表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/122

幼女は引きこもり(できない)

玄関ホールに立っているジュディ。

今日もキリッ、とした仕事のできる女の雰囲気。……何しに来たんだ?



「いらっしゃい、ジュディ。何か用があるのかな?」


「勿論、用があるから来たのよ」


「用件があるなら通話の魔道具を使えばいいんじゃないの? あれ、一度も使った事ないよね?」


「どちらにしろここへ来る必要があるのだから、使うまでもないわ」


「というと?」


ジュディはどこからか麻袋のような物を取り出した。


「あなたが討伐した『大蟹』だけど、ギルドに売ってもらえるのかしら?」


大蟹? ……大きな蟹、「マザー」の事だよな?


「もちろん売るつもりだけど」


「売る気があるのなら、なぜすぐに売らなかったの?」


「それは……」


蟹を売った後で「大金」を手にして大喜びしているケヴィン達の前で、「マザー」を売って(おそらく)比較にならないほどの大金を手にする、というのは何となく気が引けたからなんだけど、そんな説明をジュディにする必要あるかな……


「まぁ、何となく」


「……そう」


ジュディは突っ込んではこなかった。


「……わざわざ引き取りに来たの? でも、ここで出せる大きさじゃないんだけど」


庭になら出せなくもないが、玄関ホールは絶対に無理ですわ。


「ここで引き取るつもりはないわ。あなたには大蟹の件で詳しい話をしたいから、一緒にギルドへ来て欲しいの」


「じゃあその袋は何? 魔法袋じゃないの?」


「これはただの袋よ」


? 何に使うつもりなんだ?


「……ギルドへ来て欲しいというけど、今、私は家に引きこもっているんですけど。理由は知っているでしょう?」


今ギルドに行ったらまたハンター達に絡まれるだろうが。


「問題無いわ。その為の袋よ」


「……説明してもらってもいいだろうか」


「簡単よ。あなたがこの袋に入ればいいの。後は私が運ぶから。そうすれば誰にも見られずにいつもの部屋に入る事ができるわ」


何言っているんだこいつ。


「……せめて、馬車をギルドの裏に直接横付けして素早く中に入るとか、他にやりようはあるでしょう?」


「ギルドに馬車を横付けにする方が目立つわよ? 私が荷物のように運べば目立たないわ」


荷物! ついに荷物と言いやがりましたよ、皆さん! 皆さんって誰だよ。

雑なやり方! 幼女への敬意が足りませんわ。


「……『マザー』はノワールが持っているんだけど。ノワールが一緒だと、私だけ隠しても意味無くない?」


「問題無いわ。あなたの従魔は時々単体で町中を移動しているもの。皆、主無しでいる姿を見慣れているから」


そういえばそうだった。たまにシュバルツ達、家にいない事があるんだよな。

散歩でもしているんだろうと気にしてなかったが。


「さぁ、早く」


袋を開けて中に入れと急かすジュディ。ぐぬぬ、こんな屈辱的な運ばれ方は……


「他のハンターに見られたくないのでしょう?」


ぐぬぬ。



ギルドに着いたらしい。いつもの小部屋で袋から出される。


「待遇の改善を要求する」


「また今度ね」


雑にあしらわれる。おのれ、今に見ていろよ。


「早速本題に入るけど、今回はすぐに金額を決められないの。なので後払いでいいかしら?」


「というと?」


「本来『マザー級』はハンターがどうにかできるような魔物ではなくて、騎士団が総出で討伐するものなの。ギルドが扱うようなものではないので取引実績が無いの。つまり、値段が分からないのよ」


「じゃあどうするの……後払い?」


「ええ。実際に売れた後であなたに支払いをするという形をお願いしたいの。勿論手付けは払うわ」


「いくら?」


「白金貨10枚でどうかしら?」


10億! 手付けで10億か! そんなに払えるとは、またずいぶん儲けられると判断しているんだろうな。

俺にとっては10億だけでも十分だが。


「分かった。それでいいよ」


「ありがとう。もう一つお願いがあるのだけど、あなたが回収した魔石も売ってもらえないかしら?」


「魔石?」


「黄色の球の事よ」


「あぁ……」


そういえばそんなのもあったな……しかし、相変わらず全てを把握している。

隠密さん仕事熱心だなー……まてよ? 魔石?


「教えてもらいたいのだけど、魔石というのは魔物1体につき1つではなかったの? 2つあったけど、そういう例もあるの?」


「それは『魔核』と『魔石』の違いね」


「魔核?」


「どちらもほとんど同じ意味で使われているけど、厳密には違いがあるの」


「詳しく」


「魔核は1体につき1つね。その魔核を加工して使えるようにしたものを魔石と呼ぶのだけど、中には魔核以外に有用な『石』をもつ魔物もいるのよ。その場合、それは加工しないでもそのまま使える事が多いから、それは魔石と呼ぶの」


理解はできるけど紛らわしい!


「あなたが回収した石はおそらく『重量軽減』の魔石だと思うの。それも売って欲しいわ」


「重量軽減?」


また新しい言葉が。


「ええ。『マザー級』の魔物が持つ事が多い魔石で、名前の通りそれを内包したものの重量を軽くする、という貴重な物よ。高く売れるの」


むぅ。そのような効果があるのか。……だとすると、


「それが本当なら、できれば自分で使いたい。実際に確かめるにはどうすればいいの?」


「魔力を通せば分かるけど、何に使うの?」


「ゴーレムに使ってみたい。……あの魔石は脚の付け根から落ちてきた物だけど、もしかして脚1本につき1個あるんじゃないの?」


「その可能性はあるわね。どちらにしろ、確認は必要だけど」



大型の魔物を解体できる大きな作業場でノワールに「マザー」を出してもらう。

スッ、と巨大な蟹の姿が現れる!


「「「おおー」」」


どよめくスタッフの皆さん。


「これがマザー級か、初めて見るな」

「よくこんなのを倒したな……」

「用意した道具で解体できるかな?」


例の魔石も出す。


「これなんだけど」


「調べてみるわ」


鑑定スキル持ちらしい職員が何やら調べている。


「これは重量軽減の魔石ですね」


「そう」


ジュディがうっすらと光っている黄色の球に手を触れて魔力? を流している。(らしい)


「こうやって魔力を流すと軽くなるようね」


「こうやって、と言われましても」


俺は魔力の流し方なんて知らないんだが。それにその魔石、もともと軽いじゃん。幼女でも持てるぐらいだからな。何かに内包されてないと効果が分からないんじゃないの?



職員達はジュディの指示で脚を切り離す作業をしている。魔石があるか確認したいらしい。

脚が切り離された部分に同じ黄色い球があるのが見えた。やはりか。


「まだ魔石はあるみたい」


「そのようね。ではこの本体を買い取らせていただくわ。支払いについてはたぶん3~4ヶ月はかかると思うのだけど、いいかしら?」


「いいですとも。手付金は口座に振り込んでおいてね。あ、後、脚を1本もらっておこうかな。食べたいから」


味を確認せねば!


「……肉だけでいいのなら殻は売ってもらえるかしら?」


「いいとも。食べ易いようにしてもらえる?」


「ええ」


よし、取引終了だ。また家に引きこもるぞ!



ジュディに家まで「運んで」もらって引きこもり再開だ。

といってもダラダラする訳ではない。魔法実験だ。

そう、「重量軽減」の魔石の性能とやらを見せてもらわねばな!


すぐに思い付いたのは、これを土ゴーレムに内包すればゴーレムの重さが軽くなるんじゃね? というもので、そうすればMk-IIの性能がアップするのではないか? と思うのだがどうだろう?


早速庭で試す。

「内包」の仕方が分からないんだけど、とりあえず地面に置いてそこに土ゴーレムを作成するイメージでやってみる。たぶん、「魔法」がいい感じにやってくれるのではないだろうか。


「クリエイトゴーレム!」


もこもこ。


土が盛り上がって魔石を取り込みながら土ゴーレムが出来上がっていく。

おおっ、成功だ! 簡単だったな。

見た目は何も変わらないがさて、どう変わっているのか。

比較の為にもう1体Mk-IIを作る。2体並べて同時に離陸させてみよう。違いが生じていれば分かる筈だ。


いざ離陸!


ぶぅおおおおお。


ローターが回転して……えっ!?

「魔石あり」の方がすぐに離陸して凄い勢いで上昇していく! ちょっ、待てよ!? 速過ぎるだろ!


すぐに上昇を止めたつもりだったが、見上げる首が痛くなるぐらいの高さまで上昇してしまっている。

少したって「魔石無し」の方も同じ高度に到達した。これは……


2体とも一旦降ろす。

これほど明確な性能差が生じるとは予想外だった。たった1回の試行でも分かる。ここまでの性能は必要ないんじゃね? という事が。


ではどうするか。簡単である。「小型化」だ。

魔石の力でこれほど性能が向上するのなら、もっと小さくしてもいいのではないだろうか?

具体的にいうとローターと翼の縮小だ。


現在のMk-IIは幅が最大で約7mある。

これでも不満はないが、さらに小さくなればより狭い場所でも離着陸できるようになってより好ましいといえよう。


ローターの直径を半分に……半分はやり過ぎだな、2mにしよう。

合わせて翼の長さも短縮して全幅を7mから5mへ。


「クリエイトゴーレム!」


もこもこ。


形は同じだが少しコンパクトになったニューMk-II……Mk-Ⅲか。

Mk-Ⅲの飛行性能を確認しよう。

再び離陸させる。


ぶぅおおおおお!


「魔石ありMk-II」より更に勢いよくかっ飛んでいくMk-Ⅲ。なぜなのか。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ