい子いい子”してあげないぞ。もしまた私を見かけたら、近くまで来てね。



 レンタさん。


 2日連続のカジノの後だったので、あの日は日常に戻った気分でした。既に掃除が終わっていた調理場を掃除しようとしたのは・・・サイコロに決められたと言い訳をさせてください。レンタさんの笑顔も中々でしたよ。磨き上げればきっと彼女できますよ。あの時2を出せなかったのは・・・これもサイコロが決めたんです。今度は人生をサイコロに決められそうなんですけど、どっちになっても、私は笑って生きていきますよ。



 セイコさん。


 自分の名前と同じ”バイオレットの日”に一緒にお仕事できて良かったです。1つ1つは地味な作業でしたけど、その1つ1つが立派にお店を支えてるんですね。曜日に合わせたお花の設置、採用されて嬉しいです。もし私が行けなくなっても、日曜日には菫がいるようにしてくださいね。もちろん日曜日以外も、スーパーマーケット ”レインボー”が、みんなにとって素敵な場所でありますように。



 ハルツグさん。


 1日駅長、とっても楽しかったです。くす玉、割れなくてごめんなさい。私の名前の特急列車ができるのは、とっても嬉しいです。ですが、バイオレットは、刺激の強いものじゃないですよ。菫と一緒ですよ。


 もしダイスワールドに残ることになったら、特急すみれ号、私も乗っていいですか。サイコロで1が出たら、運賃1/6ですからね。



 国王陛下。


 あなたには、厳しいお言葉を頂きました。これから、厳しい試練も頂くことになります。ですが、そのおかげで私は、自分の目指すものが見つかりました。さっきも言った通り、どんな結果になっても、自分の人生を最高のものにしてみせます。あなたにも、負けません。



 そして・・・、


 最後の相手に別れの言葉を告げようとした瞬間、何かが強く光った気がした。目を開けると、実際に白い光が現れていた。手を伸ばそうとすると、



【スミレ】



 声が、聞こえてきた。幼い子供のような、純粋な声。


 光の中から現れたのは、


「サイコロ・・・、ちゃん・・・?」


 相手に別れの言葉を告げようとした、最後の相手だった。


次回:通じ合う想い

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