表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/122

レスキュー幼女


「蟹は嫌いだった?」


「い、いや、そうじゃない」


蟹を食べないか、と誘ってみたけど、どこか気が進まない様子のハンター達。

お腹空いてないのかな? 朝ごはん食べたばかりとか?


どうもハンター達の顔色が良くない。治った筈なんだが。

もしかしたら精神的なものかもしれないので、落ち着くまでそっとしておいた方がいいのかもしれない。



さて、どうやって食べようか? 蟹は「蒸す」のが一番だと思うがこの世界の蟹の場合はどうかな? 「焼く」と「茹でる」も試すべきだな。

竈を作成して焼く為のプレートと水を入れた土鍋をセット。

そして魔法袋から蒸し器を取り出す。こんな事もあろうかと蒸し器を買っておいたのだよ!


頭に大きな穴が開いている蟹が3体、頭を叩き潰されている蟹が1体。食べられるのは脚だけだったな……蟹の脚は伸ばすと長さ3mぐらいありそうだ。そして太さは俺の胴体と同じぐらいある。足1本だけで何人分になるんだろうな? 蟹の解体は引き続きシュバルツにお願いしよう。どんな味か楽しみだ。


シュバルツが切り分けてくれた脚の身を早速焼いてみる。

じゅうじゅう。いい匂いだ!

最初は何もつけずに食べて見る……うーむ、これは。

「蟹」だな。間違いなく蟹の味。美味いぞ。

外はカリっと香ばしく焼けていて中はジュワっと肉汁が溢れている。

これはたまらないね! 良い肉だ!

皿にたくさん盛ってビアンカとエクレールに食べてもらう。お味はいかがかな?


「美味しいです! あっさりしていて、いくらでも食べられますね!」


ビアンカが満面の笑みでもりもり食べている。

あっさり、か。ならばチーズでも乗せてみようかな? チーズ焼き。美味そうだ。

チーズを乗せて軽く胡椒をかけて焼く。とろっととろけたチーズが食欲をそそるぜ! いただきます!

むうっ、これは! チーズとの相性が抜群だ。良いアイデアだな!


(エクレール、味はどうかな?)


(もっと焼いて欲しい)


気に入ったようだ。だがこれはあくまで試食なのだから、あと蒸したのと茹でたのを食べてもらわないと。

お湯が沸いたので蒸し器をセット。蒸す時間はどれぐらいがいいかな? 10分か20分……20分にしよう。

蒸す準備を終えると少し離れた所で座り込んでいたハンター達が近寄ってきた。


「い、良い匂いがしているな」


「もしかして、食べる気になった?」


「あ、ああ。さっきは断ってしまったけど……」


ばつの悪そうな顔をしながらも若いハンターの目はビアンカ達が食べているチーズ焼きに釘付けだ。ふふ、いいだろう。


「ではお前達の分も焼こう。遠慮無く食べると良い」


「いいのか? ありがとう!」


たっぷり焼いてやるぜ、何しろ溢れるほどあるからな!



「う、美味い! 凄い美味いぞ、この肉!」「蟹ってこんなに美味かったのか!」「さすが高級肉だな」


ハンター達が猛烈にがっついて食べている。凄い勢いだ。食欲があるのは何よりだが、高級肉?


「蟹っていくらぐらいで売っているの?」


異世界でも蟹は高いのか? 市場で見た事無いから分からない。


「凄く高いんだよ!」


「だから、いくらなのかと聞いているのだが」


「食べた事無いから分からねぇ!」「きっと俺達には買えない値段だ」


全く参考にならないわ。


「ギルドでの蟹の買い取り価格は大きさにもよりますけど、1体につき金貨13~15枚ぐらいらしいです」


代わりにビアンカが教えてくれた。買い取り価格の方だけど。


「え? そんな高値になるの?」


「肉以外にも鋏の部分や甲羅、毒腺が素材として価値があるそうです」


むぅ、いいお値段だがこの肉を売るのは惜しいな。金も欲しいが肉も欲しい。

肉以外を売ろうかな? 皆と要相談だ。



そろそろ蒸し上がったかな? 蒸し器の中を確認する。

蓋を取るとふわっと良い匂いが広がる。これは期待できるな!

蒸した蟹を口に入れる。

熱々の身が解れて、ほんのりとした甘味と共に口の中一杯に旨味が広がる。旨味が凝縮されているというやつだな! 

こ・れ・は・美味い! やはり蒸したのが一番じゃないか? 

焼いたのより美味いと思うけどどうだろう。


「ビアンカ、エクレール。蒸したのも食べてみて。焼いたのとどっちがいい?」


大きく口を開けて蒸した蟹を頬張り、もきゅもきゅと食べるビアンカ。


「わぁ、これも美味しいですね! 両方美味しくて両方とも良いです!」


目をキラキラさせている。いつにも増して食べっぷりが良い。


「そう? エクレールは?」


(どちらも良い)


こちらもいっぱい食べている。異世界でも蟹の威力は凄い、という事か。

料理方法は……まぁ両方作ればいいか。

茹でるのも試したが「焼き」や「蒸す」には及ばない感じだった。

いいタレがあればまた違った物になるかもしれないが、ここでは「かに酢」を作るのは難しいからな……


もっと食べたいというリクエストに応じて焼いたり蒸したりしていたら昼近くになっていた。

変な時間に食べてしまったな。もう昼はこれでいいだろう。



「お前達のこの後についての話なんだけど」


たっぷりと食べて満足げだったハンター達に話しかけたらとたんに顔色が悪くなった。おいどうした?


「なぁ、俺達の治療代はギルド内と同じなのか? それとも……」


びくびくし始めるハンター達。治療代か、うーん。


「銀貨2枚でいいよ」


仕事中の怪我だからギルド価格でいい筈だ。


「そうか! 助かるよ」


表情が明るくなった。もしかして、顔色が悪かったのは支払いを気にしていたからなのか?


「私達はもう少し蟹を狩っていくけど、お前達は町に戻るよね?」


確認してみたら3人は顔を見合わせた後、輪になって相談を始めた。何を相談しているんだ?

しばらくしたらリーダー(たぶん)が話を切り出してきた。


「た、頼みがある。俺達を街道まで送ってくれないか? 武器も防具も壊れてしまったから丸腰で森を抜けるのは正直怖いんだ。金はあまり払えないけど……た、頼む!」


わりと必死な表情。ハンター達は壊れた防具は脱ぎ捨てていて、足を切られたやつなど半ズボン状態だ。後で裾を繕ってやろう。

防具無しでは兎が相手でも危ないかもしれないな。この異世界の兎は中型犬並みの大きさがあって噛み付いてきたり、結構攻撃的だから。


「送っていくのはいいけど。別にお金はいらないし。そういえばお前達、兎狩りの成果は?」


それらしきものは目にしなかったような気がする。


「逃げる途中で身を軽くする為に投げ捨てたから、もう他の魔物か獣に食われちまっているよ……」


つまり成果無しか。手ぶらで帰ってもいいのか? 装備を買い直すぐらいのお金はあるという事か。


丸腰では怖いというので武器と盾を貸してやる。盾役にタワーシールド、残り2人はウォーハンマーを扱えなかったので槍とラウンドシールドだ。


「こ、これ、もしかして魔法具か!?」「凄い強そう!」「頑丈そうな盾だ」


「それは魔法で作ったというだけで魔法具じゃないよ」


「この武器があれば、俺達でも蟹を倒せたかな?」


「それはどうだろう……」


槍や盾を手にしてはしゃいでいるが、3人では無理じゃないか?


「この武器なら攻撃が通って、もしかしたらいけたんじゃないか!?」「可能性はある」


「えー……」


こいつらの戦闘力が分からない。ちょっと試してみるか?


「ではここで模擬戦をしてみる? お前達の力量を測ってみよう」


土ゴーレムの右手に穂先を丸めた短槍を持たせて鋏に見立て、左手には長槍を持たせてこれは毒針のついた尾の代わりだと説明して、「蟹」役に仕立てた土ゴーレムをハンター達の前に立たせる。


「この『蟹』ゴーレムを倒せるかな?」


「よ、よし! やってやるぜ!」「おおっ!」「面白そうだ」


タワーシールドを持った男が中央で土ゴーレムと対峙する。両サイドに槍を持った2人。


「いつでもいいよ」


「うらぁっ!」


盾役が盾を動かして挑発を始める。その挑発に乗った、という動きで土ゴーレムの右手の短槍を盾に叩きつけてやると、その隙に槍持ち達が両サイドから攻撃を加えようとする。


ガシッ!


ゴーレムの体に槍が当たるが踏み込みが浅い。そんな攻撃では倒せないんじゃないか? ダメージを与えたとは認めないぞ?

短槍を振り回して威嚇すると、それが当たるのを怖がって更に腰が引けて浅い攻撃になっている。

左側の男は長槍の攻撃を盾で受け止めるだけで精一杯といった様子。間合いに入る事ができず攻撃に転じるのは難しそうだ。

盾役が右側の男を守ろうと動いた隙に長槍を低く打ち込んで左側の男の足に当てて打ち倒す!


「ぐあぁ!」


ちょっと強過ぎたか? あとでヒールをかけてやろう。これでこいつは「毒攻撃を受けた」から戦線離脱だ。

盾持ちが何度かシールドバッシュを仕掛けてくる。こいつはなかなかやるが攻撃役との連携ができていないな。


「ぐはっ!?」


再度長槍を低く打ち込んでもう1人の攻撃役も「毒攻撃を受けた」で模擬戦は終了だ。

……あまり強くないような?


「ビアンカ、どう思う?」


「えっと、ゴーレムの動きが実際の蟹と同等だったのかちょっと確信が持てないんですけど、それを考慮してもこの人達の場合、3人では無理なのではないでしょうか? 攻撃も防御も手数が足りていないように思います」


「だよね。最低でも後2人、できれば4人ぐらい増やす必要があると思うよ。お前達の場合特に防御力が弱いから、盾役を増やさないとまたやられるだけじゃないか?」


がっかりしている3人に助言めいた事を言ってみるが、俺達もそれほど経験豊富という訳じゃないし、あまり詳しい技術や戦術を教える事はできないな。


「じゃあ帰ろうか。街道までは護衛するよ」


「ま、待ってくれ! お前達の狩りに俺達も連れて行ってくれ!」


土壁を解除して森に入ろうとすると、リーダー(らしき男)が「決死の覚悟」みたいな表情で話しかけてきた。


「え? どうして?」


帰りたいんじゃなかったのか?


「このまま帰っても金が無いから壊れた武器や防具を買い直す事ができない。ここで何か成果を持ち帰らないと、ハンターを続けられなくなるだけでなくこの後生きていく事も難しくなるぐらいなんだ! 頼む、俺達に狩りの手伝いをさせてくれ!」


「えー……」


何その余裕の無さ。貯金が全く無いのか?

俺もちょっと前までは貯金どころか借金まみれだったけど。


「あんなひどい目にあったのに、また蟹と遭遇するかもしれないよ?」


というか確実に遭遇するぞ。だって蟹を狩りに行くんだから。たくさんいるらしいし。


「それでもやらなきゃいけないんだ!」


他の2人も気合が入った顔をしている。手足を切られまくったというのに怖くないのか? 何という根性だ。

正直足手纏いではあるけど、このガッツに免じて連れて行ってもいいが、ビアンカの意見も聞いてみよう。


「どう思う?」


「セシリアさんがよければ連れて行ってあげてください。若いハンターにはまたとないチャンスですから」


なぜかビアンカまで真剣な表情だ。どうして?


「チャンス?」


「ええ。普通低ランクハンターではセシリアさんの作ったような強力な武器や盾は高価過ぎて買えないですし、パーティーに治療魔法使いがいる事もまず無いです。今なら強力な武器や盾を貸してもらえて、私達と一緒ならわりと安全に狩りができます。分配金も期待できる上に怪我をしても治してもらえます」


なるほど、低ランクハンター達には良い事尽くめという訳か。


「私もセシリアさんに助けられて今があります。できれば彼らの事も助けてあげて欲しいです」


なるほど。


「分かった、お前達も連れて行こう。報酬を受け取りたいのならそれなりに戦ってもらうよ?」


「ほ、本当か! ありがとう!」「絶対役に立つぜ!」「頑張る」


張り切るハンター達。レスキュー幼女からサポート幼女へとジョブチェンジだ。

まず盾役を2人に増やして攻撃役に長さ3mの槍を持たせる。


「盾役は全力で蟹の注意を引き付けて攻撃役は側面から体当たりするぐらいの勢いで槍を突け。その長さなら蟹の攻撃は当たらない筈だし、仮に攻撃が当たって怪我してもすぐに治してやるから思い切っていけよ?」


「わ、分かった」「やってやるぜ!」「任せろ」


「サポートメンバーとして土ゴーレムを3体付けよう」


槍を持たせたゴーレム2体と盾を持たせたゴーレム1体。


「蟹が2体の場合、シュバルツかノワールで1体を倒さずに抑えておいて。3体以上の場合は1体はビアンカが倒しちゃっていいよ」


「わかりました」


「エクレールは戦闘中は周辺の警戒をお願い」


(わかった)



土ゴーレムを斥候として先行させて鬱蒼とした森の中を歩いていくと、すぐにまた蟹達に遭遇した。何か食べているな? まさか……

今度は人ではなかった。何かの獣?


「蟹を発見した。数は3体。皆打ち合わせ通りに!」


すっ飛んでいくノワール。素早く蟹を捕まえると荷物のように頭の上に持ち上げてしまっている! じたばた暴れる蟹をものともしない。さすがだな。

少し遅れて到達したビアンカがウォーハンマーで蟹をぶっ飛ばしている。


「よし、いくぞお前達!」


盾役の2人を先頭にして蟹のいる所へ突っ込んでいく。


「こっちだ蟹野郎!」


盾役の挑発を受けて残った1体がこちらに注意を向ける。大きな鋏を鈍器のように振り上げて盾に叩きつけてきた!

最初はそうやって攻撃するのか。すぐに切断しにくる訳ではないんだな。

ガンガン叩き付けているがもちろん盾には傷1つ付かないぜ!

盾役が注意を引き付けている間にサイドに回り込んだ攻撃役が槍を突き入れる。


ドシュッ!


まぁまぁの突きが入った。だが蟹に激しく脚を動かされて攻撃役のハンターは槍を蹴り飛ばされてしまう!


「あっ!?」


動揺するハンター。

すかさずサポートゴーレムで代わりの槍をハンターに渡してやる。


「すぐフォローするから攻撃を続けるんだ!」


「お、おうっ!」


側面に向きを変えようとした蟹を反対側から土ゴーレムで攻撃する。

同時に盾役2人がシールドバッシュ! 口から泡を吹く蟹! 

長い尾を振り上げて毒針で盾役を攻撃するが盾に阻まれ、両側面から執拗な攻撃を受け続けた蟹は脚を折り畳むように曲げながら崩れ落ちた!


「や、やったのか!?」


「ちょっと待って」


リーダー(恐らく)が変なフラグを立てようとしたので土ゴーレムを近付けて確認する。倒した……な。


「おめでとう、蟹を倒したよ」


「や、やったぞ!」「本当か!?」「俺達でも蟹を倒せるんだな!」


喜びに沸くハンター達。


「では2体目いってみよう! やれるよね?」


ノワールが持ち上げている蟹を示す。


「お、おう!」「やってやるぜ!」「任せろ!」


ノワールが蟹を投げ込んでくる。第2戦だ!

盾役が1度ぶっ飛ばされたり攻撃役の突き刺した槍が抜けなくなったりする場面もあったが、どちらもサポートゴーレムで素早いフォロー。2回目は1回目より時間をかけずに倒す事ができた。


「おおっ、これ凄いんじゃないか!? 俺達、蟹を2体も倒したぞ!」「やればできるって事だぜ!」「ハンターランクが上がるかもな」


輪になって喜んでいるハンター達。

どうしよう? このままだとこいつらは勘違いしてしまうかもしれない。釘を刺しておくべき?


「お前達、ちょっと話を聞いてもらえないだろうか?」


「おうっ! 何だ?」「何でも聞くぜ!」「いい話か?」


笑顔を浮かべながらこちらを見るハンター達。


「勝因は何だと思う?」


「勝因? えっと、強力な武器や盾があったから?」


リーダー(だと思う)が答える。


「それだけ?」


重ねて聞くと、今度は別のやつが答えた。


「ゴーレムが助けてくれたから?」


「そう。盾役がぶっ飛ばされた時に代わりに入って支えたり、槍が抜けなくなった時もすぐ別の槍を渡されて攻撃を続ける事ができたでしょう? もし『3人だけ』だったらどうなっていた?」


「そ、それは……」


顔を見合わせるハンター達。


「人数が多いとそれだけ余裕ができるし予備戦力の有無による負担の違いは大きい。それに戦闘中は他の魔物に襲われないように周囲を警戒する必要もあるけど、3人の時はどうするつもりなんだ?」


たぶんこいつらには強力な敵と戦いながら周囲も警戒する、なんて事はできないと思う。「警戒役」もいる筈だ。


「お前達の問題点は人数が足りないという事だと思うんだけど、これからも3人でやっていくつもりなの?」


3人はさっきまでの勢いが無くなってしょんぼりしてしまっている。


「俺達、最初は5人だったんだ。でも怪我が原因で2人がハンターを続けられなくなって、それからは3人なんだ。俺達みたいな低ランクパーティーにはなかなか入ってくれるやつはいないし、逆にどこかのパーティーに入りたくても装備が貧弱だとか経験が浅いっていう理由で断られるんだ」


だいぶ暗い顔になっている3人。さすがに全くわかっていない訳ではなかったか。

せっかく助けたのだからこいつらには少しでも長く生き延びて欲しいのだけど。

経験か……装備は金で買えるけど経験は金では買えないな。それなら……


「こういうのはどうだろう? 蟹を売却して得たお金の半分で上等な武器と防具を買うんだ。そして『うちに入れば自分達と同等の装備を買ってあげるよ』と言って新たなメンバーを勧誘するんだ。3人ぐらい。

それでパーティーに入ってくれたら残り半分のお金でその人達に合った装備を買ってやればいい。駆け出し、あるいは良い装備を持っていないハンターなら話を聞いてくれるんじゃないか?」


そんな提案をしてみるとハンター達は唖然とした表情をしている。

あれ? こういうアイデアはダメなのか?


「そ、そんなやり方があるのか!?」「装備だけ手に入れて、その後逃げられたらどうするんだよ?」


「それはギルドを間に挟んで契約を結べばいいんじゃない?」


「それって手数料はいくらぐらいかかるんだ?」


「それはギルドに聞いて自分達で交渉して」



「な、なぁ、この槍や盾をしばらく貸してもらうというのはダメか?」


リーダー(らしき男)がおずおず、といった感じで聞いてくる。


「それ、魔法で作ったやつなんだけど耐久性が不明なんだ。いつまでもつのか私にもわからなくて、戦闘中に突然消えるかもしれない。そんな武器や盾に命を預けたい?」


そう言うとがっかりした顔になった。しょうがないんだ。未確認だからさ。ギルドで試験するって言ってたけどいつ結果が出るか分からないし。


また相談し始めた3人を見ながらビアンカに意見を聞いてみる。


「ビアンカはこのアイデアについてどう思う? おかしいかな?」


「いい考えだと思います! でも『上等な装備』を揃える為には、もう少しお金がいるのではないでしょうか? 具体的にはあと蟹2~3体分ぐらい」


全部で金貨50から60枚といったところか。


「じゃあ、もう少し狩りをすればいいかな」


「そうですね」



「聞いてなかったけど、蟹を倒した報酬はいくら貰えるんだ?」


リーダー(恐らく)が期待に満ちた顔で尋ねてきた。


「サポート料を考慮すると売却金の半分だ」


「そんなに貰えるのか!?」


多過ぎだったのか? 別にいいけど。

また3人で輪になって相談を始めたが、すぐに話はまとまったみたいだ。


「セシリアの言う通りにやってみるよ」


「じゃあ、あと少しだけ狩りをしようか」


「よろしく頼む」


頭を下げるリーダー(もうこいつがリーダーでいいだろう)。

狩った蟹はシュバルツに収納してもらう。そういえば、さっきこの蟹達は何を食べていたんだろうな?

やつらの食べ残した物を見てみる。これは……


「兎?」


「え?」


「蟹が食べていたのは兎かな? と思って」


「あっ!? この袋! これ俺達が狩った兎だ!」「この辺見覚えあるぜ!」「せっかく狩ったのにな」


ハンター達が地面に散らばっている袋? や兎の残骸を見て騒ぎ出した。

結構量があるな。兎狩りは順調だったのか。


「出遅れた上に蟹なんかに遭遇して俺達ついてないなって思ったけど、セシリア達のおかげで運がまわってきたような気がするよ。そういう意味では兎狩りも全くの徒労という事もなかったかな」


切り裂かれた袋の残骸を手に取りながらリーダーが爽やかな笑みを浮かべる。

そうか、それは良かった……今何て言った? 出遅れ?


「出遅れってどういう意味?」


「あぁ。この森で兎をたくさん狩る事ができたって言う話を聞いた時にはもう他のハンター達はこの森に向けて出発していて、早く行かないと狩っても売れなくなるから俺達も急いで追いかけてきたんだけど」


他のハンター達?


「その、他のハンター達というのはどれぐらいのランク?」


「え? 俺達と大して変わらないよ。EとかFだ」


「そいつらがこの森にいるの?」


「いるんじゃないの」「俺達より先に出たんだから、とっくに到着して兎を狩っているに決まっているよ」


ほぅ、お前達と大差ないハンター達が、蟹がたくさんいるらしいこの森の中に。


「そいつらは蟹と遭遇しても大丈夫なの?」


「あっ!」


あっ、じゃねーよ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ