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異世界で『魔法幼女』になりました  作者: 藤咲ユージ
第6章 開拓する幼女
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開拓に行こう

ギルマスの長い話を聞き終わって家に帰ったらちょうど昼だった。

昼ご飯を食べつつ、領主から開拓の仕事を引き受けたという話をするとビアンカが皆で行きましょうと言い出した。


「ただの土木作業だよ? 皆で行っても多分やる事ないと思うんだけど」


「最初は皆で行って様子を見るべきです」


「そう?」


ビアンカは心配です! みたいな顔をしている。貴族絡みだから?

他の皆も行く気らしい。場所はまだ聞いてないけど、そこまでの距離はどれぐらいになるのか。

近くなら走って行けばいいけど遠くなら空を飛んで行く事になるだろう。


その場合、全員で行くなら自力で飛べるエクレールとノワール、それにノワールに運んでもらえるシュバルツはいいとして俺とビアンカ、アルジェンティーナ……「狼」だともうだいぶ大きいので幼女になってもらおう……「3人乗り」が必要になるな。


Mk-Ⅱのコックピットを前後に長く拡張すればいいだけではあるのだが、前が長いMk-Ⅱが更に前方に長くなって大分見た目のバランスが悪くなるような……まぁ、見た目のバランスが悪くても(たぶん)飛ぶのだろうだが、気が進まない。


コックピットをゴーレムの後ろ(背中側)にしようかな? 空気抵抗は増すだろうけど、今は重量軽減の魔石があるから飛行性能はそれ程落ちないかもしれないし。

試してみよう。



ビアンカ、エクレールと一緒に町を出て、いつもの空き地で実験をする。


座席が3つあるコックピットを背中に、そしてコックピットの後部を伸ばして尾翼を付ける。

垂直尾翼はコックピット周りから生じる乱流を考慮して大型化。その上に水平尾翼が付いた、いわゆるT字型。


主翼はコックピットの横。3人乗りだからMk-Ⅱより少し長くして7m。

翼端のティルトローターは今までと同じ直径3m。全体としてはグライダーみたいな形だ。


ゴーレムの背中とコックピットの接続部分はヒンジのように可動する構造にして、飛行時にはゴーレムが前傾姿勢をとれるようにしよう。少しは空気抵抗が減るかもしれない。


ふむ、こんな感じでいいかな? では、重量軽減の魔石を取り出して、


「クリエイトゴーレム!」


もこもこ。


かなり大きな飛行型ゴーレムができた。


イメージ通り! ではあるのだが……何と言うか、グライダーが「うっかりして(ゴーレムに)追突しちゃいました!」みたいな、そんな形に見える。


そして、ゴーレムの後ろが長ーい……全長は7mぐらい。後ろが長いというか、「グライダーの先端にゴーレムがくっついている」だよな、これ。

とりあえず、試験飛行をしよう。



上向きのローターから僅かな風切り音を発生させながら軽やかに浮上する試作機。

離陸は勿論問題無いが、問題は水平飛行……特に問題無いような?

前傾姿勢をとったゴーレムが飛翔する姿は格好良く見えるぞ! いいんじゃね?


大きく、そして(たぶん)重くなったので機動性はMk-Ⅱに劣るようだが、代わりに安定性は高い気がする。これでいこう。「Mk-Ⅲ」の誕生だ!


ビアンカが乗りたそうな顔をしているので皆で乗ってみる。

本来はアルジェンティーナを連れてくるべきなんだが、お昼寝したいシルヴィアがアルジェンティーナを離さなかったので代わりにエクレールに来てもらったのだ。体格は(角を除けば)ほとんど同じだから。


一番前がビアンカ、真ん中にエクレール、その後ろに俺の順で乗り込む。

そして垂直に離陸! 3人乗っても力強い上昇だ!


4~500m上昇したところで水平飛行へ移行。

ん? 風切り音がやけに大きいな? ビュービューいってる……こんなに音は大きくなかったよな? 

前を見ながら考えているとエクレールの角が目についた。あ、これエクレールの角が風に当たっている音だ。


コックピット前の大型カウルで風を遮っているのだが、角が高く突き出ているから遮った風に当たってしまっている。角は長さが1mぐらいあるからな。


えーと、確かエクレールは風を遮る魔法を使えるけど、狭い範囲はできないんだったよな? 「小さい魔法」は使えないって言ってたし。仕方ない。


「空を飛ぶのは楽しいですね!」


ビアンカのはしゃぐ声が聞こえてくる。


「そうだねー!」


大きな声で返す。大声を出さないと風切り音にかき消されそう!


そういえば、前にエクレールの力でゴーレムを飛ばしてもらったな。エクレールは自分以外の力で飛ぶのをよく思っていないようだけど、今も楽しくないのかな?


(楽しい)


あれ? そうなの?


(そう)


意外なコメントが。どういう心境の変化なのか。

エクレールもビアンカと同じように左右を見渡しているんだけど、その度に風切り音が凄い事に! 角に当たっている風の力は相当なものだと思うんだけど、大丈夫なの? 首痛くならない?


(ならない)


そうなのか。首強いねー。



試験飛行を終えて家に戻ると胸元がぶるぶる震えだした。おっと、通話の魔道具か。


(はい、こちらセシリア)


(ジュディよ。仕事の日程が決まったわ。2日後の朝、ギルドに来てね)


早っ! もう決まったのか。


(場所はどこ? 遠い?)


(私にはわからないわ、何も聞かされていないの。詳細は当日やって来る担当者に聞いて。それじゃ)


あっ、ちょっ!?


切られた……担当者? 専任の(たぶん)貴族、だよな?


えーと、開拓って1日では終わらないよな? 泊まり掛けか。

野営の準備は……マットレスを買ってトーチカの中で使おう。さすがにもう地面に毛皮という訳にもいかない。他は……別に無いな。後はリディアに何日分か食事を作ってもらって持っていこう。足りなかったら自分で作ればいいし、魔法袋に必要な物は大体入っている。



2日後。

「朝」というのはここでは大体日の出の時刻を指しているんだけど、多少遅れてもいい事になっているので朝食を食べてから行こうとしたのだが。


「みんなどこにいくの?」


「お仕事だよ」


「わたしもいく」


「えっ?」


シルヴィアが「皆で出掛ける」事に反応して自分も行くと言い出した。

うむ、特に危険は無い……いや、もしかしたら危険な魔物が出るかも?

それに、現場ではずっとシルヴィアの事をみてはいられないだろうし、連れていくのはちょっと……


「仕事だし、遊ぶ所は無いよ? 家で待っててくれる?」


「いやー」


ぐずるシルヴィア。これはまさか「イヤイヤ期」というやつだろうか? リディアの方を見るとぶるぶると否定の仕草。いや、勿論連れていきませんよ?


「家で一緒に待っていましょう?」


「いやー!」


リディアが宥めようとするが、シルヴィアは泣き出してしまう。ううむ。

リディアに任せればいいだけのようにも思えるが、なぜか皆が俺の事をじっと見ている。えーと……


(アルジェンティーナ)


(はい!)


(家に残ってシルヴィアと一緒に遊んでくれないか?)


(わかりました!)


「しーちゃん、アルがお留守番をするから一緒に遊んでくれるかな?」


「……あるはいかないの?」


「しーちゃんと一緒にいるよ。お願いしていいかな」


「……いいよ」


泣き止むシルヴィア。うむ、これでよし。

既に幼女の姿になって行く気満々だった筈のアルジェンティーナだが、「遊んで」と言った時、尻尾の動きが速くなったから家で遊ぶのでもいいのだろう。まだ子供だし。


「いってらっしゃい」


「……いってらしゃい」


クレアを抱っこしたリディアとアルジェンティーナに抱きついているシルヴィアに見送られて家を出る。

Mk-Ⅲの出番は無しという事に……別に2人で乗ってもいいか。

せっかく作ったのだから使ってみよう。



ギルドに着いた。既にハンター達の「仕事探し」の混雑は終わっていて閑散としたロビーには……ジュディはいるが、他にそれらしき人間が見当たらない。おや? 奥にいるのかな?


「皆おはよう」


「おはよう、ジュディ。担当者は?」


「もう現地に向かっているわ」


「はぁ!?」


何でだよ? 説明は? というか、一緒に行くんじゃないのか?


「どういう事?」


「理由はわからないけど早朝に貴族達が来て、予定が変わったから先に行くと言ってこれを置いていったわ」


そう言って渡されたのは地図らしき紙と、手のひらサイズで銀色の……時計?


「これは?」


「コンパスよ」


これが? 一見アナログ時計のようだがよく見ると針は1本しかなく、デジタル? の部分もあってそこには「1」「263」と表示されている。

ジュディの説明によるとこの「コンパス」は親機で、3つの子機とセットになっていて現在針が指しているのは先に行った貴族が持っている子機のある方向らしい。


「あと2つは? それにこの数字の意味は何?」


「貴族が子機を2つ持っていて、3つ目はこのギルド内に設置していったの。数字は子機までの距離で単位は㎞よ」


側面のボタンを順番に押すと「1」と「2」の時は針が同じ方向を指して動かないが「3」だと針が動いてロビーの奥の方を指した。距離を表す数字は「0」になる。

前にソードダンジョンで使ったのと同じような物か。形は全然違うけど。


「263㎞? 随分遠いな……」


「それは直線の距離だから実際はもっと距離があるわ。行く時は街道の上を飛んで行ってね」


「え?」


この地図らしき物、緩やかにうねりつつ全体としては大きく曲がっている「線」で、線の両端にそれぞれ「シオリス」「目的地」と書いてある。

……これをどう見ろと?


「それは街道を示しているのだけど、途中で支道に分かれているでしょう? そこまでは単に街道の上を飛べばいいだけよ。迷う事はないわ」


確かに途中で線が分かれていて、分岐点には「40」という数字が書かれている。

コンパスは子機に近づくにつれて数字(距離)が減っていく仕様なのでこの数字を目安にすればいい、と説明してくれたが、こんなんでいいのか。


「何で貴族の人は先に行っちゃったの?」


「さぁ?」


肩をすくめるジュディ。おい!


「さぁ? って」


「急な予定変更や無茶振りは貴族にはよくある事よ。気にしない方がいいわ」


「気にするわ! 配慮はどこにいった? もうないの?」


「あなたはまだ配慮されている方よ?」


「どの辺が?」


「それよ」


俺が持っている物を指差す。コンパスと地図を用意したというのが貴族の「配慮」らしい。


「知らない所へ空から行くのに、ちょっと雑な気がするんだけど」


「知らない所ではないわ。あなたが前に行った事がある場所よ」


「え? どこ?」


「あなたのドラゴンがゴブリンの群れを掃討したでしょう? あの廃村よ」


「え? あそこなの!?」


まさかの、「知っている場所」だった。



「配慮はまだあるわ」と言ったジュディにギルドの裏へ連れていかれる。



「何も無いんだけど」


「あなたはいつも町の外へ歩いて出て、それから飛んでいるでしょう?」


「そうだけど」


町の上空を飛んでいる人を一度も見かけなかったし、結界がどうとか言っていたから、もしかしたら町中から直接外へ飛ぶのもマズいかもしれないと思ってしなかったのだ。


「領主から『飛行許可』が出たわ。本来は貴族以外には出さないものらしいけど、これからは空から直接町へ出入りして良いそうよ」


という事は、やはり許可が必要だったのか。我ながら良い判断だった。


「その配慮はありがたくいただくよ。クリエイトゴーレム!」


もこもこ。


Mk-Ⅲを作成。早速乗り込む。

ここまでビアンカが一言も話さないんだけど、緊張しているのだろうか?


「ビアンカ、大丈夫?」


「大丈夫です」


表情が硬いような。もう少し話した方がいいかなと思ったが、ビアンカも乗り込んでしまった。

まぁ、飛んでいる間に話はできるだろう。


「道中気を付けてね」


「ありがとう」


軽く手を振るジュディに見送られながら離陸する。さぁ、開拓に向けて出発だ!




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