「リアル」で「ハード」な
「リア充」って表現があるよな。もう使ってないか。
今、目の前で焼き「蟹」肉パーティーを楽しんでいる若いハンター達を見ていると、リアルが充実してますねと言いたくなる。
土魔法で竈と焼き台のセット、それに作業台とテーブルを作って解体はシュバルツにお願いして、後は勝手に焼いて食べろと言ったら、若いやつらが大騒ぎしながら蟹の肉を焼きまくり食べまくっている。
どの顔も楽しそうで何よりだ。
少人数で頑張ったアーサー達も、ベテランみたいな戦い方をしていたケヴィン達も、パワフルな女の子達も必死だったトニー達も皆生き生きとしている。
さっきまでは女の子達が焼いた肉を持ってきて、食べさせてくれたりチヤホヤしてくれていたけど、蟹の肉ばかりでは飽きるだろうと思ってファングボアの肉を出したら皆そっちへ群がっていったので今は誰もいない。
無事サポート終了してやれやれなんだけど、何でだろう? こいつらを見ていると……
「どうしたんですか?」
ビアンカが肉を盛り盛りにした皿を持ってやって来た。
「どうぞ」
「せっかくだけどもうお腹いっぱいなんだ」
女の子達の過剰な接待を受けていたからな。
「何だか顔色が冴えないですけど、疲れたんですか?」
「疲れてもヒールで回復するでしょ」
「そうでしたね。ではなぜ?」
なぜだろうな? あいつらを見ていると……
「何だか背中がゾワゾワするんだ」
「ゾワゾワ?」
「そう」
ここへ来たのは大した理由ではなかった。
「ビアンカが『蟹を食べに行こう』と言わなかったら、今私達はここにはいない」
「そうですね」
この世界の蟹はどんな味がするのかな? と思っただけだった。
「私達がここに来ていなかったら」
腕を切り落とされ、脚を失い、毒を受けて血塗れになって倒れていたハンター達。
俺達がここに来ていなければ。
こいつらは全員死んでいた。
そう思うと、「ゾワゾワ」が止まらない。
別に俺はこいつらの命に責任を負っている訳ではない。
偶然助けただけだ。
だが、その些細な理由が無ければ、ちょっとした偶然が無ければ、これだけの命が失われていたのかと思うと、「ゾワゾワ」が止まらない。
「……今こうしている間にも、どこかでハンター達が戦っているのかな」
「……そうですね」
「現実」に生きているハンター達。
そいつらは狩りを成功させて、こいつらみたいに美味い飯を食べているのだろうか。
それともこいつらみたいに、死にかけていたり、死んでいたりするのだろうか。
別に俺に責任がある話ではない。この世界がハードなだけ、という話だ。
今更だけど。
本当に、今更だよな。




