サポートしましょう 3
「何をしているの!?」
シュバルツ達のいる所へ戻ってみると、女の子達とシュバルツが戦っていた!
なぜ!?
「あ、お帰りー、セシリア」
1人だけ戦いに加わっていない女の子がのんびりした口調で話しかけてくる。
「何をしているの!?」
「私? 私は周辺警戒だよ?」
「そうではなくて!」
女の子達の方を見る。3人がかりで戦っているのは……戦い? おかしいな?
シュバルツと「戦える」というのはおかしいよな?
「ああ、あれ? あれは模擬戦よ」
「模擬戦……」
本当の戦闘の筈がなかった。
それなら「戦い」など成立する筈も無く瞬殺されているだろうからな。
しかし、
「どうやってシュバルツに頼んだの?」
「え? 普通に『練習相手になって』って頼んだだけだよ?」
これが可愛い女の子特有の「コミュ力」というやつなのだろうか。
主でもないのに「黒のゴーレム」に戦闘訓練を了承させるとは。
単にシュバルツが女の子に甘いだけかもしれないが。
見ていると、シュバルツはウォーハンマーを両手に持って、割と強めに振り回している。
女の子達もウォーハンマーで応戦していて、そこそこ動けているような。
「結構良さそう……」
「えへ、そう? セシリアが戻ってくるまでずっと練習してたんだよー」
嬉しそうな顔をする女の子。君ら本当に力は強いね。
「皆ー! セシリアが戻ったよー!」
「「「お帰りー!」」」
模擬戦をやめてこちらへ駆け寄ってくる女の子達。皆汗だくだな……
「そこまで熱心にやらなくてもいいんじゃ?」
「何言ってるの? こんなに強い人相手に模擬戦なんて滅多にできないよ!?」
「それにハンマーを使いこなさないと蟹に勝てないし!」
「そうそう!」
人じゃないけど。あと、蟹に勝つって?
「もしかして、蟹と戦うつもり?」
「「「もちろん!」」」
もちろんなんだ……何でそんなにやる気なの?
「やられっぱなしじゃ悔しいもん!」
「絶対やり返さないと!」
「今ならやれるから!」
皆元気で明るい雰囲気だったのですぐには気が付かなかったけど、よく見ると……女の子達の目には溢れるほどの憎悪の光が! 怖っ!?
自分達を殺しかけた蟹達がよほど憎いのか、女の子がしちゃいけない目付きをしているよぅ……
「俺達もセシリア達にサポートしてもらって蟹を倒したんだ」
ケヴィンが余計な事を言った。ポンっと肩を叩かれてそちらに目をやると、
「そうなんだ……なら、私達の事も手伝ってくれるよね?」
さっき、のんびりした口調で話していた女の子が、口元だけ笑って目が全く笑っていない顔で、「お願い」をしてきた。
「助けてもらえただけでも十分幸運だったって事は分かっているの。でも、悔しいじゃない? やられっぱなしなんて。それにこれだけ強力な武器があって、しかも『治療魔法使い』がいる、なんて機会は二度と無いと思うの。だからお願い、協力して?」
「……はい」
そう答えるしかないよな? しかし、
「協力するのはいいけど……4人ともハンマーを使っているけど、盾役は誰がやるの?」
俺に盾役を期待しているのかな?
「全員が盾役だよ?」
何言ってるの? みたいな口調で返されるが、いやお前こそ何言っているんだよ?
「盾持ってないじゃん。持ち替えるの?」
まさか、片手でウォーハンマーを使うつもりか? さすがに無理じゃね?
「ハンマーが盾だよ?」
ごめん何言っているか分からない。
疑問が顔に出たからだろう、「実際に見てもらうね」と言って仲間の所へ向かっていく女の子。
シュバルツに戦斧を2つ持たせているが、もしかして鋏のつもりだろうか?
「いくよー!」
シュバルツが両手に1つづつ持った戦斧を合わせて「鋏」のようにシャキシャキと動かしている……
女の子の内の1人を「鋏で切る」ような動きを見せると、その「鋏」の間に縦向きにしたハンマーのヘッドを差し込んで防ぐ!
ガキッ!
ハンマーを押し込み続ける女の子と、それを「鋏」で受け止めるシュバルツ。言いたい事は分かった。
「切断」攻撃への対処はそれでいいとして、「鋏」を鈍器のように叩きつけてくる攻撃については?
シュバルツが戦斧からウォーハンマーに持ち替えて、「振り下ろし」攻撃をする。
それに対してまたハンマーヘッドを縦向きにして、「盾」のように受け止めた!
ゴゥン!
重低音を響かせてぶつかり合うウォーハンマー。そんな使い方があるとは!
シュバルツは横に斜めにとハンマーを打ち込んでいるが、それらを全て危なげなく受け止める女の子。凄く使いこなしているな……
「どう? 皆出来るんだよ? 練習したから!」
「なるほど」
体と同じぐらい大きなヘッドを持つウォーハンマーならではの使い方かもしれないが、しかし、よく考えたなー。
「これならいいかな。移動中に蟹が現れたら戦ってもらおうか。もちろんサポートもするよ」
「「「ありがとう!」」」
女の子達に囲まれて抱き上げられた挙句もみくちゃにされてしまう。これはモテ期か。(違う)
「セシリアは小さくて可愛いね!」
「軽ーい!」
これでも多少は背が伸びて、体重も増えているのだが。
5号機を2機追加。女の子達を乗せて移動を再開する。
「ゴーレム可愛いねー!」
「ゴーレム速ーい!」
「楽しいー!」
皆はしゃいでいるけど、すぐに蟹は現れるよ?
移動を始めて数分で蟹達が当たり前のような顔で現れる。本当にどれだけいるのか……今度は5体。
「来たよ! 戦闘準備!」
「「「「はいっ!」」」」
「ケヴィン達には周辺警戒をお願いしてもいいかな?」
「ああ、任せてくれ」
すぐさまゴーレムから飛び降りて待ち構える女の子達。殺る気に満ち溢れているな。
前回同様毒針付きの尾は切除して、1体目を彼女達の前に放り込む。
「「はぁああっ!」」
即座にウォーハンマーを振りかぶって、正面から叩き込む2人! 蟹も鋏を前面で交差させて防ぐ!
ガキン!
その隙に残り2人が側面と後方に回り込んでハンマーを叩き込み始める!
ガンガンと凄まじいラッシュ! ペース配分は大丈夫なのか?
蟹はどの方向からの攻撃に対処すべきか迷っているかのような動きを見せている。
側面に注意を向けそうになると前の2人の攻撃が激しくなるし、前に注意を向けると今度は後ろや横からの攻撃が強くなる。
……どうやら前の2人から相手にするつもりになったようだ。
右の鋏を大きく開いて「切る」動きを見せる!
ガキッ!
女の子を挟み込むようなその攻撃はハンマーのヘッドが差し込まれる事で防がれた!
そのままぐいぐいとハンマーを押し込んでいる!
蟹は左の鋏を女の子に叩き込もうとしたが、隣にいる子がヘッドを盾にして受け止める! さらに下からかち上げる打撃で鋏を跳ね上げた! 蟹は攻撃ができない!
「スイ! 正面に回って!」
「分かった!」
側面で攻撃していた女の子が正面側で攻撃している2人の間に割って入ってきた。
そして大きく振りかぶったウォーハンマーをがら空き状態の蟹の頭部に叩き込む!
「やぁあああ!!」
グシャッ!!
生々しい破砕音! 蟹は大きく痙攣するような動きを見せた後、崩れ落ちた……えっ!? もう!?
「エリ、右の鋏を押さえ込んで。ルカは左。スイはいつでも攻撃できる態勢で」
「「「はいっ」」」
ウォーハンマーで上から鋏を押さえ込む2人。スイと呼ばれた女の子も指示された態勢で構えている。慎重だな。
蟹の頭部を確認していたリーダー(たぶん)がにっこり笑った。
「倒した……倒したよ!」
「「「やったー!」」」
抱き合って喜び合う4人。良かったねー。
「おめでとう」
「ありがとう! セーちゃんのお陰だよ!」
せーちゃん? 俺の事か? またもみくちゃにされる俺。お、おおう……
1体目が凄く早く終わったので休まずに2体目にいく。
2体目はさらに激しく容赦の無いラッシュ! フルボッコ状態だ!
なすすべも無く打ち倒される蟹。女の子達TUEEEE!
「3体目もいっとく? もうやめとく?」
「まだやるよ!」
目がギラギラしている。まだ気が治まらないのだろうか? もう十分な気もするのだが。まぁ、3体分用意しちゃったしな……
3体目も順調にぶっ叩きまくっている。やる事無いなーと思って見ていたら、
「きゃあっ!?」
いきなり1人がぶっ飛ばされている! 急に力が抜けたみたいだけど、今の動きは一体?
「どうしたの!?」
「痛ーい……魔力を使い切っちゃった」
「何だと!?」
MP切れで魔力強化が出来なくなったらしい。それはマズいのでは?
「いったーい!」
「きゃあっ!」
次々とぶっ飛ばされてる女の子達。これはいかーん!
とりあえず土ゴーレムで囲って蟹の動きを抑える。治療せねば!
「ヒール!」
ぽやん。
ヒールで怪我は治せるし、体力も戻るがMPは増やせない。ここまでか?
「終了にしとく?」
「まだやるよ!」
「やると言っても、どうするの? 魔力強化ができないとハンマー持てないんじゃないの?」
「途中でやめる訳にはいかないよ! 槍なら持てるから!」
「えー……」
リーダーはまだやる気らしい。他の女の子達は? ……土ゴーレムに持たせている槍を取ろうとしている。うーむ……
全員が槍を持って戦闘を継続する構えを見せている。仕方ない。
「ゴーレムの盾から外れないように気をつけてね? いくよ!」
「「「「はいっ!」」」」
全員に土ゴーレムのガードをつけて、その後ろから槍を突いてもらう。
女の子達がドスドスと槍を突き続けて十数分後、ようやく蟹を倒す事が出来た。
「「「「はぁ、はぁ、はぁ……」」」」
「お疲れ」
「「「「はぁ、はぁ、はぁ……」」」」
地面の上で横たわって声も出ない様子。非力な状態でよくやったよ、この子達。
そのド根性ぶりには尊敬の念すら覚えるわ。
「皆凄いね」
「それ……ほどでも……えへ」
汗だくで、よれよれ状態でニカッと笑うリーダー。
「憎悪に満ちた目」よりも、その可愛い笑顔の方がずっといいね。




