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「……えーと、何をやっているの?」


ようやくビアンカ達のいる所まで戻ってきたのだが、てっきりトーチカに篭っていると思っていたハンター達が外にいて、しかも何やらモメているような?


「セシリアさんお帰りなさい」


ビアンカが出迎えてくれたが若干涙目。誰だ? ビアンカを泣かせたやつは?


「どうしたの?」


「えっと、この子が……」


「セシリア! ズルい!」


いきなり何だよ。

5人組のパーティーで唯一の女の子、がこちらを睨み付けている。何かしたっけ?


「ズルいとは?」


「アーサー達を支援して、蟹を狩らせたんでしょう!? どうしてアーサー達だけなの? そんなのズルい!」


「アーサー?」


アーサーって誰やねん。

周りを見回すと、最初に助けた3人パーティーのリーダーが申し訳なさそうな顔で軽く手を挙げているのが見えた。

あいつか……英雄王の名を持つとは。


「ちなみに他の2人は何て名前?」


「俺はモルドだ」


「俺はレッド」


2人を合わせると「モルドレッド」に……ネタじゃないの? 本当の名前?

あ、そう……お前ら、一騎討ちしちゃうの? いや、3人だから「一騎討ち」にはならないか。


そんなどうでもいい事を考えていると、女の子がこちらに屈み込んで顔がくっつきそうな勢いで迫ってきている!


「私達も! 蟹を倒してお金を稼ぎたいの!! 私達の事も支援して! それに、アーサー達は蟹を食べさせてもらったって言ってたけど、それ本当なの!?」


「あぁ、そんな事もあったかな」


「ズルい! どうしてアーサー達だけ食べているの!? 私達も食べたい!」


この勢いでビアンカに迫っていたのか? 「正直な思いを率直に話す」というのはもしかしたら褒めるべき資質、なのかもしれないが。


「この子の要望は分かったけど、これはパーティーとしての要望と言う事で間違いないのかな?」


他のメンバーが一言も喋らないのが気になる。顔を見ても……やる気があるようには見えないのだが。


「ちょっといいだろうか」


「何?」


メンバーの内の1人がやってきた。4人とも普通というか、何か似たような感じなので誰がリーダーなのか分からなかったけど、こいつがリーダーか?


なぜか少し離れた所に連れて行かれて、しゃがみ込んで声を潜めてやり取りをする事に。


「何?」


「俺はリーダーのトニーというんだけど、マリーの事でその、彼女を悪く思わないで欲しい。あれは俺達を思っての行動なんだ」


「マリー?」


「ああ、彼女はマリーといって俺の妹だ。それで、その、あんなに強く言っているのは俺達が装備を失って、新しく買うお金が無いからなんだ」


こいつらもか。皆お金に余裕なさすぎぃ!


「貯金しないの?」


「お金を貯めたくても、怪我をして治療薬を買ったり壊れた装備を修理したりで、中々貯められない……でもマリーはちゃんと貯めている。あまり怪我をしないし、武器も上手に使うから。だから、あれは俺達の為に言ってくれているんだ」


仲間思いのいい子だな。そんな話を聞いたら怒れないじゃないか……別に怒ってはいなかったけど。


そういえば、俺は幼女で身長が低いから、土ゴーレムに乗っていない時は当然人に見下ろされるのだが、この兄妹は体を屈めてちゃんと目線を合わせて話してくれている。

きっとこいつもいいやつなんだろう。全くハンターっぽくはないけど。


「大丈夫。別に悪く思ったりはしていないから」


「そうか、よかった」


ほっとした様子のトニー。しかし、重要なのはそこではない。


「それで、お前達はどうしたいの? 彼女はやる気みたいだけど」


「そ、それは……」


躊躇しているように見える。まぁ、これが普通の反応だろう。

本来「蟹」は低ランクハンターが立ち向かう相手ではないのだから。


「やる気があるならサポートするけど、やる気のない人達を無理に立ち向かわせるなんて事はしない。どうするの?」


覚悟のないやつは当然支援なんてしないのだが、判断に迷っているのか?


「ねぇ、いつまで話しているの? こっちの話はまだ終わってないのよ!?」


マリーがやってきた。


「兄さん! ケヴィン達もリリ達もセシリアのサポートで蟹を倒したって! しかも3体も!! 私達もやろう! 蟹を倒してお金を稼がないと!」


マリーは既に2つのパーティーから話を聞き出しているようだ。目端が利くというか、そういう積極性は嫌いじゃないぜ。


「3体も!?」


「そう! 私達にだってできる筈よ!」


「……分かった」


どうやらトニーもやる気になった様子。


「皆と相談して決めよう」


あ、相談するのね。相談は大事だね。



5人で話し合った結果、トニー達も蟹討伐をする気になったらしい。

しかし、


「「「「よろしくお願いします」」」」


礼儀正しいメンバーだが、マリー以外は何だか不安そう。いまいち覚悟と言うか、決意のほどが見えない。

5人とも普通というか、あまり力強い感じがしないけど、女の子達の例もあるし、見た目では判断できないのかもしれない。


「えーと、使用する武器は決まった? 一応、全員に土ゴーレムのガードを付けるけど、盾役はいた方がいいよ?」


5人が選んだ武器が今一つ納得がいかないというか、不安になる。


長槍を選んだのは1人だけで、あとは戦斧 (バトルアクス)や戦棍 (メイス)など間合いが短い武器ばかり。

盾も一番小さな四角盾 (スクエアシールド)なんだけど、それでいいのか?

防具が万全ならともかく、今は誰も防具を身に着けていない状態なのに。


タワーシールドだと「重くて持てない」と言うので仕方ないけど、せめて、円盾にした方がいいんじゃ……でも自分に合った選択をしているのなら、口出ししない方がいいかな……


「じゃあいくよー。蟹が現れたらトニー達に戦ってもらうから」


「わ、分かった」


また5号機を追加。皆で乗って移動開始!


もちろんすぐに蟹が現れる。数は3体。ちょうどいいな。

尾をチェーンソーでぶった切って準備良し。


「さぁいくよ! ……まだ早い?」


ゴーレムから降りた後、集まって作戦会議のような事をしているらしい。

結構時間がかかっている……慎重なのはいい事だけど。


「お、お願いします!」


準備ができたらしいので、トニー達の前に蟹を放り込んでやる。


「ぐはっ!」


「「「「ジーン!?」」」」


いきなりぶっ飛ばされている! 土ゴーレムでガードしていたのに!?

土ゴーレムが構えていた盾の後ろから外れて、蟹の脚に蹴っ飛ばされたらしい。

何やっているの!? 


「しっかりしろ、傷は浅いぞ!」


いや浅くなかった! ヒールでは足りない!


「ハイヒール!」


ぼわん!


いきなりか。そして、


「お前達! ぶっ飛ばされた仲間の方ではなく、目の前の敵を見ろ!」


全員こっちを見ている……何やっているのか、よそ見するんじゃない!

慌ててハンター達が攻撃を始めるが、いきなり仲間がやられて動揺したのか、連携もしないで動きがバラバラになっている。落ち着けよお前ら。


「がぁあっ!」


また飛ばされた! なぜゴーレムのガードから外れるのか!


MP節約の為に5号機をそのまま使っているのだが、こいつは2号機と違って後ろが見えないので、後ろにいるハンターの動きを把握しきれない時がある。どうしても死角ができてしまうのだが、その死角から前に出てやられているみたいだ。


そりゃ攻撃する時には前に出ないといけないけど、もうちょっとこう、動きというものが……これは俺のサポート力が問われている。早く何とかしないと!


仕方ないので2号機を4体追加だ!


「クリエイトゴーレム!」


もこもこ。


5号機達と交代してガードに入る。

全周囲が見える2号機なら……って、またぶっ飛ばされた!

蟹の「鋏」を使った横殴りの攻撃を、なぜか前に出て受け止めようとしたハンターが飛ばされている!

そのスクエアシールドでは無理じゃないか? チャレンジ精神は評価するけど!


「頑張れー!」

「いける! いけるよ!」

「惜しい! 今の感じで!」


観客、いや女の子達が賑やかだ。

ケヴィン達はまた周辺警戒をしてくれているのだが、特にやる事がない女の子達はトニー達へ声援を送っている。

そして女の子達と横並びの位置で待機状態になっているシュバルツとノワール。

なぜそこに?


どうやらトニー達はまず脚を攻撃して蟹の動きを止めたいらしいのだが、脚の動きを警戒して(というか怖がって)踏み込みが浅く、有効なダメージを与えられないでいる。そしてばんばんぶっ飛ばされるハンター達。ゴーレムガードが追いつかない!

治療魔法でMPがばんばん減っていく。


MP 26/280


戦闘前は残り57だったMPが半分以下になっている。やられすぎぃ……1体倒すのにこんなにMPを消費するとは! というかまだ倒していないし。


「鋏」の動きは土ゴーレムでケアしているのだが、これも本来はトニー達が主体的にどうにかすべきなんだが、そんな余裕は無いか。

もう既に疲労困憊といった様子。全員にヒールをかけてまわるが、そう何度も回復できないぞ?

もうシュバルツにMP譲渡を頼んだ方がいいかな? それとも……


また脚に攻撃をしているが表面を削るだけ、みたいな浅い攻撃ばかり。動きを止めた脚は1本も無い。


皆、蟹に同じようにやられていたので一括りにしていたけど、ケヴィン達や女の子達のパーティーがそこそこやれたので、こいつらもやれるんじゃないか、と思ったのだがそれは間違いだった。

「低ランクハンター」といっても一緒くたにできない、明らかな力量差があった。考えてみれば当然か。


これ以上続けさせるのは危険か? 重傷ならまだしも、このままでは「即死」すらありうる。だが、できれば蘇生魔法は使用を避けたい……


決断の時だ。

土ゴーレム達を使って蟹を完全に押さえ込む。


「お前達! 攻撃を一旦中止して! こっちに集合!」


「えっ!?」

「な、何?」

「ど、どういう事?」


怪訝そうな表情で、それでも攻撃を止めて素直に集まってくるトニー達。


「皆さんに残念なお知らせです。このまま戦闘を続けるのは危険と判断したので、この状態での討伐は中止します」


「そんな!?」

「ま、まだやれるよ!」

「も、もう少しやらせてくれ!」


口々に異議が発せられるがもちろん認めない。


「このままだと死人が出るかもしれない。それでも続けたいと思うの?」


「そ、それは……」


本当は分かっているんじゃないのか? 自分達では無理があるって。

汗だくでよろよろしているトニー達。お前達がそれなりに頑張った事は認めようじゃないか。


「で、でも、このままじゃお金を稼げないよ! 絶対倒さないと! まだ諦めないから!!」


「ではやり方を改めよう」


「えっ!?」



土ゴーレムの両腕で蟹の脚を2本、がっちりと押さえ込む。4体で8本。

鋏は1つにつき1体の土ゴーレムで確実に押さえる。危険だからね。これでよし。


「見ての通り、蟹は完全に拘束された。さぁ、蟹を攻撃して! 十分に踏み込んで、躊躇無き一撃を食らわせてやるのだ!」


「えっと……それは」


「さぁ早く。まだ2体残っているのだから!」


「そんなんでいいの?」


「それだと俺達が倒したとは言えないんじゃ」


「何言ってるの? お前達の攻撃で倒したらそれはお前達による討伐だよ?」


納得いかない、という顔をしているが異論は認めない。さぁ早く!


「勿論、お前達が倒した蟹の売却金は全額受け取る事ができます」


「……全額?」

「嘘でしょ?」

「本当に?」


「本当です」



トニー達が躊躇の無い攻撃を始めた。いいぞ、もっとやれ!

蟹を完全に押さえているから怖くないのだろう。皆十分に踏み込んで重い一撃を……いや、そうでもない。

踏み込んではいるが、攻撃力は今までよりは多少良くなった、という感じで、倒すまでまだ時間がかかりそう……


2体目も3体目も最初から蟹を押さえ込んだ状態で倒してもらった。まぁ仕方ないよね。



見事3体の蟹を倒して疲労困憊、といった様子のトニー達。

ヘトヘト状態であまり喜んでいないような? MPを節約する為に疲労回復のヒールをやめたからかもしれない。


「お疲れ。皆よくやったよ!」


「……あぁ」

「お、俺達は勝ったんだ……」

「……そうなのか」

「ああ……」


皆それなりに必死にやっていたと思うよ。


「ねぇ、セシリア、あの、あ、ありがとうね」


「どういたしまして」


1人だけまだ余裕がありそうなマリーがもじもじしながらお礼を言ってくる。


「これで新しい装備が買えるね!」


「ええ、そうなんだけど、その」


まだ何かあるのか? もうサポートは終了なんですけど。


「何?」


「えっと、これだけ支援してもらって言い難いんだけど」


「何かな?」


「……蟹はいつ食べさせてもらえるの?」


「……森を出てからにしようか」


「ありがとう! すっごく楽しみ!」


いろいろな意味で、マリーのタフさを仲間は見習うべきだと思うの。



森の出口に近付く頃には蟹の姿も見られなくなり、その後は戦闘する事も無く森を出る事ができた。

森を出た所で「エヴァルスの栄光」と合流したので、ついでにこいつらにも蟹の肉を奢ってやるか。




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