ハイヒールとピナフォア
「ねぇハイヒール」
ハイヒールと呼ばれた真っ黒で腰まで届く髪、黒いハイヒールを履いた男は首をかしげながら振り返る。
「なんだ?ピナフォア」
地面に胡座をかいた少女が、茶髪の長い三つ編みを白い指でいじりながら答える。
「私たち、いつまでこんなことするんだろうね」
物憂げな顔で、夕陽に染まる廃墟の街並みを見上げる。
「当然、終わるまでだ」
「...だよね」
彼女は砂埃を払いながら立ち上がり
「次はどこだっけ?」
「どこでもいい、歩いた先にあいつらはいる」
そう言って歩きだすハイヒールに笑みを浮かべてついていく。
歩き出して300メートルほどでハイヒールが口を開く。
「...もういいかピナフォア」
「んー45点!」
いきなり叫びだす。さっきまでの悲雰囲気をぶち壊しながら。
「無表情なのよアンタは!いいハイヒール?クールと無表情は違うのよ!」
ハイヒールの顔に向かって指を向けながら捲し立てる。
「人間っていうのはね!第一印象で90%が決まるわ!アンタの第一印象は暗い!真っ暗よ!それでも顔はいいから多少は見れるわ、でもね!無表情すぎて見る気が無くなるわ!もう1回言うわよ、クールと無表情は違うのよ!」
「......はぁっ。」
心底鬱陶しいそうに息を吐く。
「何よ!文句ある!?」
無言でハイヒールは歩きだす。歩くというより走っているのではないかという速度で。
「なっ...ちょっ、待ちなさいよ!まだ話は終わってないわよ!」
口を荒げながら追い付くために走り出す。
文句を言いながら走る彼女をチラリと見るハイヒールの口元は、楽しそうに少しだけ笑っていた。