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蟹を食べに行こう

「可変ゴーレム」を全力でイメージ!


まず問題なのが操縦席の位置。


たぶん一番空気抵抗が大きい所だろうから後ろはダメだ。前にしなければ。

ゴーレムが人型の時は胸の位置にくるように変更だ。形状も楔形にして尖らせる。


空いた背中に足を下ろした時のバランスを取る為の大型エアブレーキを付ける。

腰部のスカート(プロペラユニット)は抵抗が大きいから廃止。


脚部もカバーを細くしてプロペラを1つに減らし、空気抵抗を小さくする。尾翼も脚部に移動だ。

メインプロペラは翼の前縁に大きいのが2つあればいいだろう。


翼は人型の時には折り畳んで後ろに向ける形にしよう。横に広げたままでは邪魔だからな。

「変形」は上半身を横から見て90度折り曲げて操縦席を前進させて、下半身を後方に伸ばす事で前面投影面積を減らす。


これでどうだろう? 飛行機らしい形になるのでは?



人型と飛行機型、両方を強くイメージ。頼むぞ!


「クリエイトゴーレム!」


もこもこ。


操縦席が胸の部分から突き出ていてやや不恰好だが、概ねイメージ通りの形だ。

後は変形してくれるのかという点だが……上半身だけ変形させてみる。

変形してくれよ?


スッ。


音も無く変形した。やったぜ!


その形は……操縦席の後ろにゴーレムの頭が残っているのが多少違和感があるけど、それ以外はまぁまぁかな? ちゃんと飛行機の形になっている。


頭は……必要だ。

密閉型の操縦席だからゴーレムの視覚がないと前が見えないし、格納してしまうと「ゴーレム」ではないもの、になって動かなくなるかもしれない。

頭がある事でもの凄く「ゴーレム」しているわ。



早速試験飛行だ! ホバリング開始!


ぶぉおおおん!


ふわりと浮き上がって滑走へと移行していく可変ゴーレム。

十分な速度に達したところで脚を後方に伸ばしてプロペラを全力で回す!


ぎゅおん!


いい加速だ! 明らかに速いぞ!


機首を上に上げて急上昇させる。ぐんぐん上昇する可変ゴーレム。

いい感じじゃないか?


視覚をゴーレムと共有。

おぉう、一面の青い空!

横を見てみると世界が斜めになって見える!

ぐるっと背面宙返り! 世界がぐるぐる回る! ふははははは!


水平飛行に移り上面のエアブレーキを展開、同時に脚を下ろして減速。ホバー状態に移行する。

全く問題無いな。大成功だ! 次は実際に乗ってみるぞ!



実験場に着陸したゴーレムに乗り込む。

シートには安全バーも付いているから高機動時も体を支えてくれる筈だ。

いくぜ! 


ぶぉおおおん!


ふわっと浮き上がったのが感じられる。

飛べ! ゴーレム!


ぎゅおん!


滑走から飛行へ問題無くいける。脚を後ろに伸ばして上昇!

フライハイ! 今、俺は空を飛んでいる!



大きく旋回させながら地表を眺める。広大な森林が広がっていて、その中にすっと筋を引いたような白い線。街道が見える。


この可変ゴーレムがあれば長距離移動が格段に捗るな。皆を乗せて……ビアンカを外が見えない密閉型の操縦席に乗せるのはかわいそうな気がする。


でも透明なガラスのような物は土魔法では作れないし、「開放型」にすると風圧がキツいだろうな。

どうしよう? ……あ、そうか。

風圧ならエクレールに頼んで風魔法で防いでもらえばいい。


一緒に乗ってもらおう……乗ってくれるだろうか?

「私に乗ればいい」とか言い出すんじゃないか?

うーん……とりあえず、開放型も作っておこう。


実験場に着陸するとシュバルツとノワールが近寄ってきた。

手を挙げて可変ゴーレムに挨拶をしてくれる。そうか、「新入り」だものな。

飛行型から人型に変形して挨拶を返す。よろしくねー。



実験を終了して家に帰るとビアンカが待ち構えていた。


「セシリアさん! 『蟹』を食べに行きましょう!」


「何だって?」


蟹?


「蟹が大量に発生して掲示板に討伐依頼があったんです。蟹って美味しいそうですよ? 私、食べた事が無いので食べたいです!」


蟹か。俺はどちらかというと蟹より海老の方が好きだなー。

まぁ蟹も嫌いじゃないけど。

この世界の蟹が俺の知っている蟹と同じ味をしているとは限らないが。


「いいよ、明日にでも行こうか。場所はどこ?」


「地図を貰って来ました」


そう言って差し出してきたのは子供のお絵描きレベルの大雑把過ぎる地図。

町から北東へ街道を進んで大きな川に到達したら川の手前で西側の森に入る。


書いてあるのはそれだけ。誰だよこんな地図書いたの! こんなんでいいのか?


「目的地までの距離も蟹の生息範囲も書いてないけど、こんな地図で大丈夫なのかな?」


「範囲は西側の森の川に近い所です。後、この森には蟹より危険な魔物はいないって教えてもらいました」


うーむ、そうなのか。森の広さがいまいち分からないけど、行けば分かるかな?


「距離は歩いて2日と言われましたけど、ゴーレムならもっと短い時間で行けますよね?」


うむ、これは可変ゴーレムの出番だな。


「新しいゴーレムを作ったので見て欲しい」




庭に出て開放型操縦席付きの可変ゴーレムをお披露目する。

ホバリングからゆっくり上昇させるとビアンカが大喜びした。


「これは! 空を飛べるという事ですよね!? 私達が乗って飛ぶんですよね! 早く乗ってみたいです!」


はしゃぐビアンカとは対照的にエクレールが不機嫌そう。

顔は無表情だけど「私は気に入りません」という感情が伝わってくる。


(これは何?)


(飛行するゴーレム。エクレールには一緒に乗って欲しいんだけど)


(私に乗ればいい)


やはりか。それはダメって前に言ったでしょう?

ドラゴンの姿は目立ち過ぎるから少なくとも昼間は無理!


私不機嫌です、という感情がひしひしと伝わってくるが、ダメなものはダメである。


(主はもっと私に気を使うべき)


人がいない所ならドラゴンなエクレールに頼むから、協力してね?


(一緒に乗って私達が乗る所だけ魔法を使って風を遮って欲しい)


「開放型」の操縦席を示すと、


(そんな小さな魔法は使えない)


お断りされた。

え? マジで?

「使いたくない」じゃなくて「使えない」のか?


風を遮る魔法は可変ゴーレムの「翼を含めた」大部分を覆う大きさ、よりも小さくする事はできないらしい。

それだと翼に風が当たらないから揚力が発生しなくて飛べないんだけど……


エクレールと協議した結果、通常型ゴーレムの前後に操縦席を付けて、前に座ったエクレールが魔法でゴーレムを飛ばす、という事になった。


(そんな事ができるの?)


(私の翼があれば容易い事だ)


翼ってその小さな翼の事か?

背中の翼が自慢げにぴくぴく動いているが、この翼が魔法を生み出すのだろうか。



試しに操縦席を前に付けたゴーレムを作成して、実際に飛ばしてもらった。


ふわっ。


簡単に宙に浮かんで庭の上を飛び始めるゴーレム。

くるくるぎゅんぎゅん、と軽快な動きが速過ぎて目で追いかけるのも苦労するほどだ。


「わぁ!」


「おぉう……」


凄まじい高機動!

こちらの方がずっと高性能じゃないか? うーむ……何という敗北感。

これがドラゴンの力か。


(空を飛ぶのはエクレールに任せる事にするよ。よろしくね)


(分かった)


何だか嬉しそう。空を飛ぶのはエクレールにとっても楽しいのかな?


「明日が楽しみですね!」


「そうだねー」


エクレールが「飛行ユニット」になるので、せっかく作った可変ゴーレムだが残念ながら出番無し、という結果に。

まぁ、努力が報われない事もあるよね。皆で空を飛べるのだから良しとしよう。

……そういえば、ノワールは自力で飛べるけどシュバルツは飛べないよな?


「シュバルツ、今回は家でお留守番……」


してもらう、と言いかけたらシュバルツがノワールと合体していた。何それ。

よく見るとシュバルツの肩の部分をノワールが脚で掴んでいるだけだったが、何か格好良い姿になっているぞ。


「それでいけるの?」


肯定。


そうか。何でもできるんだな、君達は。



昼食を取った後、リディアにお昼寝してもらう。


「シルヴィアとクレアは私に任せてください」


「ありがとうございます」


やはりリディアはお疲れ気味だ。

ヒールもかけたけど、寝不足には寝るのが一番いいよね。

シルヴィアもそのうちお昼寝すると思うけど、クレアはいつ寝るか分からないわ。


「しーちゃん何して遊ぶ?」


「アルとあそぶの」


俺とは遊んでくれないらしい。アルジェンティーナ、君に任せた!



もふもふとアルジェンティーナをモフるシルヴィアを眺めながら明日の討伐対象である「蟹」について前に資料で見た内容を思い出してみる。


確かハンターランクD以上推奨の結構強い魔物で、甲羅が固く鋏が強力な上、蠍のような毒の針があるから注意が必要、だったかな。蟹なのに毒針って。


「ビアンカ、蟹の毒について知ってる?」


「尾に毒針があるから注意、という話ですね。私は魔力防御をすれば毒が体内に入ってくる事はないので大丈夫です」


「そうなんだ……」


ビアンカには毒針を避ける為に弓で遠距離から攻撃してもらおうかなと思ったが、毒が入らないって凄いな、魔力防御! という事は、


(エクレールは魔法防御が使えるから問題無い?)


(そもそも私に毒は効かない)


毒無効なのか? さすがドラゴン。さすどら。


アルは……動きが素早いから蟹の攻撃が当たる事は無いか。

どうやら気を付けないといけないのは俺だけのようだな……



翌日に備えて早めに寝たが、


「セシリアさん、朝ですよ! 起きてください」


ゆさゆさと揺さぶられて起こされた。何だよぉ……早くないか?


目を開けると目の前に白くてたわわな胸の谷間が!

幼女相手にセクシー目覚ましか! ゆさゆさと揺れるたわわな胸。


喜んでしかるべきシチュエーションだが、そこは幼女。「眠い」という気持ちの方が強いわ。

まだ暗いうちにビアンカに起こされてしまった。おい、まだ眠いんですけど。


「早過ぎない?」


「早く行かないと他のハンターに狩られてしまうかもしれないので急ぎましょう!」


ビアンカはやる気に満ちている。しかし、


「ちゃんと寝たの?」


「楽しみで眠れなかったんですけど、少しは寝たような気がします!」


それは「寝てない」んじゃないの? 小学生か……

まだ夜明け前なのに、二度寝を許してくれないビアンカによって強制的に朝ごはんですよ。

ふぁああ……


アルジェンティーナがいないので探したらリディア達の部屋で寝ているシルヴィアにしがみつかれていた。


「アルはそのままお留守番していてね」


眠そうなアル。俺もまだ眠いわ。


リディアが起きるまで待ちたかったが、ビアンカが昨日のうちに早く出る事を伝えていたらしい。

俺にも伝えろよ。



空がうっすらと明るくなってきた。

町の外に出て街道まで来た所で、5号機をベースにした搭乗機を作成する。


(それじゃ頼むよ。街道に沿って飛んでね)


(任せるがいい)


ビアンカと同じぐらい機嫌がいい(らしい)エクレールが颯爽と土ゴーレムの操縦席に乗る。

続いて俺達が乗り込むと、すぐにふわりと浮かぶ土ゴーレム。


「わぁ! 飛んだ! 飛びましたよ! セシリアさん!」


「飛んだねー。ん?」


浮かび上がるゴーレムの足が何かに引っ張られたので下を見ると、ノワールが前脚から黒いワイヤーのような物を伸ばして巻き付けていた。

牽引してもらうつもりらしい。


(ノワールとシュバルツの重さが加わるみたいだけど、大丈夫?)


(問題無い)


力強い返事。頼もしいね、エクレール!



まだ星が見える暗い空へと上昇していく土ゴーレム。


見る間に地上が遠くなって、世界が広がっていく。

視界の先にある、森と空の境界線がうっすらと白く光り始めていて、世界が濃紺と暗い緑色に分けられている。


「広いですね! セシリアさん! 世界がこんなに広いなんて!」


背後からビアンカの興奮した声が聞こえてくる。

夜明け前の世界の姿も趣深いものがあるね。

早起きにもいい事あったわ。



「ビアンカ、日が昇り始めているよ」


地平線が輝き始めた。日の出だ。

朝日が空と大地を明るく照らし、星々の姿を隠していく。

広大な森が鮮やかな緑の色を取り戻し始めている。


「世界はこんなにも美しいものなんですね! 素敵です!」


「そうだねー」



いつまでも見飽きる事のない世界を眺めていたかったが、飛行開始からわずか15分程度で「大きな川」に到達した。


早過ぎないか? 時速何kmなんだよ。大雑把な計算だが大人の足で2日だと距離は約80kmだから……300km/h以上になるぞ? どんだけ速いんだよ。


幼女形態はあまり関係ないのか。どうやらドラゴンの力を甘く見ていたようだな。凄いぞエクレール!



川の手前で地上に降りる。


(ありがとう、エクレール。素晴らしい飛行だったよ)


(いつでも私に頼るといい)


エクレールもご満悦。今後はこの移動方法がメインになるかな。


さて、戦闘準備だ。

密閉型ゴーレムに乗り換えて、土ゴーレムは……5体でいいか。

土ゴーレムに短槍を持たせて準備完了!


ビアンカはウォーハンマーとタワーシールドを装備している。おや?


「弓じゃないの?」


「コンパウンドボウだと矢が刺さらないかもしれないですし、逆に魔法弓だと威力があり過ぎて食べるところが無くなってしまうかもしれないので」


「そうなんだ」


食べるところが無くなるのは困るわ。接近戦か……まずは土ゴーレムを先行させよう。


地図にあった「大きな川」は幅100mぐらい。

両側に同じぐらいの幅の河原があって大きめの岩がごろごろ転がっている。

背の高い雑草もたくさん生えていて管理はされていないみたいだな。


川には白い石のような素材でできた橋が長さ300mぐらいに渡って掛けられているが、橋脚が1つも無い。ただ床板があるだけでトラスでもアーチでもない。

何だこれ? 魔法によるものなのか? 凄い橋だな……この橋を渡ってみたい気がしたが狩りを優先しなければ。


土ゴーレム達を先頭に森の中へ入っていく。「川の近く」をうろついていればいいのか? エクレールに探してもらう……


「悲鳴が聞こえます!」


悲鳴? ……何も聞こえないけど、エルフイヤーは地獄耳! ってやつかな? (それはデビルイヤー)


「戦っているみたいです」


狩りか? 近付いて獲物を横取りしようとしていると思われたくはないが、悲鳴というのが気になる。


「様子を見に行こう。ビアンカ、場所は分かる?」


「はい!」


走るビアンカについていく。方向は……川に向かっているのか? 森の外?


森を抜けて河原まで来ると、人より大きな「蟹」と対峙しているハンターらしき男の後ろ姿が見えた。

加勢していいのか? 獲物を横取りするなとか言われるんじゃ?

だが見える範囲だけでも2人倒れていて他に戦っている人がいない。1人で倒せるのか?


蟹は4体いて、うち3体は鋏で何かを挟んでお食事中だ。

あれは、腕? 人間の腕か! 美味しく食べられちゃっているぞ!?

これは助けてもいいよな?


「蟹をぶっ飛ばして!」


皆が一斉に突っ込んでいく。

俺も土ゴーレムを蟹に体当たりさせて倒れている負傷者から引き離す。


「がぁあっ!」


悲鳴が上がった方を見ると盾で蟹の攻撃を防いでいた男が、盾ごと腕を鋏で切り落とされていた!

「鋏」の切れ味が凄い!

倒れた男と入れ替わるように蟹の前に立ったビアンカが蟹をウォーハンマーでぶっ飛ばす!


ドゴッ!


あっちは任せておいていいだろう。俺は負傷者達を治療しなければ。

一番近い位置で倒れている男を見る。両腕と右足が切断されていて顔色がヤバい。

出血によるものか、あるいは毒か?


「キュア! ヒール!」


ぽやん


とりあえず解毒と血止めだ。欠損の修復は……後回しでいいだろう。


腕と足の切断面に膜のような物ができてすぐに血が止まる。

男の顔色がましになったのを確認して、次に両足と右腕を切断されている男を治療する。

こいつも解毒と血止めだな。


ぽやん。


「腕が! 俺の腕がぁっ!」


3人目、盾ごと腕を切断された男が腕をおさえながら泣き喚いていた。


「落ち着け、すぐに治してやるから。お前は毒は受けていないのか?」


「痛ぇえよ! 腕、腕がぁあ!」


「落ち着け! 無理か。ヒール!」


ぽやん。


腕の切断面に膜のような物ができて血が止まった。


「もう痛くない筈だ。落ち着け」


「あ、あぁ……い、痛くない。た、助かったのか……あ、お前、セシリア?」


「そうだ」


俺はこいつの事を知らないが、シオリスのハンターなら俺を知っているだろう。


蟹はどうなった? とっくに終わっていると思うけど……すでに戦闘は終わっていた。

蟹は4体とも倒されていてビアンカやシュバルツが担いで運んできている。

俺の出番なんて残されていないよな。経験値を得られる機会だったのだが。


それにしても……装備が貧弱だな。

安っぽい防具は壊れているし、転がっている短槍は柄が折れていたり穂先が砕けてしまっている。

こいつら、もしかして。


「お前達、ハンターランクはいくつなんだ? ランク低いんじゃないの?」


「あ、あぁ、Fランクだ」


正気か。


「蟹はDランク以上推奨でしょう? 何でFランクで狩ろうと思ったの? それもたった3人で」


「ち、違う、俺達は蟹を狩りに来たんじゃない! 兎を狩りに来たんだよ! 蟹がいるなんて知らなかったんだ!」


兎?


「そうなのか? 今この森で蟹が大量に発生しているらしいんだけど」


「知ってたら来ないよ!」


うーむ。


「セシリアさん。蟹の討伐依頼は昨日の朝掲示板に張り出されたので、この人達は知る機会が無かったんじゃないですか?」


「昨日の朝? あんた達はどうしてそれを知っているんだ?」


「その討伐依頼を見てここへ来たからだけど」


「ここまで2日はかかるだろう? 速すぎないか?」


「空を飛んで来たんだ」


「空? セシリアは治療魔法使いじゃないのか?」


「空も飛べるんだ」


「凄いな、お前」


目を見開いて驚く若いハンター。

凄いのはエクレールだが別に訂正する必要はないだろう。

他の2人も意識を取り戻した。


「腕が、腕がぁ……」

「足が無い! 俺の足が!」


「落ち着けお前ら」


欠損状態を確認する。えーと、腕が4本、足が3本か。

盾役の腕と3本の足はあるけど腕は……蟹に美味しく食べられてしまったんだな。


作業台を作ってその上でシュバルツに蟹を解体してもらう。

蟹の腹部を裂くとでろん、と人の腕が出てきた。


「よかったな、原形を留めているぞ」


「うぅっ……」


腕を食われた男が出てきた腕を見て呻いている。


腕を繋ぐのと腕を再生するのとでは(MP的に)大違いなので俺は嬉しい。

繋ぐ治療ならハイヒールでいける筈だからな。


他の蟹の体内からも腕を回収して、新たに作業台を作って男達を寝かせる。

適当に位置を合わせて後は魔法にお任せだ。


「ハイヒール!」


ぼわんっ!


強い光。一発で修復完了である。


「どう?」


「あ……腕が、動くぞ!」


残り2人の腕と足も適当に合わせて魔法を掛ける。


「ハイヒール!」


ぼわんっ!


「足が動く!? 治った!」

「うぉおおお! 俺の腕が繋がったぁああ!」


良かったね。俺もエクスヒールを使わずに済んで良かったわ。


「治って良かったですね! 次は私達が食べる番です! いつ食べますか? どこで食べますか? ここですか?」


ビアンカが目を輝かせている。待ちきれないのか?

さすがにここは危険だと思うわ。それに蟹が襲ってくるかも、と気にしながらでは美味しく頂けないだろう?

ここ河原なのに見通し悪いし。


……あ、そうだ。なら安全な場所を作ればいいのか。


「ちょっと待ってね。ここに安全地帯を作るよ。アースウォール!」


にょきっ、と高さ10mの土壁が現れる。

20m四方をこの壁で囲ってしまえば内側は安全だろう。蟹の鋏ごときではこの壁に傷1つ付けられまい。


「ティル・ア・フィールド!」


ごろごろした岩や雑草だらけの地面も平らに均してダイニングテーブルとチェアも作る。

快適な食事会場の完成だ!


「これで良し! では料理の準備をしよう。あ、お前達も食べる?」


若いハンター達を誘ってみるがぶるぶると顔を横に振る。

蟹は嫌いだったか?

それとも食欲が無いのかな。美味しいらしいよ?




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