8・未来の伊織
「こ・・・ここって・・・」
「3年後の詩織の家だよ。どうなってるか、見ないと分からないんでしょ?」
私はちょっと強めに言った。
わかってるけど、強めに言わないと、詩織は成長できないと思う。
「伊織ちゃんの部屋どこ?」
「・・・わ、私と同じだけど。その2階の・・・」
窓が見えて、そこを指さす詩織。
「行こ」
ときは詩織の手を引っ張った。
「あれ?伊織は・・・?」
詩織は部屋に入って、きょろきょろとあたりを見回した。
「私・・・この中学行ってるんだ。制服がある・・・」
詩織の制服は、市立の受験なしで行ける中学の制服だった。
伊織ちゃんのところにかかっている制服は・・・
「どこの制服・・・?これ・・・それに、すごくほこりかぶってる・・・」
詩織がそっとほこりを払うと、校章?らしいマークが見えた。
「ここ、すっごく頭いいところだよ。私立の」
「えぇ!?伊織、そんな勉強してたの?」
詩織はびっくりして、伊織の席を見つめた。
「・・・でも・・・どうしてこんなほこりかぶってるの?」
「・・・いやな予感がする」
私はそう言って、詩織にたずねた。
「今は夜の7時だよね。さっきご飯の器が机に置きっぱなしだったし・・・でもね、器が、3人分しかなかった」
「3人分・・・ってまさか・・・」
「多分、詩織、お母さん、お父さん、でしょ?・・・伊織は?」
詩織は青ざめた。
自分の体が中学生になっているのを確認してから、下へかけていった。
「お母さん!!」
「わっ!!何よ、詩織。どうしたの?」
「い、伊織は!?伊織はどこにいるの!?」
「何言ってるの?」
お母さんは悲しそうに、目線をそらした。
「・・・どうして?どうして答えてくれないの!?」
「一週間前に出ていったじゃない!!家を!!」
詩織はつかんでいた手の力を弱めた。
「・・・え?」
「こんな家、もう出ていくって・・・学校なんてつまらないものも、家なんてうざいとこも、もう絶対に行かないって・・・一人で生きてくって、言ってたんじゃない」
「・・うそ」
詩織はぺたんと座り込んだ。
陰からそっと見ていたときは、じっと詩織を見つめた。
「とき!今すぐ戻って!!現代に!伊織に謝らなきゃ!!!!」
詩織はときにしがみついた。






