9・自分から進まないと、始まらないんだ
ぐわん!!
現代に戻ったときと詩織の様子を見て、さらが言った。
「・・・やっぱりバッドエンドだったの?」
「・・・」
「今すぐ謝らなきゃいけないの。そうじゃないと、私、・・・」
詩織は走り出した。
慌てて、いつメンも後を追う。
もちろん、わたしも。
「伊織!」
「・・・」
無言で振り向いた伊織。
「ちょっと来て!話さなきゃいけないことが、あって」
「・・・」
「なんで黙ってんの⁉ちょっとは何か話してよ!」
「・・・」
「・・・あ、昨日絶交したから?ごめん、じゃあ、絶交なし!お願いだからきて!!」
「・・・ここで言えない話?」
伊織は鋭いまなざしで詩織を見つめた。
「・・・まあ・・・う・・・」
「もう休み時間ちょっとしかないし、移動するの嫌なんだけど」
「・・・うん・・・」
「さっき話せとか言ってる割には、話さなくなってるんじゃん」
プイと伊織は本に目を戻した。
「ごめんなさい!!!!」
詩織の大声に、クラスが詩織のことを見つめた。もちろん伊織も見た。
「小2のことは、私が勝手に嫉妬して、伊織のことがうらやましくて・・・だから伊織に復讐しようとか、バカなこと考えて、ごめん!!みんなの信頼なくさせようとか、それで実際に家族の信頼なくさせて、ごめん!!友達も減らした!ごめん!」
伊織は目を見開いて聞いていた。
「伊織から笑顔を奪ってごめんなさい!!!」
「・・・詩織・・・」
「家族には私が言うから!伊織はそんな子じゃないって!私が全部背負うから!だからお願い!元の伊織に戻って!!!」
詩織がはぁ、はぁと疲れていると、後ろに男子がいた。
「ふーん。どうでもいいけどさ、うるさいんだよね。邪魔なんだよね。どけ」
どんっ!
押されてよろけた詩織を受け止めたのは――――――――
「あんたたち、私のことを殴ろうとした後は、詩織に暴力?暴力じゃなくて、言葉で表したら?」
「・・・伊織・・・」
伊織は詩織の顔を覗き込んだ。
「私、今までされてきたことは本当に嫌だった。だけど、詩織ならこうして謝ってくれるって思って・・・私から謝ればよかったよね。ごめん」
「伊織は悪くないよ!」
「ううん、私だって、詩織にめちゃくちゃ嫌な態度とっちゃったし・・・」
「ううん!ううんううんううん!!ごめん・・・!!」
詩織は泣きだした。
「ちょ、詩織のバカ。何泣いてんのよ・・・」
ときは笑った。
泣いてるのは、詩織だけじゃなくて、伊織もでしょ?